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THREE WORLD  作者: 織間リオ
第二章【チーム・スレイヤー】
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9、チーム結成

 目が覚めたとき、僕は保健室に居た。ゆっくりと体を起こす。壁にかけられている時計に目をやる。九時二十三分。あれから一時間半近く経ったらしい。僕はベッドから降り、靴を履く。

「今日はもう帰る?」

保健室の先生が聞いてくる。どうしようか迷っていた。帰っても特にすることはない。でも、勉強するにはまだだるさが残っている。考えた末に僕は帰宅を選んだ。

 僕はゆっくりと立ち上がる。足が僅かに痛んだが、移動に支障はなさそうだ。僕は、カバンをとりに教室に戻った。

 教室では、現在国語の授業をしている。担当しているのは、今朝、僕や高橋を見捨てて教室に入っていった担任だ。僕は教室のロッカーからカバンを取り出し、席に座る。机の中に入っている教科書やノートをカバンに詰め込む。

「今日は帰るのか?」

見れば分かることを勇は小声で聞いてきた。今朝、担任が過ぎていった後、僕を担いで保健室まで連れて行ってくれた。それと同時に、その担任を睨みつけた。その瞬間、僕は勇と同じことを考えていたのだと思った。確証こそないが、おそらくそうだろう。

「さようなら~」

僕はそう言ってひとり、教室を跡にした。

 家に帰ると、誰もいなかった。母さんは仕事に行っているんだろう。僕は何も言わずに二階に上がる。カバンを開き、中から塗り薬を取り出す。保健室の先生が渡してくれた物だった。僕はそのふたを取り、足にゆっくりと塗る。そして、塗り薬のふたを閉め、机に置くと、僕はすぐにベッドに横になった。布団をかぶり、カーテンを閉め、まぶたを閉じる。だるくなった体を意識のうちに閉じ込めるには、十分な暗さだった。十分もしないうちに、僕の意識はゆっくりと睡眠という行為によって閉ざされていった。

 それから数時間後、目が覚めた僕は時計を確認した。二時半。かなり長い間眠っていたようだ。僕はゆっくりと背伸びをする。一階に下りていき、冷蔵庫を開ける。中にはプリンが三個入っていた。空腹をしのぐならこれでいいだろうと、僕はプリンを一個取り出した。冷蔵庫を閉めると同時に、玄関の戸が開いた。母さんが入ってくる。

「あら、潤。帰ってたの」

母さんが問いただす。僕は「うん」と言ってうなずき、プリンのふたを開ける。スプーンを使い、ゆっくりと口に運ぶ。全て食べ終わったころ、僕は一言こう言った。

「プリン、食べちゃってごめん」

その一言を聞いた母さんはふいた。

「なに言ってるの。いつでも食べていいわよ」

その一言を聞いて、僕も微笑した。でも、それ以上は二人とも何も言わず、それぞれの場所へと向かった。母さんは自分の昼飯を作るために台所へ、僕は自分の部屋へと。

 二階にある電話の子機が鳴った。すぐそばにそれがあった僕は受話器を手に取り、呼び出しに応じた。

「もしもし、矢倉です」

「あっ、潤? 私、奈々」

電話の相手は奈々だった。電話をかけているということは、もう家に帰ったのだろう。僕は奈々に用件を聞いた。

「で、用件は?」

「あ。そうそう。ロントの方から呼び出しがかかったの。三時までに集まるようにって」

聞けば、呼び出されたのは僕達だけらしい。奈々はそれ以上は詳しく言わず、十分後に私の部屋に来てという連絡を最後に、電話を切った。僕も受話器を置いた。窓を開けると、ゆるやかな春の風と共に、階段も現れた。僕は、それを一歩一歩踏みしめるように歩いた。しばらく行ったところで、僕の836号室に到着した。僕はクローゼットから制服を取り出した。学校の制服を代わりにかけて、ロントの制服を着た。時計を確認した。あと五分くらいか。僕はベッドに腰掛けた。ほとんど何もないこの部屋で特にすることもない。僕はただひたすら、時間がすぎるのを待った。十秒が過ぎ、二十秒が過ぎ・・・・・・ゆっくりと流れているのか、そうではないのかは僕には分からない。でも、それが示すのには従わなければならない。時間にも、人にも。

 そんなことを考えている間に五分が過ぎた。僕はベッドから立ち上がり、隣の部屋のドアをノックした。

「どうぞ」

毎日のように聞いている声が返事をする。僕はドアを開ける。奈々は、座ってと言い、椅子を指差した。僕はそれにゆっくりと座る。奈々はかなり嬉しそうな表情で僕に話し始めた。

「ロントから、私たちにチーム権が降りるらしいよ!!」

僕は、一瞬意味が理解できなかった。僕は、分からないことを、片っ端から聞いていくことにした。

「奈々。僕、分からないことが多いんだけど」

「じゃあ、一つずつね」

「まず一つ目、チーム権とは?」

「チーム権って言うのは・・・・・・」

奈々によれば、チーム権というのは、一部のクリエイターのペアにのみ与えられる権利らしい。つまり、通常なら二人でしかでられないミッションを、最大五人でできるらしい。チームの人数は十五人まで。でも、チーム権を持っているペアが、そのチームのリーダーを務めることになる。らしい。

「じゃあ、二つ目。なんでそれが僕達に与えられた?」

「それは・・・・・・運が良かったんじゃない?」

どうやら、はっきりした答えは奈々も知らないようだ。まあ無理もないだろう。

「五分後に、中央ロビーで新メンバーが二人入るから、行こ」

僕は奈々につられて、部屋を出て、中央ロビーに向かった。中央ロビーとは、この前ブレイカーと戦ったあの広場のことだろう。おおよその見当はつく。

 僕の予想通り、あのときの広場だった。そこには二人の若手らしいクリエイターと、リエイトの職員が居た。僕と奈々はそれに混ざるように入っていった。

「潤さんと奈々さんですか?」

リエイトの職員が確かめてくる。僕と奈々は同時に「はい」と答えた。目の前にいる二人は、それぞれの印象がまるで違う。一人は、いかにも新米のような顔をしている少年だ。だが、もう一人は、いかにも、堅物のイメージが漂う少年だった。

「こちらが、新しいリーダーの矢倉潤君と、桜井奈々君だ」

職員が僕らの名を呼ぶ。そして、今度は新メンバーの二人が自己紹介をし始めた。

滝山たきやま 修二しゅうじ、小六の十二歳です。よろしくお願いします!」

新米の少年は深々と頭を下げる。少なくとも、声は僕らよりレベルは高そうだ。自分たちが中学一年だから、こんなことは言えないが、まさか小学生もクリエイターとは思わなかった。

原岡はらおか かい、十三歳。よろしくお願いします」

堅物少年は、印象だけでなく、ほんとに堅物だった。その口調にはどこか重みがあった。

「では、今から一週間以内に、チーム名を考え、チーム管理部の職員に提出してください。それでは、チームルームへどうぞ」

一枚の紙が渡される。そこには、チーム名を書く欄以外にも、メンバーなどを書く欄もあった。僕らは、職員に指差される部屋へと赴いた。

 部屋には、ソファやテーブルといった、ミーティングに使いそうな家具に加え、娯楽用に、テレビやゲーム、DVDなどがあった。僕と奈々は隣同士に座り、向かいに新人二人を座らせた。

「じゃあ、とりあえず、私たちの自己紹介をするね」

そういって奈々は立ち上がった。奈々が、自分の名前、年齢、趣味や特技、普段使う武器を話した。奈々が座ると、僕は慌てて立ち上がる。僕は、特に趣味や特技はなかったため、言わなかった。使う武器を話した後、僕は立ち上がったときと同じように、慌てて座った。

「じゃあ、二人も、こんな風にして、話して」

奈々は、改めて二人に自己紹介をさせるらしい。新米少年の修二は、先ほどの紹介に加え、趣味、そして、使う武器を銃だと答えた。

 一方の堅物少年、海は、趣味も特技も特にないらしい。そして、武器は鞭を主体としているらしい。二人の紹介が終わり、それぞれの部屋の番号を確認した後に、奈々が思い出すように言った。

「あ、言い忘れていたけど、私の階級はM。潤がOよ」

「俺はPランクです」

海は言い捨てるように自分の階級を口にする。

「僕はQランクです」

修二は確認でもするように話した。それが済んだ後、全員がそれぞれの部屋に帰っていった。


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