37、正義の鼓動
ジャスティスとジャストには、飛んでくるあのパーツがはっきりと見えていた。ジャスティスは体勢を立て直す。このジャスティスビートは、例えるならば人の下半身だ。ゆうにジャスティスの六倍の体積を誇っている。質量も、ジャスティスの全武装――フルアーマー――の五倍の質量だ。ジャスティスは、全てのパーツを分離し、ジャスティスのいわば股間部分にその体を入れる。そして、足の部分にジャスティスは手を通す。いっぱいに入れても、足先までは入らない。そして、両腕が完全に足の中に納まると、ジャスティスをしろい鎧が包み込む。ジャスティスビートが自動的にアーマーオンにしたからだ。
そして、胸に再びチェストレーザーパーツが取り付けられる。ジャスティスビートのエンジンが動き出す。ジャスティスは近づいていた地面からゆっくりと遠ざかっていく。
ジャスティスは、再び大空に飛び上がった。今度は、白き鎧を纏った鼓動を持って。
ジャストの装備するジャストビートは、ジャスティスビートとは反対に、上半身のような構造をしている。ジャストは、穴がぽっかりと開いている首の部分から体を埋め込む。そして、頭が白い兜で覆われていく。こちらにも、オートアーマーオンの機能がついている。腕から巨大な鉄の剣が現れる。ジャスティスビートには射撃的な武装が多いが、ジャストビートには格闘用の方が多い。
『ジャスト!』
通信機の向こうからジャスティスの声が聞こえてくる。
『僕は・・・・・・覚悟を決めた!』
「・・・・・・ああ!」
ジャストもそれに返事をする。自分には、とうの昔から覚悟はついている。人が死ぬかもしれない。守りたいが故に、その犠牲になるものもいる。ジャスティスがこの艦に来たとき、いや、初めて戦闘に向かおうとしたその日からだ。
ジャスティスジャスティスビートから大量のミサイルを放出し、ブレイクの艦隊へ向ける。艦隊もミサイルを発射し、応戦する。ジャスティスはゆっくりと後ろへと下がる。互いのミサイルがいくつかすり抜け、数発のミサイルは戦艦へ、数発はジャスティスへと向かってきた。
「当たれぇぇっ!!」
ジャスティスはジャスティスビートの足部分のレーザーをミサイルに定める。そして、胸に取り付けられているチェストレーザーと同時にレーザーを放出する。瞬く間にミサイルはレーザーの中に飲み込まれ、爆散する。
「てぇやぁぁっ!!」
ジャストは艦隊に突進し、両腕から伸びている巨刀で艦隊をなぎ払っていく。
ものの五分で、その場は沈黙した。ジャスティスたちによって。おそらく、まだ艦隊は来るだろうし、地上にもブレイカーはいるだろう。予想通りとでもいうかのように、空の彼方からブレイクの艦隊が迫ってきていた。
僕は、目の前で起こったことが、現実とは思えなかった。一瞬にしてブレイクの艦隊を殲滅させたのだ。それに、あの二人が纏っているあのパーツは、僕達は見たことがなかったのだ。
僕はしばらくその様子を見ていた。動き出す気は起きなかった。目の前の戦いにただただ圧倒されていたのだ。僕はつかまっていた壁をするすると滑りながら地面に座り込んだ。
「あんな・・・・・・」
僕は、あの力に恐怖を覚えた。
初めてジャスティスをみたときも思った感情。自分の中に、二度と戻らないと思っていた感情。恐怖。
僕はあの力に恐怖した。
僕はあの力に嫉妬した。
僕は、あの力を打ち倒したいと思った。
今の僕になら、それが可能なのではないのか?
僕のなかでの迷いは、今は消えることはなかった。