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賽の目も神次第~こっそりと仕掛けられた時限トラップ~⑤

シュンコ視点

「とんだ伏兵が潜んでやがった」


 もう一人の私がげんなりと言った感じで脱衣所で突っ立っている。何時まで経っても服を脱ごうとしない。


「早くしなさい。何時まで経ってもお風呂に入れないわよ」

「お前っ! ちょっとは恥じらい持てよな! 女と裸なんて嫌だぞ!」

「馬鹿ね。あんたの身体は私の身体よ。隅々まで知ってるんだから」

「うわっ、寒気が。止めろよな。気持ち悪いこと言うから鳥肌立っちまったじゃないか」


 全く、さっきまでウジウジしていたのにもう憎まれっ口を叩くだけ回復したんだから、単純ね。

 それにしても、どうしてここまで拒否反応を起こすのか、別に自分の身体は見ている訳だし。


「ねえ、別に同じ身体だし、見られても平気でしょ?」

「見られるのは……多分平気じゃない。それより見るのが平気じゃないんだよ」

「ん?」


 どういうことだ? まあ、男に裸見られて平気そうだったけど、何を見るのがいけないんだ?


「お前の身体でも、主観と客観じゃ全く感じ方が違うんだよ」

「あー、つまり、自分の身体は、別に良いけど、私の身体は見ると恥ずかしい。って所?」

「そうそう。健全な高校生には目に毒だ」

「馬鹿ね。同じ私なら構わないわよ」

「うわっ! ちょ、待て!」


 私は構わずに服を一気に脱ぐ、ジュンがわーわー騒いでいるが無視だ。そんなことにいちいち構っていられない。


「ほら、あんたも脱ぎなさい」

「……」


 完全に目を逸らして、顔を赤くしている。なに、この姿。小動物みたいで可愛いんだけど、すりすりしたい。あっ、でも私の身体だ。

 俯いてパクパクと口を動かして何かをしゃべろうとするが声になっていない。

 もう、この娘は、初心なんだから。確かに、元は男かもしれないが私の認識では女だ。女同士で肌を去らそうが何しようが別に何とも思わない。あっ、だから保健室の時のジュンは動揺が少なく、今動揺しているのか、なんともちぐはぐだと思う。


「あんたも脱ぎなさい」

「分かったけど見るなよ」

「じゃあ、先に入ってるからすぐ来なさい。逃げたら、この姿のまま追いかけるからね」


 まあ、嘘だけど。それぐらい言えば逃げないだろう。

 私は、そのまま、お風呂場で身体にお湯を掛け、さっと汚れを落として、湯船に浸かる。

 広くなった湯船で足を思いっきり延ばして、ジュンが来るのを待つ。


「ねぇ、まだ?」

「今行くって」


 ガラガラと開けて入ってくるジュン。結っていた髪を下ろし、肩から身体の前に流す姿は、妙に艶めかしい。


「なんでそんなにもじもじしているのよ。逆にエロいわよ」

「うるせぇな。オレだって好きでこの姿じゃないって」


 そう言いながら、どっこいせ、と親父臭い声と共に腰を下ろす。胡坐掻くな。でもちゃんとタオルで前隠している。うん、逆に見せないエロさがある。


「あんた、何時もどう入っているの?」

「うん? 普通だぞ。掛け湯で汚れ落として、風呂入って、頭と体洗って、シャワー浴びて出る」

「それって、入浴時間短くない?」

「うーん。十五分から三十分だな」

「短っ!」

「良いだろ。別に、男なんて烏の行水だ」


 今は女だ。と言いそうになるが、その前にジュンが浴槽に入ってくる。

 互いに恥ずかしいのか、背中合わせで湯に浸かる。背後からは、ふーっ、と気の抜ける声が漏れるから毒気も抜かれ、文句も言えない。


「極楽、極楽」

「あんた、女の私と入るっているのに緊張しないの?」

「入る前は不安だったけど、なんだ。思ったより興奮しないな」

「それって、私の身体が貧相だってこと? うん?」


 二人入っても少し狭くなった浴槽で背中を押しつけ、ぐいぐい端に追いやる。


「おい、止めろよ。子どもみたいな嫌がらせして」

「煩い。私は、どーせ子ども体型ですよ」

「いや、そこまで言ってないだろ。どちらかというと着太り型だ。ちゃんとくびれている所はくびれてるし、出る所は出てる」

「それって、胸は出ないでお腹が出ている?」

「ちげーよ。腰がくびれて、尻が出ているだ。少しだけど」

「やーい、尻デカ」

「おい、今のオレの身体ってお前の身体だよな」


 互いによくわからないテンションの漫才を繰り広げて、互いに息を吐く。


「何やってんだよ。オレたちは」

「知らない。なんだ、どうでもいいって感じ」

「なあ、胸って重要なのか? 森坂の件は分かったが、それだけじゃないんだろ?」


 なんで同じ私たちって、ポンポイントで私の痛い所を突くのかな? 別に話すような内容じゃないんだけど、やっぱり同じ私達ってだけで心の壁が突破されちゃう。


「あんたは私の身体だけど、変化の過程は知らないわよね」

「そうだな。普通は、歳を追うごとに成長し、変化するな」

「私はね。小学校の頃から少し活発だったから男の子に間違えられた事があるの」

「ふーん」


 気の無い返事だけど、ちゃんと耳を傾けてくれるのが分かる。だから、私がぽつりぽつりと独白していく。


「でもさ、ある時期男の子と女の子の違いを自覚させられる時ってあるわけよ。私の場合は、高校生くらいの年上の女性が綺麗だな、カッコいいな。と思えたんだ。それからちょっと女の子らしくしようと思ったんだ。その女性のように髪も伸ばして」


 そう、カッコいい女性だった。うろ覚えながら、はきはきとした口調だったのはよく覚えている。


「服装に気を使うようになったし、色々スキンケアだって覚えた。その人は、化粧っ気が無い人だったから私も化粧とか気にしないけど、人って雰囲気ってのがあるでしょ。それを真似しようとしたりもした。でも身長は伸び悩む、胸は大きくならない。雰囲気と言うよりお節介気質になっちゃうし。結局、自分はその人みたいにはなれないように感じて焦っているのかもしれない」

「そっか。まぁ、なれなくてもお前はお前だし。良いんじゃないか?」

「何よ。最もらしいこと言って」

「オレが思うに、別に今の話で胸の大きさとか無いじゃん。別に胸無くたって大人の女性はいるぞ」


 うん、まあそうなんだけど。なんか美乳以上の胸を持っている人って大人の女性って感じがするのよね。貧乳が子どもみたいな。


「別に、オレは胸無くても良いと思う」

「何よ。あんたの趣味は聞いてないって。でもありがと」

「そうそう、お前は素直にしてればいいだろ? 男は度胸。女は愛嬌ってな」

「なによ。あんたも女でしょ。笑いなさいよ」

「うおっ! こっち向くなよ!」

「良いでしょ? 同じ私同士なんだから」

「お前、その台詞もう一人のオレに言えよ!」


 お風呂場でばしゃばしゃと行儀の悪い事をしているが、自然とジュンの顔が柔らかくなる。

 今までは一人っ子だったけど、妹って結構良いかもしれない

短いです。外見、女の子同士でキャッキャです。

貧乳コンプレックス少女と胸無関心元男の組合せです

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