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THREE WORLD  作者: 織間リオ
第一章【一つのお願い】
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3、階段の先

 僕は噂されている階段を上った。少しずつ、町の風景が見えてくる。僕の町って、こんなものだったんだな。と、ちょっと感動。でも、高くなるまで下を見ているとたぶん途中で足が止まると考え、途中から前を向いて歩いた。

 かなりの段を上がったころ、部屋のようなものが見えてきた。噂や、帰りに見たときは、こんなのはなかった。もしかして、途切れてる階段って、実はここに繋がっていたのだろうか。

 その部屋に入る。中には誰もいない。ベッド、小テーブル、椅子が三つ。テーブルの上には、一冊の本が置かれている。手にとって表紙を見た。

「ソルジャーマニュアル――ここに集う戦士のために――」

という題名だった。椅子に腰掛け、本を開く。その本を、誰もいない部屋で、しかも無言で僕はそれを読んでいた。その本の中には、意味不明の単語が数多く出てきた。

 クリエイター、ブレイカー、モンスター、その他諸々――。そして、最後の文には、こう書かれていた。

 ロント直属のソルジャーとして、がんばってください。

 その一文を読み終えたとき、ハッとして後ろを振り返った。先ほど歩いてきた階段はすでになかった。しまった。

(もしかして僕、ここに閉じ込められた!?)

部屋には、ドアもあった。この先に何が待っているのだろう。ドアノブに手をかけたとき、ドアの張り紙に気づいた。かがんでそれを見てみる。なになに、「隣の835号室に来るように」と書いてあった。その整った字はどう見ても女性の字だった。ここにいても何も始まらない。とりあえず、ドアを開け、部屋の外に出た。出た先は部屋がずらりと並ぶ廊下だった。とりあえず、この部屋の左隣にあった835号室のドアを開けた。

「ちょっと!入るならノックぐらいしなさいよ!」

「ひぃぃぃっ!すいません!!」

勢いよくドアを閉める。で、ノックする。

「どうぞ」

一言の声がかかった。僕は小声で「失礼しまぁーす」と言いながら入った。中には、しっかりと着こなしをした女性がいた。僕と年齢はあまり変わってないようだ。その女性は、ベッドに腰掛けながら話し始めた。

「見ない顔ね――あなた、新人?」

「え?いや、さぁ、どうでしょう・・・・・・?」

「もしかして、部屋、隣?」

「あ、はい。ドアに、ここにくるように張り紙がしてありました」

「光る階段を上った?」

「あ、はい!そしたら、部屋にたどり着いて――」

「ふーん・・・・・・そういえば、まだ名前を言ってなかったね」

急に女の子のような口調で話してきた。どうやら、普通はこんな喋りをするようだ。

「私は桜井 奈々(さくらい なな)。この班の班長。階級はP」

「あ、僕は矢倉潤といいます!」

僕はマニュアルに載っていた文章を思い起こす。ここには階級制度があって、一番下がR。そこからQ、P、O、N・・・となっていき、Aの次に高いのがV、X、Z。そして、最高級がSだった。

「階級は・・・・・・ま、新人だからRか」

勝手に決められるのはいやだったが、一応先輩だろうし、しょうがない。

「あ、それから、司令部から直々に言われてるんだけど」

奈々はこちらを向き直って言い始めた。

「私が潤のパートナーをやることになってるから」

「パートナーってことは、一緒に行動するってことですか?」

「うん。パートナーだから、階級によって言葉を改める必要はないからね」

ということは、例え階級が僕のようなRでも、パートナーなら、Sのやつともタメ口がきけるということになる。逆に言えば、パートナーでなければ上の命令は絶対というところだろう。上下の関係が消えたり発生したりと、いろいろ大変な場所だろう。

「あ。もう一つ。ここでは決まった制服があるの。潤の部屋のクローゼットに入ってるから」

「うん・・・・・・」

僕はいったん部屋に戻り、クローゼットを開いた。水色がベースの服に、防御用のかるい鉄がいくつもついている。さっそくその制服を私服の上から着た。熱くはない。ここまで着ても熱くないということは、結構通気性がいいのだろうか。制服がかけてあったハンガーの横に、いくつもの武器が置かれている。剣、棒、銃、鞭、弓、杖、槍・・・。これだけの種類があると、どれを選ぶか迷うほどだ。が、こんな危険なのを持つのは怖いというのが、今現在の僕の心境だった。

 クローゼットを閉めようと取ってに手をかけた瞬間、部屋の電気が消え、赤い警報ランプが鳴り出した。一瞬、心臓が止まったかと錯覚した。今まで警報ランプなんて、見たことも聞いたこともなかった。

「潤!いる?」

「いるに決まってますよ!」

「急いで!ブレイカーの襲撃よ!」

<敵襲!敵襲!ブレイカー十数人が襲撃してきた!Nランク以下は直ちにこれを撃退せよ>

僕は一番近くにあった銃を持った。腰にピストルベルトを装着し、そこに銃を突っ込み、奈々の下へと向かった。奈々は尚もせかしながら、僕について来いとでも言うように背中を向けた。僕も後に続く。奈々の横につく。

「ブレイカーって、一体なんなの!」

「ブレイカーっていうのは、簡単に言えば」

「簡単言えば?」

「敵よ」

「それくらい分かるよ!」

「ごめん。ブレイカーは、「ブレイク」という巨大組織の中で働く者たちのこと。たまに私たちクリエイターの巨大基地、「リエイト」を狙ってたまに襲撃してくるの」

ここまでのいきさつを考えれば、その「リエイト」はここであるだろうと予測がついた。そんな会話を交わしているうちに広いところにでた。そこでは、数人の仲間クリエイター達がブレイカーと思われるやつらと戦っていた。

 なんで、こんなことをするんだ。僕たちになんの罪があるというんだ。ここを手に入れて、その後に世界はどう改善されていくんだ。でも、僕は、ここを守れる自信はない。逆に自信があるやつや、強いやつがいるから、勝てるかもしれない。でも、僕がそれに貢献するとは限らない。僕は、あるだけの勇気を振り絞って、ブレイカーに銃口を向けた。


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