40、守る創世者、攻める破壊者
奈々達のチーム・スレイヤーは、残存敵勢力を叩いていた。上空から新手が来ている。残っているクリエイターは、決して数が多いといえるものではなかった。しかし、諦めるわけにはいかない。クリエイターとして、チーム・スレイヤーの隊長として、人間として、地球の住人として!
「狙撃手は戦艦を! 近距離部隊は降下部隊を叩く!」
奈々は残っている全ての者に命令を下した。向こうはもちろんだが、こちらだって戦力の減りは尋常ではなかった。
大気圏から降下してきた戦艦の中に、他よりも一段と大きな戦艦が目に付いた。奈々はそれを見上げ、唖然とする。
「何・・・・・・あれ・・・・・・!?」
おそらくは敵の母艦であろう。その戦艦を取り囲むように護衛している戦艦群は、ミサイルを一斉に発射した。狙撃部隊が数発のミサイルを撃ち落とすが、ほとんどはなんの被害もなくまっすぐこちらに飛んできた。
「皆伏せて!」
奈々は咄嗟に指示を出す。だが、ミサイル群は奈々たちのはるか上空で爆発する。爆発の直前、紅い風がミサイル群の中を突き抜けていった。
ミサイル群を破壊した人物を見やった。紅い物を背中に背負っている青年。ジャスティスと、装備が似ている。確かこいつは、ヤルドラの戦闘の時も、ジャスティスと共に姿を現した。
「よく聞いてください!」
青年はクリエイターに向かって話しはじめる。ほぼ全ての者が、その青年に視線を送っている。奈々は、青年の顔と、後ろの艦隊と、彼の武装をかわるがわる見ていた。
「俺が周りの戦艦を撃破します。全員で、あの巨大戦艦への攻撃を要請します!」
「わかったわ」
奈々は青年の申し入れを受け入れた。今この瞬間、ジャスティスやこの青年と争っている場合ではない。むしろ協力しなければならない。彼も自分達も、同じ人間なのだ。
「隊長!?」
海は不満そうに奈々を見た。海のことだ。味方と判断できない以上、協力するのは危険だと。いや、すでにジャスティスは敵と決められているから、その仲間であるこの青年も敵だと、そう判断したのだろう。
「私たちは守らなきゃいけない。そのために、手段を選んでるひまはないの!」
「ありがとうございます」
青年が謝礼の言葉を述べる。彼は、それを言い終えた後に、背中を向けて飛び去ろうとした。
「あなたの名前は?」
修二が叫ぶような声で青年に話しかける。青年はゆっくりと、だが確かに、自分の名を述べた。
「ジャスト・キライスだ」
ジャストは、クリエイターたちに自分の名を名乗ったあと、一気に戦艦群へと向かっていく。自分が突破口を開かなければ、クリエイターはブレイカーたちに太刀打ちはできない。
「はぁぁっ!」
ジャストは両手を覆っているクロウパーツで戦艦の武装を切り裂いていく。ジャストの使うクロウパーツは、地球上でも、数少ない原石を加工して作られているパーツだ。熱は通常の鉄の数十倍の温度でなければ加工できないうえ、加工には高度な技術も必要とされている。もっとも、その原石は地球以外なら、案外とれる場所もあった。
戦艦の武装を切り裂くと、次は戦艦の背後に回りこむ。そして、エンジンに向かって、チェストレーザーを放つ。戦艦はゆっくりと下降していく。それを見届けないうち、ジャストは次の戦艦を狙う。
戦艦の前を塞がれる。ブレイカーだ。彼らは、ブーストパーツのようなものを足に取り付けている。レーザーのように、こちらも手に入れたのだろう。
「お前たち・・・・・・」
ジャストは目の前で詰め寄ってくるブレイカーたちに向かって叫んだ。
「そこをどけぇぇぇっ!!!」
ジャストの中で、ノヴァの覚醒が起こる。
ジャストの爪の後ろの方から、まるで、髪のような、たてがみのようなものが風になびくように形成された。ジャストはダッシュパーツの出力を上げ、素早くブレイカーたちに傷を付けていく。もちろん、殺すことはない。殺しても、何も得るものなどないのだ。
一瞬のうちにジャストは次々と戦艦を落としていく。手当たり次第に、武装を切り裂き、エンジンを破壊する。長いような気もするが、今のジャストは、そんなのはたいした手間ではなかった。
そのとき、巨大戦艦に向かって鉛の弾丸が直撃する。それに続くように、攻撃が戦艦に集中していく。周りの戦艦を蹴散らしたことにより、クリエイターたちが攻撃を開始したのだ。
勝ち取るためではない。皆、守るために戦っている!
ジャストはクロウパーツをつきたて、戦艦の武装を切り裂く。その勢いは止まらなかった。戦艦のあらゆる場所に取り付けられている武装を切り裂き、エンジンを破壊する。これによって人が死ぬかもしれない。いくら守るためとはいえ、命を奪えば本当に守ったことにはならない。
「これで全部か?」
ジャストは一通り戦艦群を落としていった。残るはあの巨大戦艦だ。遠方からの新手は確認できない。
これが最後の戦艦。最後の勝負だ。
ジャストはダッシュパーツを使って戦艦へと急迫し、クリエイターたちの攻撃している側の反対側へと回りこむ。これによって、向こうの誤射や、まさかの裏切りを避けることにしたのだ。
「さぁ! ラストバトルだ! ブレイカー!」
ジャストは、チェストレーザーを巨大戦艦に向けて発射した。