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THREE WORLD  作者: 織間リオ
第二章【チーム・スレイヤー】
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12、炎王竜の叫び

 着陸地点から僕らは徒歩でドラキルを探す。一人で戦って勝てる相手ではないので、四人で団体行動を取った。ごつごつとした岩肌が、ずっと遠くまで続いている。山の頂上まで、ずっと岩肌が続いている。僕は、予想した。たぶんそのうちにこの景色が飽きるだろうと。

 しかし、そんな予測も一瞬にして破られる。岩陰から耳を塞がせられるような雄叫びが響く。そして、その雄叫びからまもなく、一頭の竜が姿を現した。こいつが・・・・・・ドラゴレイド・キル・・・・・・。僕はその名をつぶやくように言った。赤に緑がかったその肌は、岩肌の中でも目立つ。だが、それゆえの威圧感がある。二本足でその体を支えている。腕はなく、翼と一体化している。一言でその姿を現すなら、まさにワイバーンというのがぴったりだった。その鋭い眼光がこちらを睨みつける。挑戦的な目つき。僕はそれに恐怖する。力の差を見せ付けられたような感じだった。

 再びドラキルが雄叫びを上げる。今度は本当に耳を塞ぐほどだった。精一杯耳を塞ぎ、鼓膜へのダメージを少なくしようとする。そして、その足で岩の地面を蹴り、こちらへと突進してきた。脳内で危険信号が響くような感覚だ。ドラキルは僕に向かってまっすぐに向かってくる。なんとか右に体ごと飛び込んで攻撃をかわすと、すぐにやつへと向き直る。ちょうど向こうも向き直った。ドラキルは小さな火の玉を飛ばしてくる。あの炎に焼かれてしまえば――焼け焦げた自分の姿が脳裏によぎる――僕はやられてしまう!

 僕は横転し、火の玉をかわす。後ろで何かがこげる音がする。岩が無残にも焦げている。黒くなったそれは、見るだけでも脆くなっていると分かるほどだった。地を揺らすような足音に気づき、前に向き直る。かなり目の前まで迫っているドラキルがいた。だめだ。かわしきれない!

 だが、そう思っている間にドラキルは転んだ。何かに引っかかったようだ。僕は、その正体を確かめる。海だ。鞭によって、足にダメージを与え、転ばせたらしい。

「的になりたいんですか! あなたは!」

もっともらしい答えを放ってくる。僕は転んだドラキルから距離を取ろうと、後ろに下がる。僕の代わりのように奈々が飛び出し、ドラキルの頭を何度も突いた。血が僅かに吹き出る。転んでいたドラキルは起き上がり、翼を広げて上空に飛び立つ。そして、天空を見上げたかと思うと、炎を口から噴出した。そこで僕の周りの時間が遅くなる。あの炎から逃げられる場所は・・・・・・。あった。そこで少しずつ時間が早まっていく。僕はその口を開く。

「やつの真下だ!」

叫ぶと同時に僕はドラキルの真下に潜り込む。意味を瞬時に理解した海はすぐに真下に飛び込んだ。それにつられるように修二や奈々も飛び込んでくる。どうやっても真下にだけは炎が届かないようだ。そして、それを諦めたドラキルがどんどん下に下りてくる。全員が各方向に散り、ドラキルから離れた。奈々は投擲用の槍を投げつける。修二はサブマシンガンで乱射する。海は鞭で叩きつける。唯一武器による遠距離攻撃がない僕は、懐にしまってあったソードブーメランを投げつけた。

 各武器がドラキルに命中する。ドラキルは怯む。そのとき、キーラーの声が頭の中に響く。

(面白そうだな。俺に代われ)

「えっ、ちょ・・・・・・」

僕の返答を待たないうちに、キーラーは僕の体をのっとった。僕はしぶしぶ従う。自らの意図とは全く違う動きをする僕の体は、今現在僕の一部ではなかった。怯んでいたドラキルへまっすぐに走り出す。キーラーは鞘に納まっている剣を取り出し、引いて構える。横殴りにするように、真正面から斬りかかる。なんとか態勢を立て直したドラキルは、体を右にそらした。そのおかげで、体の中心部分を斬られることなく攻撃が終了した。それでも、かなりのダメージが入ったはずだ。それと時を同じくして、ドラキルは右に少しずつ傾いていく。転んだのだ。海が鞭による足への攻撃を行い、足に蓄積したダメージが、悲鳴を上げたのだ。

「おっしゃぁっ! このまま押し込むぞ!」

キーラーは僕の口を借りて言い出した。


 同じガンダン星の上空。一つの戦艦がエンジンをふかして飛んでいた。戦艦は、白と青を基調とした色をしている。その中で、一人の青年が、メカニックと話をしていた。

「え?じゃあ、もうすぐ出撃?」

その青年はおとなしい雰囲気を漂わせている。話しているメカニックは答えを返した。

「ジャストは待機のようだけど、お前はいかなきゃいけないようだ」

親しげに青年と話すメカニックは、彼の親友だった。

「また・・・・・・戦わなきゃいけないのか・・・・・・」

青年は、戦うのを躊躇う。戦いに身を投じれば、自分が死ぬかもしれない。だが、それ以上に、他の人や、動物の命まで奪ってしまうことになる。それが、青年にとって戦う理由を躊躇うものだった。

「しょうがないさ。上からの命令だしな」

表情を曇らせる青年をなぐさめるように、メカニックは笑顔を浮かばせる。青年は最後に一言こう言った。

「じゃあ、パーツの最終チェックを頼むよ。テンペラー」

「テペーラだって!」

テンペラーと呼ばれたメカニックはつっこむ。彼の本当の名前はテペーラ・エンペラー。同じような字が続いているため、皆テンペラーと呼んでいる。

 青年はアナウンスから流れる出撃の命令を聞いた。青年は格納庫に向かって走り出す。一つの戦闘機が見えてくる。彼はそれに飛び乗ると、ハッチを閉じた。

「発進、許可します」

若い女性の発進許可のアナウンスが流れる。青年は、開かれていく射出口を前に、言い放った。

「ジャスティス・ファイア、コアフライヤー。行きます!!」


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