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終章 2人(2021年7月)

晒され炎上するなつきにとって、最初から優しかったというMM。

その事実を知った男達、それぞれの思いは?

〈レジ袋〉

 レジ袋は朝のコンビニのバイトに向かう。

 昨夜は「なつきの部屋」でのやり取りを最後まで見ており、その後も何度も読み返し、寝付けなかったため、少し寝不足である。

 彼ももちろん、なつきの味方を自負している。しかし当時のDMでのなつきの言葉から、常に彼女がMMを大事にしている事は伝わり、彼は何度も嫉妬した。

 それでも部屋での一方的なMM叩きを見る度に、怒りを感じ何度となく書き込みもした。

 レジ袋は最後までなつきを守る者であり続けたのだ。

 書き込みが1,000件となり、書き込むことが出来なくなった部屋を確認し、思う。

(もう大丈夫だよな?ホントに良かったな、なつき。)


〈玉三郎〉

 玉三郎は朝の通勤電車で吊り革を掴みながら、スマホの画面を見ている。もちろん見ているのは「なつきの部屋」。

(なんだこれ?昨夜こんな事があったんか?)

 セブンの訣別の挨拶を読み、MMとセブンのやり取りに心躍った彼は、収束を感じつつ、結末を楽しみに待っていた。

 しかし昨夜は酒に酔った勢いで眠ってしまったのだ。

(なつき、俺がワンチャン狙ってたの。気づいてたんか!)

 そしてMMの「大丈夫?」と一言あるスクショ。

 日付を見れば、昨年8月。なつきのTwitterが荒れに荒れていた時のものだと玉三郎には分かる。

 おそらくなつきには大量のDMが届いていた。

 その中にこのMMのDMを見つけた時のなつきの気持ちを想像する。

(最初にこれ??なんで??俺は画像クレクレしたんだぞ?カッコ良すぎるだろ、M君。なつきが抱かれるのも無理ないわ。)


〈夢〉

 「なつきの部屋」の書き込みが1,000となった事を見届けた夢は珍しく笑顔だ。

 特に「☺︎☺︎☺︎」という絵文字が並ぶシュールな様子を思い出すと、笑いが止まらない。暁にはこれ以上書き込みが出来ない事から、部屋の削除は行わない事を告げた。

 彼の返事は一言、「好きにしろ」だった。


 部屋を立てた当人である夢は、管理人の権限を使い、1つ目の書き込みを編集。

 なつきのフルネームも含めた個人情報と画像を削除。その上で「この部屋のヒロインはなつき」という記載に変更した。

 2レス目のMMに対する恨みつらみの修正も考えたが、そこはそのままにする。

(この部屋を読んだ新参者が3レス目以降の意味を理解するにはMMの悪行の解説は必要。それに俺は彼が大嫌いだw)


 そしてTwitterでTLのおすすめを眺めていた彼は、見慣れたCrystal JJの垢を見かける。味噌と親しくしていたアバズレだ。彼女のフォロワーやリプを眺めた夢は気になる垢を見つける。

「醤油」

(山佐こうじ味噌の次は醤油?匂うねw)

 夢はAzusaという女性の垢を使い醤油にリプといいねを付ける。Azusaのアイコンは色白な女性の口元から胸元。背景は太ももにしている。

(バカな男は女にはペラペラ喋るからねw)


 数日後、醤油の個人情報、山佐こうじと味噌との繋がり(同一人物)、彼のなつきに対する行為が、懐かしき「元裏垢Manの部屋」に晒される。


〈セブン〉

 セブンは「なつきの部屋」を眺めながら、昨夜のレスバに思いを馳せる。

(姫があそこまで強気に出られるとはね。)

 昨年5月から続いた男達の攻撃に晒された彼女は、本当に弱り切っていた。好奇心からアダルトサイトで遊んでいたものの、彼女は晒される事を望んではいなかった。その事はセブン自身が最も分かっている。

 守護者となってからの彼は、守る事だけを考え、なつきの危うい行動や晒されたメール、DMの内容を見ては、たしなめてきた。彼のその振る舞い自体は間違っていない。

(それにしても笑)

 セブンはなつきの書き込みを見ると笑うしかない。

 自身の言いたい事を一方的に告げる長文。噛み合わない暁とのやり取り。

 しかし最後の一文とMMからのファーストコンタクトとなるDMのスクショ。

 当初、MMについて何を聞いても「味方の人」としか聞かされていなかったセブン。

(まさかこんなアプローチだったとはね。そりゃあ、味方の人、だね。)

 MMのなつきに対する「大丈夫?」の一言。この一言に最も衝撃を受けたのは、むしろ界隈に慣れすぎている古参のセブンだったのかもしれない。あの状況でこんな男がいるのか。

 そして部屋を埋めた絵文字の連投。根拠のない推論だ。

(M氏。君が表で名乗ったのを見たのは一度だけだね。それ以外、君はいつでも「匿名」だ。)

「今回も100点以上だよ。美しい幕引きだ。」


 そんなセブンにDMが届く。

 暁だ。


〈暁〉

暁:

なんか久しぶりよね?w元気かい?

セブン:

何か連絡もらうようなことは、あったかね?

まぁ、昨夜はお疲れさん。

暁:

なつきって女、すごいなw

まさか本人が出て来るとは思わなかったwww

しかも人の話を聞かないしな。

M君のこと聞いたのに聞き流された挙句に玉さんのワンチャン狙いとマッシーの同棲暴露だぞ?www

セブン:

あれはあんたの聞き方も悪いね。だらだら長文ぶつけても姫はちゃんと読まないよ笑

でも、納得したのかい?

最後に短文をぶつけたのはわざとだろう?

暁:

流石に先輩はお見通しかw

納得も何も、するしかないだろ?最初どころか、始まる前から負けていたw

まぁその点はアンタもだぞ?www

セブン:

まあね。あのスクショには私も驚いたってことは認めるよ。

あの時の姫にあんな DMを送る男がいるとはね笑

暁:

普通じゃないね、M君はw

しかしあんな、さ。制御不能な女をよく送り出したよなw

あれ、何言うか分からねぇぞw実際マッシーは被弾したしなwww

セブン:

M氏の良いところよ?

私なら出させない。私は姫を守る際、基本的に言う事を聞かせたからね。M氏は逆に姫の好きなようにやらせてたんだね。

その結果、姫も強くなったのさ。

暁:

しかしこれで、沈静化するのかね?

セブン:

言えた義理じゃないけど、いきなり風化はしないだろうねぇ。

ただ新たな材料がなければ、あえて姫を検索しない限りは出てこないからね?私はもちろんだけどM氏も索敵をやめるわけじゃないと考えるよ?

1年前のような事はもう起こらないだろうね。

暁:

それもそうかね。

次から次へと別の女も出て来るしw

あと1つだけ良いかい?

あの部屋埋めはアンタじゃないよな?誰だと思う?なつき本人か?

セブン:

私は訣別したからね。見守っただけさ。

けど、あんたなら分かるんじゃないか?

私が訣別を宣言した後、あの茄子だね。彼が来た事を怒っていたね?あれは本気の怒りだろう?

あの時、自身が何故怒ったのか?考えれば分かるはずだね?

彼は姫の言葉で、綺麗に幕を引きたかったんだと思うがね?

暁:

www

最初も負けたが最後も負けだったかw

お互いこの界隈にいたら、アンタとはまたどこかで会うだろうなwそん時までしばしの「あばよ」だw


 暁が茄子に怒りをぶつけた理由。

 セブンの挨拶、そして彼なりのケジメを汚された。

 そう感じたからだ。

「やるね、M君。だがやっぱり俺は、これまでもこれからも、君が嫌いだwww」


 この直後、暁はよせば良いのに彗星にちょっかいを出し、ギャンブルアプリのお誘いを無視した結果、紹介特典の1,000ポイントを得られない事を理由に、彼からブロックされる事となる・・・。


〈マシリト〉

マシリト:

じゃあ俺は抜けるよ。

2人ともサンキュ。この数ヶ月、ホントに楽しかったよ。

俺はなつきのフォローを外すから。なつきもそうしてくれ。

Natsuki:

うん。

セブンさんや玉三郎さん。レジ袋さんにもそうしてもらった。ブロックするわけにはいかないから笑

マシリト:

またな?ってのも変か笑

けどTwitterやってたらまたどこかで会うかもな?

その時は裏垢はやめてくれよ?なつき。

Natsuki:

今のも別に裏垢じゃないから!!笑

マシリト:

笑笑

じゃあ、2人とも元気で!

もし何かあれば俺も動くから。その時はDMくれ。


 マシリトはなつきのフォローを外す。

 同じくなつきが、彼をフォローから外したのを確認した。

(あっという間だったな。)

 彼はなつきと出会ってからの約1年を振り返る。

 奇妙なリプからのなつきとの遭遇や、暁との出会い。暁や夢と暴れた事も、今思えばやはり楽しかった。

 そしてMMへの嫉妬のような感情と、グルチャでのやり取り。

(Mさんて結局、なつきに対しては、普通の優しい男だったな。)

 リアルな生活の中では出会う事のない人々。

 界隈に足を踏み入れた事で様々な人の欲望や裏の顔を見てきた。姫を守るヒーロー気分も味わえた。

(でも。流石にもう、いいかな笑)

 マシリトは日常に戻る。

 彼女を今まで以上に大切にしていく事を決める。

「俺、彼女がいてホントに良かったよ笑」


〈2人〉

MM:

これからどうする?那月。

何かしたいこと、ある?

Natsuki:

どうするって?今まで通りで良いよ。

その日あったことや、感じたこと。

嬉しかったことも、辛かったことも、全部、話して欲しい。

初めて来てくれたあの日から、お互いにそうやっていっぱい話してきた。

これからもずっと変わらないよね?

起きたらおはよう、って挨拶して。

たくさんお話して。

おやすみ、って一緒に寝る。

いやじゃないよね?笑

MM:

いやじゃない笑

僕もそれで良いし、それが良い。

これからも、ずっとね。

Natsuki:

うん。

だからこれからも。今まで通りで。

今まで通りがいい。

明日からは私もまた、ツイートしようかな笑

でも、今日はもう寝る。

おやすみ、Mさん。

また明日☺︎

MM:

うん。

おやすみ、那月。

また明日☺︎




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 セブンはTwitterを見ている。

 2つの鍵垢。

 どちらもアイコンと背景は真っ白だ。

 一方はM。フォロー・フォロワー共に1人。

 一方はN。フォロー・フォロワー共に1人。


 セブンは満足そうに画面を閉じる。

「仲良くやりなさいね。お元気で。」

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