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THREE WORLD  作者: 織間リオ
第三章【戦う理由】
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26、邪悪な気配

 奈々は、次の日も潤を探していた。学校が終わり、町中を歩き回った。だが、潤の姿はない。昨日は、普通に学校へは来ていた。今日来ていないということは、昨日帰ってから今日の朝までに、何かあったとしか考えられない。そのとき、頭の中に一人の少年の姿が浮かぶ。潤とともにいつもいる少年だ。名前は分からないが、もしかしたら潤のことを知っているかも知れない。奈々は、唯一の手がかりを求め、今日は一旦引くことにした。


「ソルビートから通信?」

ルナビートの艦長、シーナ・ユナはその知らせを聞いて戸惑った。宇陸海空襲撃戦艦ビート級1番艦ソルビート。ジャスティスやジャストのように、強力な戦闘員はいないが、総数五十という戦闘員と、戦艦そのものの火力は、ルナビートを大きく上回っている。だから、向こうが連絡してくるのは、本当に極稀な話なのだ。

「いいわ。つなげて」

「はっ!」

慌ただしく通信回線を開く。モニターには一人の男の姿が映し出される。

「久しぶりね。艦長」

「どっちも艦長なんだ。名前で呼んでくれ」

相変わらずの艦長だ。数年前、二人は軍に所属していた。だが、わけあって軍を抜け出し、それぞれが艦を持った。だからこそ、二人は名前で呼び合うほうがしっくりきているのだ。

「ところで、なんでこちらに連絡を? ストーム・アルフ」

シーナはその名を呼んだ。向こうは急に顔をこわばらせ、話し始めた。

「うちのスパイの情報なんだが・・・・・・」

挑むような目つきでこちらを見てくる。僅かの間開かなかった口が開く。

「どうやらブレイカーが地球を攻め込むらしい。世界を超えてな」

その一言にそこにいた全員が驚いた。ブレイカーといえども、クリエイターといえども、自分達といえども、地球が唯一住める場所。故郷なのだ。人間にとっては。それを攻め込むということは、地球の領土をブレイカーが全て奪うということになる。それでは、そこに住む人たちは一体どうなるというのだ。実際、彼らには破界がある。そこを住処にして暮らしていけばいいのではないのか。シーナは、聞き返した。

「クリエイターの方は?そのことを知っているの?」

「これも、こっちのスパイの話だが、どうやら、上層部の方にしか知れてないらしい」

「そのスパイ、上層部ってことかしら?」

「まあ・・・・・・皮肉な限りだがな」

僅かな笑みを浮かべた後、ストームは再び顔を引き締め、語りだす。

「おそらくは、地球側も、各国が軍を出すだろうな。クリエイターも、このまま黙ってはいまい。なぜなら・・・・・・」

「ブレイカーを一気に数を減らす絶好の機会だから?」

シーナは、ストームの言葉をさえぎった。勿論、この答えは正論だ。各国が軍を出すのだ。少数ゲリラ戦法なんかでは制圧できるはずもない。つまりは、かなりの数のブレイカーを戦線投入してくる。もしかしたら、全軍なんていうのもありえないことではない。女子供まで戦場に駆り出される。そんなことはさせてはいけない。なにがあっても。

「作戦はいつごろの開始なのかしら」

「遅くても、一ヶ月以内には攻撃が開始されるらしい」

「わかったわ。報告は以上?」

「ああ。時間とって悪かったな」

そこで通信は途切れた。今現在、ルナビートは木星の周辺を漂っていた。エンジンは起動させず、流れるように木星の周りを回っている。エンジン節約のため、あまり無駄遣いはできない。かといって、素早い行動を惜しむことはできない。だからこそ、このあたりを漂っていた。

 もう、戦わない道を選ぶことはできない。


 とある巨大な基地では、ブレイカーたちによる、最終作戦会議が行われていた。その一人であり、ブレイカーの最高総司令官の、グール・ブレイは、熱烈な演説で、会議を取り仕切っていた。

「我々は、地球という大地を手にし、ブレイカーの繁栄、ブレイクの拡大をすすめるのだ!」

その気迫ともいえる声は、その場にいた司令官達を圧倒した。それぞれの司令官は、各星々を取り仕切っている。それぞれが持っている全勢力を挙げて地球を制圧する。ということで話は決まった。

「作戦は今日から五日後、四月一日。作戦名「エイプリルベース」。午前五時、地球進攻開始」

地球進攻作戦、エイプリルベース。自分達の領土を拡大し、自分達の力を全ての者に知らしめる。四月一日はエイプリルフール、嘘をついてもいい日だ。だが、その日に起こるのは、嘘でも冗談でもない、まぎれもない真実だ。会議が終わり、自室に入ったグールは、高らかな笑い声を上げた。

いずれ掴む、勝利の笑いを。


 三月二十八日。僕は目が覚めた。長き眠りからの開放は、一瞬、僕に不安を与えた。一体、僕がこの状態になっていた一日になにがあったのか。奈々は?勇は?あの少年は?僕の周りに分からないことが多すぎる。僕は、なんとかまだ重い体を持ち上げ、外へと出た。いつもと変わらない風景。僕は、急いで自分の家へと走って行った。


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