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其の十一 暁(2021年2月)

裏垢Man討伐を段取りよく進めようとする暁達。

暁は有休まで取得する。

作戦実行の15時を待つ彼らだが、世間はバレンタインデー。

なつきとMMが・・・行動を起こす?

〈事前〉

 朝5時。暁は目覚める。

(早起きし過ぎだw)

 今日は有休を取得している。日頃から勤務態度には問題なく淡々と仕事をこなしていることから、有休取得自体には何の問題もない。

 問題があるとすればその理由だ。

(晒し掲示板をぶっ潰すので休みます。そんなコトは言えねぇwww)

 昨年9月のセブンとの邂逅以降、明らかに彼はこの狭い世界。画面の中だけで繋がる人間関係を楽しんでいる。この界隈に足を踏み入れて以降、彼は基本的に【晒す側】の人間である。誰彼問わず攻撃してきた訳ではない。しかし彼の行為が、攻撃される側の生活に何らかの影響(悪い影響)を与えて来たことは自覚している。

 殺伐としたやり取りを繰り返し、特に得るものはない。そんなゲームを楽しんでいるつもりになっていた。

 しかしこの約半年のなつき界隈での人間関係は、明らかにこれまで経験した数年間と異なるものだ。

 顔も知らない。本当の性別や年齢すら分からない者たち。セブンやマシリト。なんだかんだで夢。そしてなつき。彼らとの関係はある意味リアルの彼の生活における人間関係よりも濃厚なものになっている。

(いずれ終わる関係だ。それならせめて、楽しくやんないとなw)

 そんな事を思いながら、彼は時間が過ぎるのを待つ。

 9時過ぎに巨乳姫からグルチャに一報が入る。


巨乳姫:

裏垢君、普通に出社(^-^)

午後は会議もあるんだって!!

もう一つは暁ちゃんに個別で〜♡


(順調だw)

 直後、個別にDMが届く。巨乳姫だ。

 暁はその内容に驚く。

 氏名(フルネーム)、市区町村、生年月日、職場の名称に役職(そこそこ知れた企業の管理職)、趣味に家族構成。

「おいおいwマジかコイツwww」

 言葉と笑いが思わず漏れてしまう。

(またまた既婚、子有りかよw人妻の姫ちゃんとの不倫でも期待してんのか?w)

 再び巨乳姫からのDM。それを見て、暁は驚く。

 顔写真に全身の写真。スーツ姿だ。流石に暁も返信する。


暁:

サンキュー!姫ちゃん。写真までマジ??

巨乳姫:

会いたいってしつこいの〜笑

私の手ブラ写真見たら興奮しちゃったみたい。

しつこいから「顔見たーい」とか「スーツ好き♡」って言ったら送ってくれた笑笑

暁:

姫ちゃんを抱きたいんじゃないの?w

巨乳姫:

も~~笑

私の手ブラなしを見たいって言ってたよ?見せてないけど笑

「夜ね?♡」って言ったけど・・夜は無視で良いのよね?笑

暁:

夜には彼はTwitterなんて出来なくなるwww

だから安心して?姫ちゃん。

午後もヨロシク!困ったらすぐにDMね?

巨乳姫:

はーーーーい!


(これは・・・四葉どころじゃねぇぞwww)

 時計を見ると10時過ぎ。まだまだ時間はある。

 することもない暁はなつきのTLを眺めるのだが・・・・・・

「はぁ!!!!?」

 投稿されたばかりのなつきのリプ。相変わらずツイートは見えない。MMの垢宛のリプだ。


 ハッピーバレンタイン♡♡♡美味しいかな?食べるの?食べられちゃう?笑笑♡♡♡


(バレンタインがハッピー???何してんだ?コイツら・・・・)

 呆気に取られた暁はしばらく動けなかった。


 更に。

 MMのプロフィールの記載。アイコンは白一色ではなく、薄いピンク一色に変わっている。

 プロフィールのコメントは次の通り。


 ハッピーバレンタイン♡♡♡美味しいかな?食べるの?食べられちゃう?笑笑♡♡♡こっそり食べちゃうよ(^^)


 暁はセブンにDMを送る。

(こんな時にはヤツにしか言えねぇ。)

暁:

あのさぁ?お2人、緊張感足りないんじゃないの?仮にも晒されてる女とその守護者なんだろ?

守護者のパイセンとして、ちゃんと指導してくれよ!


事変

 12時30分。

 昼休みの時間帯。守護者達はなつきのTLを確認する。最近静かになったとはいえ、最早習慣となっている。

 半休で15時に備え、ネットカフェにいるマシリト・・・。

「おいおいおいおいおいおいおー」

 思わず叫ぶ。


 バイト休憩中のレジ袋・・・。

「・・・はぁ。」


 営業先で昼食を取る玉三郎。

「とうとう抱かれたんか?なつき・・・」


 冷静沈着なセブン。

「はいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃ?」

(やるな・・・M氏。)

 そして暁のDMに気づき、返信する。


セブン:

若いって素晴らしいのよ。


 本来なつきに近しいはずの守護者達。彼らですら、誰1人としてなつきにDMを送ることが出来ない。

 攻撃者なら尚更である。圧倒的お花畑。絶対不可侵の領域。なつきと日常会話をしたことのない者ほど、彼女が何を考え、何を思うのかの想像が出来ず、言葉を発せない。

 さらに無粋なことをすればMM、更にはイライラを募らせた全守護者から通報されるリスクがあるのだ。


 そして運命の15時。3人のグルチャ。

暁:

なんか今日はすごく寒くね?冬だけどな。

マシリト:

ああ。2月だぞ?寒いのは当たり前だろ。

夢:

オイ!マシリト。オマエDT撃退の俺の活躍、なつきに報告したよナ?

マシリト:

おぉ!感謝してたぞ!

暁:

気を取り直して、行くぜ?

夢のスクショハリハリは少し待ってくれ。

今回は裏垢Manが気づくのは遅ければ遅いほど良いんだ。マッシーは俺の書き込み後、少しだけ1人でレスバを頑張ってくれ。

マシリト:

なぁ?俺最初は今回躊躇してたんだよ。

裏垢Manは掲示板の管理人じゃないかも?ってな?違ったらどうしよう,ってな。

でももうそんな事はどうでも良い!とことん暴れてやろうぜ!


 そして、掲示板に突入。

 暁が書き込む。

 裏垢Manの本名(フルネーム)、住所や生年月日。勤務先(バレバレな伏せ字)、課長。妻と息子の年齢。Twitterの垢。そして2枚の画像。

 裏垢Manの人生で、おそらくは歴代No.1の笑顔とスーツ姿。40代と思われる男の爽やかな笑顔だ。


暁:

じゃあ、マッシー。少しだけ耐えてくれ!


(よし!)

 マシリトは暁の書き込みに返信を付ける。やはり最初はこれだ。


HN:マシリト

晒していいのは晒される覚悟のあるヤツだけだ。


(決めてやった笑 まだまだ行くぜ?)

 やはりこの感覚はたまらない。大事な姫を悪者から守るヒーロー達。その1人に自分はなっている。

(こんな掲示板作るようなヤツは極刑だ極刑。)

 日中だがスレが伸び始めたことで、野次馬が集まる。多くはなつきを攻撃する者達だろう。


匿名「また男晒しwwww」

匿名「おいこれ、大丈夫なん?ホンモノ?」

匿名「イイエガオダナーーーーwww」

匿名「誰だよ?お前ら!いい加減にしとけよ?」

匿名「こんなジジイのキモい笑顔じゃなくなつき画像クレクレ」


(反抗的なヤツいるな)

HN:マシリト

お前ら昼間からこんなとこで何してんの?外晴れてんぞ?こんなジメジメした薄暗いとこが楽しいのか?それに今日はバレンタインデーだぞ?彼女いないのか?ん?

俺?俺は今夜彼女手作りのチョコケーキ食うぞ?で?何?


 そして暁。

 掲示板の管理画面を開いている。特殊なことではなく、開くだけなら誰でも開けるものだ。

 設定を変えるにはパスワードが必要だ。

巨乳姫:

裏垢君はまだ会議中〜


(姫ちゃん、感謝する)

 確信はない。しかし生年月日を入手出来た以上は試す価値はある。

 まずは、西暦も含めた8桁の数字。

(ダメか)

 次に和暦にした6桁の数字。

(ダメか。まさか4桁?)

 誕生日の月日4桁を入力するも、やはりエラーとなる。

(うーん。やっぱ無理かな。わからん。次で最後にするか。)

 掲示板を乗っ取る事を画策していたものの、流石に簡単にはいかないようだ。暁は最後と決めた4桁の数字を入力する。

 0000

 画面が遷移する。

(ウソだろwwwwww)

 管理画面ではメアドを登録可能なのだが、裏垢Manはそれすらしていない。

 暁は自分の捨てアドを入力し、パスワードを変更する。

(裏垢Manの誕生日を逆からにしてやろうw)

 メアドを登録してしまえば、何かあれば暁にメールが届くため、勝手なパスワード変更は難しくなる。


 最後に。

(スレ名も変えるかw)

 数秒考え、新しいスレ名を入力する。

 【裏垢Man】山崎◯樹晒しスレ【アラフォー笑顔】

(よし!確定だw)

 暁は掲示板を掌握する。なつきに関する書き込みを次々に削除し、攻撃者たる男達の書き込みと、自身が晒した裏垢Manの情報。


暁:

マッシー、もう撤退でいいぜ?この掲示板は俺がもらったw夢も爆撃開始して良いw

姫ちゃんはソイツをブロックしちゃえwww

マシリト:

マジ!?すげぇな笑

夢:

御意!

巨乳姫:

暁ちゃん、仕事早ーい♡

マッシーと夢ちゃんもお疲れ様♡♡


 会議で定時を迎えた裏垢Man。

 彼は送りつけられたDM(自身の顔も含む掲示板のスクショ)や、大量のリプに怯え震えることになる。更に自身の名に変えられた掲示板の中で、自身と向き合うことになる。爽やかな笑顔は、戻るのか?


事後

 暁は巨乳姫とDMをしている。あの裏垢Man討伐以降、やり取りが増えている。

 そもそも彼女は暁と知り合った当初、フォロワーと不倫関係にあった。しかし、その相手がストーカー化していると、相談を受けたのだ。

 さすがの暁も、リアルストーカーの討伐など出来るはずがない。断ろうとしたところ、「とにかく1日100通以上のDMが届くのが怖い」という。

 よくよく聞けば、ストーカー行為はリアルではなくDM連弾のみ。自宅や本名も全く知られていない。

 暁は一言で済ませた。

「ブロックで。」


 そんな彼女は先日の討伐戦で、晒し界隈に興味を持ってしまっている。助っ人は一度限りという約束としたので、これ以上攻撃者との会話をさせる気はない。

 そんな巨乳姫が、目下、興味津々なのはなつきとMMの組合せだ。【なつM】などとよく分からない略語を使う。

(やはりあのバレンタイン事件は、誰が見ても強烈なインパクトあるんだなぁ。)

 不思議と男達はあの件には触れない。

(セブンの言う【不可侵領域】ってヤツよな。確かにアレに対して何を言えば良いのか全く分からねぇ)

 巨乳姫には、セブンからの受け売りだが2人の関係を教えている。若干の脚色も加え。


巨乳姫:

MM君は寡黙な執事って感じよね?なつきちゃん以外に興味ないのかなぁ?イケメンかな?


 最近はそんな事ばかり言っており、暁は間違ってもちょっかいを出さぬよう、釘を刺す。

しかし、数日後。


巨乳姫:

見て(T . T)


 4枚の画像が届く。すべてスクショだ。

 1枚目はなつき宛のDMだ。

なつきちゃん!MM君を私にちょーだい?♡彼はイケメン?くれなくても良いからお話させて?

(・・・)


 2枚目はMM宛だ。

DMきて!♡♡♡

なんと、丸出しバストと顔出し画像付き。

(俺も初めて見た。姫ちゃん美人だ・・・・)


 3枚目、4枚目はなつきとMM双方にブロックされたスクショ。

(・・・・・)


巨乳姫:

2人ともね?返事すらくれなかった。

気になって、様子を見たらブロック(T . T)(T . T)

巨乳姫:

ごめんね?暁ちゃん。

私、普通の裏垢女子に戻ります・・・・。


 暁は何も言えないまま。

 巨乳姫の丸出しバスト&顔出し画像(MM宛てに送られたDMのスクショ)を見つめていた。

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