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THREE WORLD  作者: 織間リオ
第三章【戦う理由】
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16、深き眠りからの目覚め

 僕の目の前に天井が映った。ここはどこだ? というのが、率直な疑問だった。ゆっくりと体を起こす。白衣を着た職員が、こちらに気づいて話しかけてくる。

「大丈夫か?」

大人・・・・・・というより、老人と言った方が近いであろう年代の男性が、僕の体の様子を案じた。どうやら、ここはリエイトの医務室か何かだろう。僕は、言葉を返した。

「はい。もう大丈夫です」

そういって、僕はベッドから下り、靴を履く。まだ僅かな頭痛はあるが、行動できないわけではない。時計を確認した。五時・・・・・・くらいか・・・・・・。ミッションから帰ったのは昼過ぎだったから、四時間くらいだろうか・・・・・・。

「昨日の昼から今日の夕方まで、ずっと寝込んでいたから、少しは心配になったが、もう大丈夫そうだの」

え・・・・・・? 昨日の昼?まさか、そんなことはないだろう。きっと聞き間違えたのだ。僕は聞き返した。

「あの、今なんて?」

「え?少しは心配になったが・・」

「いえ、その少し前で」

「ああ、昨日の昼から今日の夕方まで、というところかね?」

し・・・・・・信じられない。僕は唖然とすると同時に、別の意味で軽い頭痛を催した。睡眠時間は、四時間じゃなくて二十八時間だったということになるのだ。

「僕・・・・・・そんなに寝てたんですか・・・・・・?」

「そりゃあもうぐっすりと」

僕はまたも唖然とする。まさか、この歳で一日以上寝るなんて考えもしなかった。これが明け方の五時なら、結構寝たんだな、僕。くらいに感じられる。でも、一日以上なんて・・・・・・!

 幸い、昨日は土曜、今日は日曜なので、学校はない。だが、それよりも、なぜ、僕はあんなことになってしまったのだろう。確か、あの会話の中に出てきた、「複合」という言葉がいつまでも頭から離れなくなってしまっていた。・・・・・・あれ? あの時は頭痛とか起こったけど、今は全くない。なぜ?言葉の力というやつだろうか?

 言葉というのは、いくら作っても、それを口に出したり、何かに書き記さなければ、誰にも知れることがない。逆に言えば、人が気分を悪くするようなことを口に出さなければ、半永久的に、その人が気分を悪くすることはない。つまり、あの言葉は、直接聞いてしまったから異常が発生したのかもしれない。

 僕は医務室を出た。ドアを開いた先にいたのは、壁にもたれかかっていた奈々だった。奈々はびっくりしたようで、口を開けている。

「あ・・・・・・大丈夫?」

「そ、それはこっちのセリフ!」

「あ、ごめん」

思わず「大丈夫?」なんて聞いてしまった。いつからここにいたのかは分からない。ちょっと前にいたのかもしれないし、実は昨日の昼からずっといたりしたのかもしれない。

「昨日から・・・・・・いた・・・・・・」

奈々はそう小さく呟いた。僕は俯いた。申し訳ない。自分のためにずっとここにいてくれたことに。僕は、何も返すこともできない。いや、一つだけある。たった一言。

「ありがとう」

奈々はその言葉を聞いた瞬間、笑顔を見せた。心配をかけてしまっただろう。僕は奈々の隣に並んだ。奈々はその笑顔のままで聞いてきた。

「でも、びっくりしたよ。一体どうしたの?」

どう説明しようか迷う。たぶん、単に頭痛と吐き気がしただけではないだろう。だが、あの言葉を口にしたら、たぶんまた同じことになるだろう。僕はただ黙って歩き続けた。奈々も、それ以上は聞いてはこなかった。自室の前までくると、僕はようやく口を開いた。

「じゃあ、また明日」

「うん。学校でね」


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