18、基地進攻作戦
「えええぇーっ!」
「そんなに驚くことないじゃん」
無理だ無理だ。そんなこと僕にできるはずがない。防衛ならまだしも、進攻だなんて!
「ブレイカーと、僕が互角に戦えるわけがないだろぉっ!」
そう、奈々から聞かされたその作戦とは、ブレイカーの基地を攻め落とすという作戦なのだ。あの日、初めての戦闘もブレイカーとだった。僕は最前線で戦うことができない。戦うことのできる勇気がなかった。だからこそ、あのときは銃を選んだ。今はキーラーが攻撃するから、剣を選んでいる。つまり、僕が前線に出て戦うなんていうのは、戦力としても、役に立たない。むしろ邪魔になるだろう。
「大丈夫だよ、潤なら」
「そ、それって・・・・・・どういう・・・・・・」
「その回避能力は尋常じゃないし」
奈々にそこを指摘されるとは思っていなかった。確かに、僕は自分でも納得できる程のかなりの回避能力が備わっている。けど、それだけだ。攻撃を行うのはキーラーだ。僕ではない。
「とにかくさ! ロントに行こ! もうすぐ皆来るし」
「え、あ・・・・・・うん」
僕は、奈々に言われるままに返事をした。なんて流されやすい性格なんだろう、僕。聞かれたら「いいえ」と答えられないのが僕だ。誰と話していても、なぜか断ることができない。
結局、僕は奈々と共に、階段を上っていった。僕らを光が包み込む。そして、その光が薄れたころ、836号室、僕の部屋が目の前に映った。
「じゃ、十分後にチームルームでね」
奈々はそういうと、部屋を出て行った。それにしても、どうやって奈々は僕の部屋に入ってきたのだろう。普通に考えれば、ここの部屋の鍵が開いていたから、もしくは、玄関の鍵が開いていたか。どっちにしろ、奈々は不法侵入ということにしておこう。もちろん、警察に言うつもりはさらさらないけど。
僕は、剣が納まっている鞘を肩に掛ける。そして、必要そうなものをポーチに詰め込み、部屋を出る。そのまま、まっすぐにチームルームに向かう。チームルームまでは一本道だが、曲線状の道になっている。それは、このロント巨大基地「リエイト」が、丸い構造になっているからだ。だから、通路のほとんどは曲線状で、まっすぐ歩くことはほとんどない。
しばらく行った所で、肩がぶつかる。何も考えていないくらい考え込んでいたからだ。僕は、振り返り頭を下げる。
「ああぁっ・・・・・・すいません!」
僕はおろおろしながら下げた頭を上げる。そこには、メガネを掛けた秀才のイメージを持たせる顔立ちの青年がいた。間違いなく、僕より年上だろう。
「これは失礼した。ぼくは、少しばかり考え事をしていてね」
「あ、実は僕もそうなんですよ。ほんと、すんませんでした」
「君が謝る必要はない。君は壁際を歩いていた。真ん中でも歩いていればよかったぼくが悪い」
「そんな! 僕こそ、避ければよかったのかと思います。ほんとすみません!」
「君は、彼とは違って、礼儀がいいのだな」
彼?だれのことかはわからない。だが、三回も謝ったのが、どうやら好印象を与えたようだ。
「君は、どこかのチームに所属しているのかい?」
「あ、僕はチーム・スレイヤーの隊長をやっています」
「ほぉ、あのチーム・スレイヤーか」
あの? 僕らのチームは、そんなに有名なのか?全く理解ができない僕は、胸についているその名前を見る。和田・・・・・・光男。みつおとでも読むのだろうか? だが、そんなことよりも、驚いたのが、彼の階級だった。なんと、彼はVランクなのだ。かなり高い位に属しているようだ。
「あ、では、これから作戦があるので」
「ああ、ブレイカーの基地進攻作戦か。がんばりたまえ」
「はい! 失礼します」
僕はそう言って、相手に悟られない程度の速さで歩いていった。もう逃げているような気さえする。
長いような気がしたチームルームまでの道も、とうとうなくなった。チームルームの部屋に入ると、そこには海と修二がいた。二人は立ち上がり、僕に向かって敬礼する。僕も慌てて敬礼し返す。そして、ゆっくりとソファに座る。
「聞きましたよね?」
「え?」
海が僕がソファに座った途端に聞いてきた。
「今回のミッションについては。桜井隊長から」
「ああ、聞いてる。ブレイカーの基地進攻作戦のことだよね」
「はい」
なんか上から目線で見られたような気がしたが気にしないことにした。その後、修二と雑談をしているところに、奈々がやってきた。僕と雑談していた修二と、静かに本を読んでいた海は立ち上がり、奈々に敬礼する。七も敬礼する。奈々が僕の隣に座る。そして、今回のミッションの内容を説明しだした。
今回は、いままで行っていた魔界ではなくブレイカーがほとんどの星を占領しているという破界に向かうらしい。作戦の舞台となるのは、ヤルゾーラ星。今現在はほとんど占領率が少ない星らしい。今回は、その星に新たに作られているヤルドラ基地の破壊、及び、そこで作業中のブレイカーの掃討。そして、今回は、他のチームもこれに参加するらしく、報酬も、戦果しだいということになるらしい。
「それじゃ、みんな行こう!!」
奈々は高らかに言い放つ。全員が――潤を除いてだが――自身に満ち溢れた顔で出発した。