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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

白い墓守

作者: 黒大福
掲載日:2026/06/12

最近、自分の中の鬼威惨が目覚めたので書いてみました。


ゆ虐、グロ描写、二次創作、自己解釈、独自設定を含みますのでご注意ください。


拙い文章ではありますが、ご興味ある方は是非。


昼下がり、人気のない山の中腹あたりに存在する木々に囲まれた小さな草原に十数匹程のゆっくりが集まっていた。


このゆっくりたちは群れであり、その中心には野良とは思えないほどの豪勢な食事が並べられていた。

未開封の菓子パンやお菓子、リンゴやミカンといった果物類、紙パックのジュースなど、一般ゆっくりが行う、狩りという名のゴミあさりでは到底手に入らないものばかりだ。


「こんっかいの狩りはだいっせいこうなんだぜ!」


「ゆう~どれもおいしそうだよ!」


「れいみゅ、あのあまあまさんをたべりゅよ!」


「あのりんごさんっはまりちゃさまがいただくのじぇ!」


中心に集まる食材を眺めながら群れのゆっくり達は、今回の狩りがどれ程素晴らしい物だったか、自ゆんがどの食べ物を食べるか、などと楽しそうに語り合っている。


そんなお祭り騒ぎの最中、一匹のゆっくりが群れの中心、つまりは食べ物の山の頂上に颯爽と現れた。

成体のゆっくり魔理沙である。その両脇には、プラスチック製のフォークを構えた霊夢種のゆっくりとアルミの安っぽいテーブルナイフを構えたチェン種のゆっくりが鎮座している。


しかしこの魔理沙種のゆっくり、デカい。一般的なゆっくり魔理沙の身長はせいぜいバスケットボール程だが、この魔理沙はバランスボール程の体格を誇っていた。


「ゆゆ!‘‘おさ‘‘だー!」


「ゆー!‘‘おさ‘‘なのぜ!とってもゆっくりしてるんだぜ!」


「かっこいいよ!さっすがれいむたちの‘‘おさ‘‘だよ!」


先ほどまで狩りの成果と食事の事ばかりだったゆっくり達が、目の前に登場した群れの長一色に染まり、歓声を上げる。そう、この魔理沙はこの群れの長であり、ドス魔理沙なのである。


ドス魔理沙。言ってしまえば群れのボス個体のようなものである。

魔理沙種の中に、時折体が一般個体よりも大きく成長する個体がいる。この異常成長は‘‘ドス化‘‘と呼ばれ、生まれながらにして長、つまりは群れのリーダーになる素質を持つ個体に現れるとされている。

ドス化した魔理沙には高いリーダーシップとカリスマ性があるようで、自然にドス魔理沙を中心とした群れができることも珍しくはない。

また、ドス魔理沙には他のゆっくりに対して行動に影響を及ぼす音波を発生させることができるらしく、ドス魔理沙を中心とした群れは非常に統率力が高いことが知られている。


「ぜんゆん!!ちゅうもくっするんだよ!!わかってね!!」


テーブルナイフを持つチェンが声を張り上げる。


「こんっかいはこのてんっさいなまりささまのさくせんがだいっせいこうをおさめたのぜ!!」


おー!!っと喜びの歓声が上がる。


「でもっこのさくせんがだいっせいこうしたのはじっこうにうつしたみんなのおかげでもあるんだぜ!!だからこんっかいのほうっしゅうはみんなでわけっあうんだぜ!!」


再び群れから大歓声が巻き起こる。

感極まって目から砂糖水を溢すゆっくりもちらほら見えた。


「じゃあ!!みんっなでうたげをはじめるんだぜ!!スーパーむーしゃむーしゃたいむ!!はっじまるのぜー!!」


「「「スーパーむーしゃむーしゃたいむ!はっじまるよー!!」」」


ドス魔理沙が音頭をとり、まるで砂糖の山に群がる蟻のように一斉にゆっくりが食べ物の山に突っ込んでいった。

先ほどの宣言通り希望していた菓子パンに齧り付くもの、姉妹同士で一つの果実を食べあうもの、二匹でスナックの菓子袋を引っ張り破いて、散らばった中身を我先にと奪い合うもの。一口一口頬張っては、各々が‘‘しあわせえええ!‘‘と絶叫する。宴会や宴、と呼ぶにはあまりにも品はないが、当の本ゆん達にとってはまさに天国のような時間だった。

ドス魔理沙も、あらかじめ取っておいたシュークリームという極上のあまあまを貪りながら、群れのゆっくり達の狂宴を見守っていた。


ドス魔理沙がいうように、今回の作戦は想像以上の成果を叩きだすことができた。

それだけではない、今回の成功から次回にもこの成果を出し続ける事ができる確証を得たのだ。

そう、つまり今回の成果はドス魔理沙にとって序章に過ぎなかったのだ。

近いうちにもう一度、今度はより多く仲間を使って狩りを行う。

いずれはこの成果を出し続け、群れを大きくし、より手を増やしてこの計画を行えば…。

将来の明るい未来設計図を描きながら、ドス魔理沙のニヤニヤは止まらなかった。


夕刻、空が赤みを帯びてきた頃、永遠に続くように思われた宴は終わりを迎えようとしていた。

食い散らかされた残飯や破り棄てられたビニール袋が草原に無残に散乱している。

解散を察したドス魔理沙が側近の霊夢に指示を出す。


「ぜんゆん!ちゅうもくっだよ!!」


今度はフォークを従えた霊夢が声を張り上げた。


「みんな!こんっかいのさくっせいはだいっせいこうだったんだぜ!!でも…」


これから長が何を発表するのか見当もつかない群れのゆっくり達が固唾を飲む。


「つぎはもっともっとだいっせいこうさせられるんだぜ!!つぎはもっともっとたっくさんのあまあまがてにはいるんだぜ!!」


一瞬の沈黙。そして、爆発したような歓声が巻き起こった。


「きょうだけじゃないってことだね!おさ!」


「きょうっよりもたくっさんのあまあまがたべられるってことなんだぜ!?」


「ゆうう!!れいむ、おさのむれでほんとうによかったんだよー!!」


狂喜乱舞する群れのゆっくり達、多少落ち着くのを待ってから、ドス魔理沙は今度は子ゆっくり達のほうに向き直った。


「おチビちゃんたち!こんっかいはみはりだけだったけど、つぎはおとーさんたちっみたいにじっさいに‘‘かり‘‘をするんだぜ!!だいっじょうぶなんだぜ!!ドスがついてるんだぜ!!」


「ゆぴ!?まいちゃたち、かりをしてもいいの!?」


「れいみゅ、どすっみたいにわるいやちゅをせいっさいしたいよ!」


「まいちゃ、ちゅよくなってどすのしょっきんになるんだじぇ!」


子ゆっくり達にとって、ドス魔理沙は群れの英雄であり、ヒーローであった。そんな、ドス魔理沙からの激励に子ゆっくりたちは体を震わせ、飛び跳ね、全身で喜びを表現した。


次回からは子ゆっくりたちも作戦に参加させる。そうすれば、必然的に運び出せるあまあまの量は増え、しかも将来成ゆになってからも作戦は引き継がれるだろう。


ドス魔理沙の計画に抜かりはなかった。


「みんな!よっくきくのぜ!これっからはずっとずっとあまあまがてにはいるんだぜ!このむれはさいっきょうになるのぜ!だからみんなはっこれからずっとずっとゆっくりして…ゆ?」


群れを見渡しながら声高々に宣言していたドス魔理沙だったが、ふいに見慣れないものが視界に入り発言を中止した。突然押黙ったドス魔理沙に、群れは首をかしげるように沈黙する。


ドス魔理沙の視界に入ったのは一匹の白いゆっくりだった。


それは集まった群れの奥、草原の境目の木の陰に音も無く現れたのだ。日が落ち始め、森の中は薄暗くなっていたが、そのゆっくりは全身が発光しているかのように青白く、かなり目立っていた。


ドス魔理沙の視線で、群れのゆっくりもそのゆっくりに気がついて体を向ける。


視線が集中しても、白いゆっくりは何事もないかのようにあんよを進めてくる。


「そこをうごかないでね!わかってねー!」


静寂を破ったのはドス魔理沙の側近で群れ一番の俊足のゆっくりチェンだった。持ち前のあんよで素早く群れの中を突っ切ると白いゆっくりにむけてテーブルナイフを向け、停止を要求する。


白いゆっくりはあんよを止め、ゆっくりと顔を上げた。


それは、妖夢種のゆっくりであった。




ゆっくり妖夢。ゆっくりの中では霊夢種、魔理沙種に続いてメジャーなゆっくりである。切り揃えられた白い前髪と、黒いリボンの付いたカチューシャのお飾りが特徴的で、性格は明るて活発、しかしながらどこか抜けているポンコツな一面を持っている。少し頭は弱い分、運動神経は高く、群れの役割としては狩りを任せられることが多い、そんなゆっくりである。


しかし、今群れの目の前に佇む妖夢は一般的な妖夢種とはどこか違う雰囲気を纏っていた。

特有の明るさも、どこからともなくにじみ出るポンコツ感もない。ただただ、冷たい。

また、目の下にはクマのような模様が浮き出ており、真っ白な肌も相まって非常に根暗な印象を受ける。最も目を引くのは、背に大きな刀のようなお飾りを身に着けている事だ。妖夢の体よりも一回り程も大きい得物は、明らかにこの妖夢の体には不釣り合いに見える。


「ここはドスのひきいるむれっなんだよ!わかったらとっととでていってね!すぐでいいよ!」


チェンに少し遅れてフォークを構えた力自慢の霊夢も妖夢の前に仁王立ちし、警告した。

二ゆに道を阻まれた妖夢はそれらを無視するようにゆっくりと周囲を見渡した。

そして、状況を理解したかのように口を開いた。


「このたべものは、どうしたのですか?」


まるで教師が自らの生徒達に質問をするかのように、妖夢はドス魔理沙に向かって問いかけた。

通常、妖夢種は語尾に‘‘みょん‘‘と特徴的な鳴き声を付けるが、この妖夢は丁寧な敬語で話している。


「ゆゆ!これはまりさたちがかりでてにいれたものっなんだぜ!まぬけなようむのぶんはないんだぜ!」


「…しつもんをかえます。どこで、かりをしたのですか?」


「おはかさんにきまってるんだぜ!ようむはそんっなこともわからないんだぜ?やっぱりようむばかなんだぜ!ゆぷぷぷ!」


ドス魔理沙が妖夢を馬鹿にして笑う。それに釣られるように、側近も群れも笑う。

妖夢種はゆっくりの中でも頭が悪いことは周知されており、そのことでゆっくり同士でも小馬鹿にされることは珍しくはないのだ。


群れの嘲笑を受けても、妖夢は表情を崩さなかった。


「おはかでのかりはきんしされているはずです。さいさん、おねがいしにまいったはずですが。」


そう、この山の麓には人間の墓地がある。そして、その墓地はゆっくりの立ち入りを禁止しているのである。ただ、妖夢種のゆっくりだけは墓地の侵入を許されており、妖夢種は墓地の掃除や侵入してきた他のゆっくりを追い返したりと、墓地の墓守として扱われていた。


「ゆっぷっぷ!やっぱりようむはばかなのぜ!どうっしてドスで、むれのおさで、さいっきょうまりささまがドジでマヌケなようむたちのめいっれいをきかないといけないんだぜ?」


ドス魔理沙はニヤニヤと、悪びれもなく妖夢に言う。


「めいれいではなく、おねがい、ともうしあげています。おはかでかりをしないかわりに、われわれはていきてきにあまあまをおわたししておりました。それに、あなたがたはなっとくされてあまあまをうけとっていたはずです。」


妖夢の言う通り、この群れは墓地で狩りを行わない代わりに、墓地から使わされる妖夢達から食べ物を分けて貰っていたのだ。

野生のゆっくり達にとって、人間の墓地はあまあまの宝庫であった。お供え物として生前の人間が好きだったお菓子や食べ物が供えられるからである。


墓守を務める妖夢達が、頭ごなしにゆっくりの立ち入りを禁止したところで、自分勝手でわがままで独占欲の塊のような野良ゆっくり達がルールを守るはずがない。そこで、妖夢達は山に住んでいる各群れに対して上記のような契約を取り付けて墓地を守っていたのだ。


しかし今回、このドスの率いる群れが契約を破り墓地のお供え物に手を付けた。しかも、普段から契約内容に納得し、妖夢達から食料を貰っているのにも関わらずだ。


「もらえるものはもらうんだぜ!でも、これっからはまりさたちがこのやまのちょうってんになるんだぜ!だからおはかのごはんさんもあまあまもぜんぶこのむれのものなんだぜ!」


ドスとして大成した長魔理沙は、この山全体を統率するつもりでいた。しかも、側近には力持ちの霊夢、俊足のチェンというツートップも従えている。怖いものなどなかった。

群れ全体も今回の墓地での狩りの大成功で勢いづき、この群れは誰一匹として妖夢達との契約を守るつもりは無くなっていた。

しかし、群れが妖夢達の事を見下すようになった理由はこれだけではなかった。


「そうですか…。もうひとつおききします。つかいのようむはどこですか?」


「ゆぷぷ!しりたいのぜ?」


ドス魔理沙はゲスな笑顔を浮かべた。


「ぜひ。」


「すぐにあわせてやるんだぜ!チェン!」


「わかったよー!おさ!」


長から指示を受けたチェンが素早く妖夢の視界から消え、すぐに戻ってきた。

そして口に加えてきたそれを妖夢の前に投げ捨てた。


それは、妖夢種のお飾りだった。


黒いリボンの付いたカチューシャ。紛れもない、この群れに食料を分けに派遣されていた妖夢の物だった。それを見た妖夢は初めて表情を曇らせた。


「そのマヌケのおかげでかりはだいっせいこうしたんだぜ!とおってもかんしゃしてるんだぜ!」


ドス魔理沙の作戦。それは、いつものように食べ物を持ってきてくれた妖夢を制裁し、お飾りを奪い取る。それを身に着けたチェンが墓地で妖夢種のフリをして妖夢達の警備に隙を作り、その間にお供え物を奪い取る、というものだった。子ゆっくり達には見張りをさせ、成ゆは片っ端からお供え物をかき集め、異変に気づき戻ってきた妖夢は側近の霊夢と戦えるゆっくり達でリンチして制裁する。

こうして、この群れは一丸となって墓地から食料を狩り取ったのだった。


簡単にお飾りを明け渡させたこと、お飾りを付けたチェンに騙されたこと、群れのみんなで複数の妖夢を制裁したこと、これらの経験から、群れ全体は妖夢の事を舐めきっていたのだ。


妖夢は目の前のお飾りをもみあげで撫でて、そして小さく口を動かした。


「ゆーぷっぷっぷっぷ!かなしむことないんだぜ!いまからおまえもそうなるんだぜ!」


ドス魔理沙が側近二ゆに指示を出す。


「いいぞ!やっちぇえー!」


「おはかのたべものをひとりじめするゲスはせいっさいなんだよー!」


「ばかなようむはなにもできずにころされていってねー!」


群れのヒーローこと、側近達による公開処刑に群れ全体が沸き立った。


「ゆゆー!ごめんね!でもおかざりはだいじにつかってあげるよ!あんっしんしてしんでいってね!」


「わかるよー!しにたくないよねー!でもわかってねー!」


側近二ゆがジリジリと武器を構えて妖夢に詰め寄っていく。

妖夢は動かず、俯いたままだった。


「ゆぷぷぷ!そうだぜ!ようむ!おまえのおかざりをおいてこのむれのうんうんどれいになるんだったらいのちだけはゆるしてあげるのぜ!わかったらとっとと「こうしょうけつれつ、ですね。」


妖夢が背中のお飾り、もとい刀を抜いた。鞘から引き抜かれたそれは妖しく、鋭く、光っていた。


「やるんだぜ!せいっさいなんだぜー!!」


ドス魔理沙が吠えた。それに呼応するように霊夢とチェンが妖夢に突っ込んだ。俊足のチェンが妖夢を突き殺さんとテーブルナイフを槍のようにして突進する。それを妖夢は体の半身を引いてチェンごと躱す。勢い余ったチェンは妖夢の背後に着地する。続いて霊夢が妖夢の間合いに入り、フォークを横薙ぎに振るう。妖夢は瞬時にバックステップでフォークの描いた半円から脱出する。

結果、妖夢は霊夢とチェンに挟まれるような形で対峙した。


「これでおわりだよ!ゆっくりしんでいってね!」


「わからないよー!かてるわけないのに!わからないよー!」


挟み撃ちで勝利を確信した二匹は息を合わせて妖夢に突進する。

妖夢はあんよに力を込めた。そして、向かってくるチェンにそれを上回る速度で間合いを詰めた。

群れの誰よりも俊足だったチェンはその自慢のあんよに誇りを持っていた。絶対の自信を持っていた。

故に油断もあった。慢心もあった。自ゆんよりもはやい速度で自身に向かってきた妖夢に、チェンは反応出来なかった。完全に間合いを見誤ったチェンのテーブルナイフは虚空を貫き、妖夢の刀はチェンの眉間から中枢餡を貫いた。


「」


チェンは何が起こったのか理解できないまま視界が暗転した。


「ゆおおおおおおおおおお!」


チェンがやられた事を霊夢は瞬時に理解した。しかし、同時にチャンスだとも捉えた。妖夢の刀はチェンの体の中だ。これでは自ゆんは切れない。突進の勢いを緩めることなくフォークを縦に振りかぶりながら妖夢の間合いに入る。刹那、霊夢の腹部にに鋭い痛みが走った。


チェンを貫いた直後、妖夢は刀身を寝かせるようにチェンの体の中で捻じった。そして、霊夢が間合いに入る直前に刀に力を込めチェンの体を横から掻っ捌くように刀を抜いたのだ。チェンの体から現れた刀身は弾かれたような勢いで妖夢を中心に大きく一回転する。霊夢はそれに巻き込まれて腹部に致命的な刀傷を負ったのだ。


「どぼ…じで…」


文字通り饅頭の皮一枚、となった霊夢はフォークを地面に落とし、うずくまるように倒れた。


主戦力をあっさりと失った群れは静まり返っていた。目の前で起きた事象に、あんこ脳が理解を拒んでいるのだろう。


「…っこここのお!ばかなようむはまりささまがせいっさいするんだぜええええ!」


沈黙を破ったドス魔理沙が妖夢を踏みつぶさんと前に出て飛び上がった。

まるで大きな水風船が地面に叩きつけられたような衝撃が草原に響く。


(やったのぜ…?)


そう思ったのも束の間、ドス魔理沙のおしりに鋭い痛みが刻み込まれた。飛び上がったドス魔理沙の着地点を素早く計算した妖夢は万が一にも踏みつぶされないようなルートを通り背後に回っていたのだ。隙だらけになった背中に刀を素早く動かし十文字に切り裂く。

背後から切られた事を察したドス魔理沙は振り向くが、その向きとは逆の死角に妖夢は滑り込んでいた。今度は側面から刀を目いっぱいドス魔理沙のあんよに突き立てる。


「ゆっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


その痛みに悶絶するドス魔理沙。が、それだけでは終わらない。妖夢は刀を突き立てたまま側面から正面に向かって走りながら一気に切り裂く。


「あああああああああああああ!」


あんよが切断されていく痛みに、ドス魔理沙は白目を向いて叫ぶ。ドス魔理沙のあんよの三分の二程まで切り裂いたところで、妖夢はドス魔理沙から刀を引き抜いた。


「あ…ああ…あ…」


ドス魔理沙は白目を向いたまま、口からあんこ混じりの涎を垂らしていた。

「ド、ドスが…ドスがやられたのぜえええ!!」


「れいむが、あのちからもちれいむが…。」


「しゅんっそくのチェンよりもはやいゆっくりがいたなんて…。」


長であるドス魔理沙も痛みつけられ、群れがついに事態を認識し始める。

一匹、また一匹と妖夢とドス魔理沙から距離を置くように後退りしはじめた。この妖夢には群れの誰も勝てない。群れは本能的に逃げる事を選択していた。


「なさけないですね。」


妖夢がドス魔理沙に向かって挑発する。


「こんなにゆっくりしていないゆっくりでも、おさになれるんですね。」


‘‘ゆっくりしていない‘‘。この発言はゆっくりにとって最も堪える悪口である。群れの長として、そしてドスである自ゆんに対して、大きくプライドを傷つけられたドス魔理沙は感情のままに叫んだ。


「全ゆん!よっくきくんだぜ!すぐにこのばかようむっをせいっさいするんだぜ!」


あんよを斬られたことで動けないドス魔理沙は群れに向かって命令を発した。


しかし、それは群れにとって最悪の事態を招くこととなった。


群れのゆっくりは自らの命を守るために逃げるつもりでいた。しかし、ドス魔理沙の放つ命令には本能的に逆らうことができないのだ。

結果、群れのゆっくりは‘‘逃げたい‘‘‘‘生き延びたい‘‘という意思を捻じ曲げられ、勝てるはずのない妖夢に特攻する形になってしまった。


「ゆわあああああ!しねえええええ!しにたくないいい!」


「ああああああああああ!いやだ!きらないでええええええ!」


「やめるんだぜ!やめるんだ…あああああ!」


戦う意思も作戦も何もないゆっくりが、ただただ丸腰で妖夢の間合いに入り、斬られる。

それはまるで、殺虫灯に集まる羽虫のようだった。

あるゆっくりは脳天から一太刀で切り伏せられ、あるゆっくりは正面から中枢餡を貫かれ、あるゆっくりは刀の柄で目を潰される痛みに悶えながら切り裂かれた。


そんな様を、ドス魔理沙は動けない体でただ呆然と眺めていた。


妖夢がドス魔理沙を挑発した狙いはここにあった。

墓地で狩りをする方法、そしてその報酬。それらを知ってしまった群れは一匹残らず駆逐しなければ、再び墓地は荒らされてしまうだろう。もし群れが各々に逃亡すれば、群れ全ゆんを消すのはかなり難しくなる。しかし、ドスが群れ全体で自ゆんを倒せ、と命令すればどうなるだろう。群れ全体が戦う意思とは無関係に、処理されにくる。勝手に群れは全滅するというわけだ。


その意図にドス魔理沙が気付くころには、最後の群れのゆっくりもお飾りごと両断され、あんこの飛沫が上がっていた。

ドス魔理沙は、自ゆんの一時の感情と命令で群れが壊滅した事実に心を抉られることとなった。


残ったのはドス魔理沙と、ドスの命令を影響を受けにくい子ゆっくり達だけだった。


妖夢は刀を収めることなく、目の前で両親を斬り捨てられ、しーしーを垂れ流しながら泣き崩れる子ゆっくり達に歩みを進める。

これから妖夢が何をするのか、考えなくても理解したドス魔理沙は泣きながら懇願する。


「まっで…まっでください!おちびちゃん!おちびちゃんたちにつみはないんでず!わるいのはぜんぶまりざなんでず!どうが…どうがあああああ!!」


妖夢はピタリとあんよを止め、あんこで汚れた顔をドス魔理沙に向ける。


「そうですね。おチビにつみはありません。」


半ば諦めていたドス魔理沙は妖夢の回答を聞いて若干表情を緩めた。


「ゆ!それなら」


「ですが、おチビにつみをせおわせたのはあなたです。」


そういうと、妖夢は子ゆっくりの前に立ち、刀を脳天から突き刺した。


「っぴ!?」


中枢餡を一突きされ、苦しむ暇もなく子霊夢は永遠にゆっくりした。


「ゆ!?やじゃ!やじゃ!」


「おとーしゃ!おかーしゃ!たすけて!れーみゅをたすけてええ!」


「どぼちて!どぼちてこんなことするのおおお!」


これから自ゆん達も親と同じ末路を辿る事を理解した子ゆっくり達は泣きわめくが、妖夢は躊躇なく子ゆっくり達を永遠のゆっくりにいざなっていく。

子ゆっくりが一匹、また一匹と屠られるたびにドス魔理沙は悲鳴を上げ、目を背けた。


「もっちょ…ゆっくり…しちゃ…か…た」


そして、ついに最後の子ゆっくりも刀の錆となった。


「…どぼじで…どぼじで…こんな…こんなことに…。」


ドス魔理沙はどうしてこうなったのか、何を間違えたのか、どこで道を誤ったのか、どうすればよかったのか、それをひたすらあんこ脳で考えていた。もちろん、答えはすでに分かっていたが、それを受け入れる事はできないのだ。


原因は?何が事態を引き起こした?諸悪の根源は?反省すべきは?改めるべきは?


お ま え が わ る い 


そう言われた気がした。

我に返ったドス魔理沙が視線を上げる。そこには自ゆんを指さすように刀の切っ先があった。


「あ…ああ…あ…」


現実に引き戻されたドス魔理沙はこれから自ゆんがどんな目に合うかを悟った。


空は夕焼けで赤く、赤く、染まっていた。




夜が明けた。


墓地の入り口にはその墓地を管理するお寺が建っている。

そのお寺の床下には、ゆっくり一匹には十分すぎるほど広々とした空間が広がっており、床には古いながらもよく磨かれた滑らかな木材が敷かれていた。壁や天井も強固な木材で囲まれているが、所々に適度な隙間が空いており湿気が籠らない構造になっていた。

不思議なことに、その空間には光源になりそうなものは一つもないにも関わらず、部屋全体が薄っすらと見渡せるほど明るかった。


そんな異空間に、一匹のゆっくりが鎮座していた。

桃色の髪の毛の上に薄い青の額烏帽子を被り、もみあげで扇子を持っている。

それは、ゆっくりの希少種の中でも珍しいゆっくり幽々子であった。


マニアの間では幻のゆっくりとも言われており、その存在が確認されたのもここ最近である。

それまでは色身の似たゆっくりパチュリーやレミリャなどの見間違いだと言われていたが、目撃例や一部の村の古い記録からその存在が認められるようになった。

目撃情報から、妖夢種と共生関係にある、との説や、突如現れたり消えたりすることから何らかの特殊能力を持っている、との噂など、謎多きゆっくりである。


幽々子の目の前には何処から手に入れたのか、和菓子が置かれており、幽々子はそれを上品に一口ずつ口に運んでいた。


「あら?おかえりなさい、ようむ。」


ふと、和菓子を食べる手を止めた妖夢は部屋の入り口に向かって声を掛ける。

そこには、群れを一つ制裁したあの刀の妖夢の姿があった。


「ただいまもどりました、ゆゆこさま。」


妖夢は跪くように幽々子の前で首を垂れた。

幽々子はそんな妖夢に向き直る。まだ和菓子が口に残っているのか、口はまだもぐもぐと動いていた。

少しして、口が空になった幽々子は扇子で口元を隠しながら妖夢に語りかける。


「ようむもいっしょにどうかしら?とてもおいしいわよ~?」


厳格な空気を纏う妖夢に対し、幽々子は気の抜けた、ほんわかした口調で妖夢を食事に誘う。


「もうしわけありません。いまはきがのらないものでして。」


「ん~、きがのらないのもわかるけど、そういうときほどおいしいものをたべないと~。」


「ごかんべんを、ゆゆこさま。」


妖夢は幽々子のこの緊張感の無さに慣れているのか、改まった姿勢を崩さすにいた。


「そっかあ、ざんねん。」


幽々子はしょんぼりしたように扇子で顔を覆った。


「ゆゆこさま、こちらを。」


妖夢は短く切り出すと、背中に背負っていたお飾りを、幽々子の前に差し出した。

それは、ドス魔理沙達に永遠にゆっくりさせられた使いの妖夢の物だった。ついていたゴミは丁寧に取られ、汚れは水で洗い落されていた。

幽々子は扇子から顔を出し、それを一目見ると扇子を畳んで床に置いた。


「…そう、このこはとってもドジだったわ~。でも、みんなよりいちだんとあかるくて、いっしょうけんめいで、すなおだった…。」


今は亡き妖夢のお飾りをもみあげで優しく撫でながら、幽々子は独り言のように呟いた。


「ねえ、ようむ~?」


刀の妖夢は背中に冷たいものを感じた。部屋の空気が一変する。


「おろかものは、どうしたのかしら~?」


口調も、声量も、表情も先ほどまでと何ら変わらない。しかし、その言葉には何か、冷たい、何かが籠っていた。


「いっぴきのこらずせいさいしました。」


「…そう。ようむ?」


「はい。」


「ごくろうさまでした♪」


「…もったいない、おことばです。」


妖夢の報告を聞いた幽々子は、再びほんわかした空気を身に纏う。


「それで~、ようむ。かんがえたんだけど、こんご、けいやくにむかうさいはかならずふたりぐみにしましょ~ね~。それから~、おはかのみんなのはいちだけど~」


今回の件を受けた幽々子は、改善策を妖夢に指示していく。

この幽々子は妖夢達の群れの長であり、この墓地の守護者なのだ。

そして、この妖夢は墓守の妖夢達のリーダーであり、時に墓荒らしの制裁者でもあった。


「こんなかんじね~。どうかしら~ようむ?」


「いろんありません。しょうちいたしました。」


「じゃあ~おねがいね~。」


作戦会議も終わり、幽々子は再び和菓子に手を伸ばし、頬張り始める。


「…あの、ゆゆこさま。おうかがいしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」


改まって、妖夢が幽々子に質問した。


「あら?なにかしら~?」


「どうしてこんかい、あのむれがはかをあらしたことにすぐにきがついたのですか?」


「んん~?」


和菓子で満たした口を扇子で隠して、まだあるんでしょ?と言いたげに少しだけ首を傾げた。


「あと、このかいぜんあんも、とてもしゅうげきをしょうさいにしらないとできないことです。いったいどうやってここまで’’はあく’’したんでしょうか?」


「ふふふ、この子達が教えてくれたのよ~。」


「?」


幽々子は妖夢から渡されたお飾りを撫でた。


「…ええと、なにをおっしゃっているのかわかりかねます。」


先ほどまで冷静だった妖夢が、どこか落ち着かない様子で疑問を投げかける。


「オバケになって、わたしのところにやってきて、おしえてくれたのよ~。」


オバケ、という単語を聞いた瞬間、妖夢の顔が引きつった。


「え、お、おおばけですか…?え…」


「そ。」


明らかに動揺し、額から汗のような砂糖水を垂らす妖夢。対照的に、幽々子はなんでもないような口調だった。少しの間沈黙が横たわり、そして妖夢が口を開く。


「…じょうだんですよね?ゆゆこさま…?」


半ば懇願するような物言いに、幽々子は扇子で口を隠して目だけでニッコリ笑った。


「ふふふ、じょうだんよ。ほんとうにかわいいんだから♪」


「か、からかわないでください。ほんとうにもう…。」


「ふふ、ほんとうはようむがおそわれているのをみたゆっくりがいて、そのこからおしえてもらったのよ~。しゅうげきのしょうさいも、もくげきしゃがおおくて、すぐにぜんたいをつかめたわ~。

うんがよかったのね~。」


「そうでしたか。そうですよね、オバケなんているはずありませんから。」


質問の答えを聞いた妖夢は納得したように幽々子に挨拶し、煙のように消え去った。


一人部屋に残された幽々子は満足したようにもう一口、和菓子を食べた。


「ふふ。かわいいところもあるでしょう?」


誰もいない部屋に、幽々子は話しかけた。


「あらためて、ごめんなさい。わたしのせきにんよ。」


幽々子は暗い顔で謝罪した。


「…そう、かたきはとってもらえたのね。…ふふ、ならもうすこしここにいてもいいわ~。」


幽々子は妖夢のお飾りをそっと撫でた。

風は吹いていないはずが、黒いリボンが幽々子の顔をくすぐるようにたなびいた。


…みょん♪…みょん♪


幽々子以外誰もいないはずの部屋で、何かが楽しそうに歌い、跳ねる音が響いていた。

初めて小説を書きましたが、とても楽しいものでした。


次回作も執筆しておりますので’’ゆっくり’’お待ちください。

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