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THREE WORLD  作者: 織間リオ
第四章【エイプリルベース】
35/48

32、怒りのドラゴン 紅龍

 降下する一隻の艦の中に、紅龍は身を置いていた。地球進攻作戦、「エイプリルベース」の協力という形で乗艦したのだ。大気圏の振動に対して、龍は近くの壁に体を預け、大気圏を突破するのを待った。

 大気圏を抜け、眼下には日本があった。周りを海で囲まれ、今まではなんの不自由もなく暮らしていた国民達が今、恐怖に震えることだろう。

「地上降下準備! 急げ!」

ゆっくりと近づいてくる緑の土地は、しばらくいくとビルの立ち並ぶ場所へと変貌していく。龍はパラシュートを背中に取り付け、降下できる状態になる。

「各員、降下!」

その命令の元、次々とブレイカー達は地表へと降りていく。龍もそれに混じり、戦場へと赴いたのであった。


 一方の地表では、ブレイカー達が降下してくるのが見えた。僕達は、狙いを定めて手榴弾を投げ込んだり、ライフルで撃ち落したりして、数を僅かながら減らしていた。だが、それでも多いのには変わりはなかった。

「自衛隊は動いてないんですか!?」

修二がスナイパーライフルを撃ちながら聞いてくる。

「説得してもこなかったんだ。今頃パニックになって動かせないと思う」

僕は、修二の質問に返答しながらも、手榴弾を投げ込む。作戦前に渡されたもので、結構広範囲を攻撃できる。そのとき、奈々が僕らに向かって叫んでくる。

「前衛部隊より、ブレイカーの着陸を確認!」

無線機からの連絡をそのまま僕達に伝える。急いでビルとビルの間を駆け抜ける。

 今の僕には、恐怖心などなかった。

 ただ守りたいと言う気持ちが、僕を突き動かしている。

 僕は、強くなったのだろうか? あのとき願ったように、まだ、力も持たぬころに抱いた願いを。動き出した運命の歯車が、恐怖心をすり潰したのだろうか。

 ブレイカーは次々に地上へと降り立ってくる。前衛に到着したとき、僕は一人だけ、知り合いを見つけた。

「あいつは・・・・・・!」

他のブレイカーよりもかなりの力をもつ雰囲気だ。容姿も他のブレイカー達とはかなり違う。赤を基調とした着こなしは、いつだかも見たことがあった。

「紅・・・・・・龍・・・・・・!」

勇をさらい、僕に禁句を投げかけた男! いつの間にか、僕の中には怒りが渦巻く。ここまで怒りを覚えたのは生涯初めてだったかもしれない。

 僕は、右手に剣を握り締め、大きく地面を蹴って、ブレイカーの中にいる龍へと飛び掛っていった。

(やるぞ!)

「うん!」

キーラーが僕の体をのっとり、さっきよりもかなり速いスピードで龍へと向かう。目の前には、キーラーを拒むように立っているブレイカー達がいる。

「邪魔だぁぁっ!!」

キーラーは素早く剣を振り、目の前の敵の四肢の一部を斬りおとしていく。一気に龍との間合いを詰め、剣を振り下ろした。

 龍が懐から細身の剣を取り出し、頭上に掲げ、こちらの攻撃を受け止めた。つばぜりあいだ。キーラーは一歩も引かぬとでもいうかのような気迫でどんどん龍を押していく。

「甘いっ!」

龍が剣をしならせ、こちらを振り払う。もう一度近づこうと足を踏み出した時、龍から強いオーラが放たれた。


 龍は怒りに震えていた。目の前の敵は、今この瞬間、自分よりも格上であると。だが、今なら変わる。変えられる。

「この力を解き放つ。私の命を削ってでも!」

龍の中で弾ける音が聞こえた。一気に視界が開ける。目の前の敵の動きが手にとるように分かる。これが、自分の力。

「究極の覚醒システム、『ノヴァ』。強烈な戦闘力を手に入れることができる、まさに究極」

龍の体がみるみるうちに変わっていく。体が長くなっていき、うろこで覆われた体は、どんどん膨れ上がっていく。手に鋭い爪を見せるその姿は、まさしくドラゴンだった。


「これは・・・・・・!」

巨大なドラゴンが目の前に現れる。いや、現れたというよりは、変貌したというほうが妥当だ。赤いうろこで包まれた体は、そこらのビルほどの大きさもある。さすがのキーラーも驚愕したが、すぐに剣を構えなおし、再びドラゴンに変貌した龍へと向かっていった。

 龍が巨大な尾を地面にたたきつけた。キーラーは瞬時に僕に代わった。僕は巨大な尾を斜め前方向にかわす。そしてキーラーに再び代わると、キーラーはうろこをつたう様に上っていく。そして、龍の頭上まで昇りつめ、一気に剣を振り下ろす。

「はぁぁぁっ!!」

がっつりと振り下ろされた剣は、そのまま引きずるように龍の背中を切り進んでいく。ゆっくりと下りながら、龍には確実なダメージを与えているのだ。

 地上に降り立ったとき、龍はしぼむようにもとの姿に戻っていく。背中は血でにじみ、片膝を地面についたまま、ようやく息をついているというところだった。


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