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THREE WORLD  作者: 織間リオ
第二章【チーム・スレイヤー】
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13、蒼き翼

 ドラキルと戦闘を続ける。かなりのダメージを蓄積させたドラキルは、ほとんど動けない。討伐も時間の問題だろう。キーラーは尚も僕の体を借り続け、攻撃を続ける。もうほとんど動けそうになさそうだ。キーラーが僕の体で走り出す。剣を引く。そして、それを頭に向かって斬りつけようとした途端、爆風で吹き飛ばされた。

「ぐわはぁっ!」

キーラーがうめき声を上げる。そして、徐々に僕の体の感覚は戻っていく。一つの戦闘機が風を切るように突き進んでいる。なんなんだ? あれは? そんなことを考えているうちに、戦闘機が降下してくる。逆さまになった戦闘機のハッチから、人が飛び出してくる。しっかりと着地した彼は、周囲を見渡していた。


 青年、ジャスティスの無線に、テペーラの声が入ってくる。

<いつでもパーツは射出準備OKだ>

「ありがとう」

ジャスティスは無線の入っている耳を押さえて話した。言い終わるとジャスティスは周りを見渡す。その中に、一人の少年の姿を捉える。

「なんで、こんなことを!」

ジャスティスは潤に向かって走り出す。彼は風のような動きで接近する。その拳を突き立てる。だが、それをバックステップでかわされる。体を沈み込ませ、タックルでもするように蹴りを入れる。だが、それさえも軽々とかわされる。なんて身体能力なんだ。だが、ジャスティスは一つだけ気になっていた。

―――なぜ攻撃してこない?


 僕は突如現れた青年の攻撃をひたすらかわし続けていた。全ての攻撃を流れるようにかわしていく。だが、それと同様に、向こうの攻撃も風を切るように早い。動きについていくだけで精一杯だ。だが、かわし続けていたところで、青年はいきなり距離を取った。そして、無線に手をあて、何かを放し始めた。

「ウイングパーツ、ウイングウエポンパーツ、グローブパーツ射出」

意味不明の言葉を彼は発した。一体何が起こるのかは想像もつかないが、かなり危険な感じがするのは事実だ。僕は、何が起きてもいいように、態勢をとった。


「よぉーし、射出命令だ。一気に送り出せ!」

テペーラはきびきびと自分も働きながら命令を下す。十秒もしないうちに、さまざまなパーツが戦艦から飛び出していく。先ほど発進したジャスティスの着陸地点からは、そう遠くはない場所だった。三つのパーツはそれぞれがまっすぐにジャスティスへと向かっていく。テペーラはにこやかな、実に満足そうな表情を浮かべた。

「これでよしと」


 いまだに青年と戦い続けている僕は、他の三人の行方を目で探した。さきほどの爆発で、僕を含めた四人が、この青年に気を取られているうちに、ドラキルの体力が回復していたのだ。回復した量はさほど大きくはないが、それでも、三人をてこずらせているのは確かだ。

 しかし、そこで妙な物体が、上空から舞い降りてきた。それに気を取られていた僕は、青年に胸を突き放された。よろめき、尻もちをついた僕は、青年の姿を見つめた。彼はジャンプした。常人並のジャンプではない。軽く五メートルはジャンプしている。そして、その背中に蒼い翼のようなものが取り付けられる。今気づいたのだが、彼の体のいたるところには、針金のようなものが張り巡らされている。背中、胸、手、腰、足。

 翼が取り付けられた青年は、空を浮いている。その蒼い翼を広げて。続いて、腕に、コテのようなものが取り付けられる。そして、さらに上空から、円盤型の物体が落ちてくる。円盤に沿って八本の刃――のように思われるもの――が取り付けられている。そのうちの一本が伸び、彼の手のうちに収まる。彼の翼くらいの大きさのそれは、どうやら彼の武器らしい。

「ウイング装着完了」

翼を取り付けた彼は、小さくつぶやいた。右手にそれを持って、こちらに突っ込んでくる。向かってくるのなら、迎え撃つしかない。でも、僕には攻撃する勇気など、ない。だから僕は避ける。死にたくないから。傷つきたくないから。自分を、仲間を、守りたいから。

 大きく振られたそれをジャンプでかわす。振り終わったと思えば、再び逆方向に振り回し、再度攻撃してくる。僕はジャンプする。そして、円盤の面に手を乗せ、そのまま一回転し、かわす。青年は、先ほどまで振り回していた武器を投げ上げる。空中に飛び上がると、その武器は、背中の翼に取り付けられた。そして、なにやら無線で何かを言っている。この位置からでは分からないが、またなにか飛んでくるかもしれないとは思っていた。しばらくしたところで、再び何かが飛んでくる。個数は二つ。今度は小さいのと中くらいのものだ。小さい方は、腰に装着され、もう一つは胸に取り付けられた。肉眼で見る限りでは、腰に取り付けられたのは銃だ。だが、片手で持てる銃にしては、少し大きい。なぜ?

 その後に遅れてさらにもう一つ飛んでくる。それは足の部分に装着される。全ての部分に、さまざまなものが取り付けられた。

全武装装着フルアーマーなのか・・・・・・?」

先ほどまでの彼の瞳にはなかった感情が僕からは見て取れた。

「サイコイーグル!」

彼は叫ぶ。その声とほぼ同時に、先ほどまで武器として使われていた円盤の刃が宙に浮いた。八本の刃が円盤を離れ、こちらにまっすぐに向かってくる。僕にはその全ての動きが見えた。どうにか僕はその攻撃を受け流した。今度は足に取り付けられている銃口と、胸にある銃口が共に火を噴く。あれは、ただの弾丸ではない。レーザー兵器だ。三つの銃口から放たれたレーザーは、やはり僕を狙ってくる。さまざまな方向にかわす。は持っていた銃で、僕を撃ってきた。これもレーザー兵器だ。僕はそれさえも軽々とかわした。


 先ほどから何重もの攻撃を重ねているのに、相手に全く当たらない。向こうが完全に見切っているのか、パーツの調子が悪いのか。無線機に、テペーラの声が入ってくる。

<ジャスティス!ウイングパーツのエネルギーが切れてきた。そろそろ潮時だ>

ジャスティスはそれを聞くと、円盤から刃を切り離し、それを少年に向かって向ける。同時に足と胸のレーザー兵器を起動させる。その足と胸のそれは、チャージを開始し、間もなく臨界する。そして、手に持っている銃を少年に向けた。円盤の刃も、その刃先からレーザーを撃ちだす。ジャスティスの装備している全ての銃口が火を噴いた。


 僕は、青年が全ての砲口をこちらに向けているのを悟った。胸の砲口のエネルギーがチャージされている。そこが火を噴くと同時に、他の銃口も一斉に火を噴いた。僕は青年の手前へと逃げ込んだ。レーザーをなんとかかわす。そして、走り続けて、真下まで滑り込むように逃げてきた。レーザーが止まると、青年は逃げようと僕に背を向けた。

「待って! 君の名前は!?」

僕は力の限りにその背中に叫んだ。彼は僅かに躊躇った後、答えを返す。

「ジャスティス・ファイア」

それだけを言うと、彼は空高くへと行ってしまった。どうやら、奈々達もどうにかドラキルを静めたようだ。ドラキルはピクリとも動かなかった。彼は、一体なんだったのだろう。なぜ、ここに来た? なぜ、僕達・・・・・・いや、僕を狙う?

「でも、何だったんだろう。あれは・・・・・・」

奈々が不思議そうに声を漏らした。もちろん、それはここにいる誰もが思ったことだ。唯一表情を変えない海も、青年のことが気になっていたようだ。

「とりあえず、ミッションはクリアしたから、帰ろう」

僕はそう言った。どうせなら、もうここには長居したくはない。僕らは、今来た道を逆戻りして、シャトルRへと戻っていった。


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