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稲の精  作者: 抹茶あいす
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稲の精1

むかしあるところに小さな村がありました。

山と山に囲まれたそれは美しい村でした。


村にはおおきな田んぼがあり

そこには稲の精が住んでいました。

稲の精が住んでいるおかげで

村は毎年 豊作でした。

でも稲の精を見た者はだれもいませんでした。


ある年の夏

村に諸国を旅する一人の僧がやってきました。

僧は青々とかがやく田んぼを見て驚きました。


なぜなら僧が旅をしてきた村々ではどこも日照り続きで雨が降らず

田んぼは干上がり 村人たちは食べるものにさえ困っていたからです。


これはどうしたことか。


僧はふらふらと田んぼの中にさまよい出ました。

もう何日も何も食べていないので

僧はがりがりにやせ細っていました。


するとどこからか

し~ちゃん し~ちゃん という声が聞こえました。


僧は声のするほうへ進みました。


やがて田んぼの真ん中あたりまでくると

足もとにおにぎりが転がっていました。


おー 天の助けだ。


僧が手を伸ばすと

おにぎりはすたすたと逃げてしまいました。


おい 待て。


僧はあわてておにぎりを追いかけました。


おにぎりはすたすたとあぜ道を逃げていきます。


とうとう僧はおにぎりを見失ってしまいました。


するとまたどこからか

し~ちゃん し~ちゃん という声がしました。


僧が稲のあいだからそっとのぞくと

その先に小さな稲の精がいました。


稲の精はピンクのストールを羽織っていました。

そして、こぶしほどの石の上に座って 足をぶらぶらさせながら

大きなおにぎりを頬ばっていました。


なんて可愛らしいんだ。


と、そのとき

僧のお腹の虫がぐうと鳴りました。


しまった!


僧に気がついた稲の精はびっくり!

おにぎりを抱きかかえたまま

あぜ道を一目散に走り去ってしまいました。


し~ちゃん し~ちゃん!


その声はあっという間に遠ざかっていきました。



やれやれ。

それにしても し~ちゃんとはだれのことなんだろう。


僧がふと見ると

ピンクのストールがあぜ道に落ちていました。


急に体の力が抜けた僧は

その場にバッタリ倒れてしまいました。


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