表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧乏勇者、金の賢者に出会う  作者: やしゅまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/19

第8話「スライム牧場、最初の壁 ― 人材と時間の不足」

「よし……今日もやるぞ!」


 朝日が昇るより早く、アレンはスライム牧場予定地に立っていた。端材で組んだ柵はまだ歪んでいるが、小屋の骨組みは見える。自分の手で作ったと思うだけで胸が熱くなる。


「俺の夢が……本当に形になってきた!」


 アレンは槌を握りしめ、釘を打ち込む。


 だが──


「ぷるんっ!」


 足元から飛びついてきたスライムに顔を挟まれた。


「ぎゃああ!? 待て、今は作業中だって!」


 嬉しそうにぷるぷる震えるスライムは、完全に構ってほしがっている。


 さらに──


「ぷるるるるるっ!」


 別のスライムが柵の上を跳ね、アレンの頭に乗った。


「おまえら……昨日より増えてないか?」


 リリアの言っていた“健康なスライムはよく増える”という言葉を思い出す。確かに増えて嬉しい。しかし──


「餌やり、温度調整、運動、清掃訓練……うわっ、やること多すぎじゃね!?」


 さらに、建設、素材選別、そしてドランの武器修理素材のチェックまである。


 休む暇がない。



 昼頃、バルドルが杖をついて様子を見に来た。


「ほう、ずいぶん賑やかだな」


「増えて……増えすぎて……!」


 アレンの肩にはスライムが三匹乗り、腰には一匹が巻き付いている。


「資産は増えるほど管理が難しくなるものだ」


「いや、スライムは資産ですよ!? なのに負債扱いになるんですか!?」


「管理できぬ資産は、ただの負債じゃ」


 アレンは膝から崩れ落ちた。


「そんなぁ……!」



 夕方。アレンは目の下にクマを作りながら、柵を直していた。


「うおっふ……眠……」


 その瞬間──。


「ちょっとアンタ!」


 リリアが怒鳴りながらやってきた。


「昨日も徹夜でしょ! 今日も!? バカなの!?」


「で、でも……俺が働かないと……」


「働かないと? その顔で言えることじゃないわよ!」


 額に指を突きつけられ、アレンは何も言えなかった。


「倒れたら誰がスライムを世話するのよ!? 誰が牧場を守るの!? アンタの代わりなんていないんだから!」


「……リリア……」


 叱られているのに胸があたたかい。だが彼女の言葉は正しい。

 だからこそ逃げ場がなかった。



 その夜、バルドルが鍋を前に語りかけてきた。


「アレン。覚えろ」


「……はい」


「“自分の時間”を削る者は、いつまで経っても貧乏から抜けられん」


 アレンは呼吸を止めた。


「……!」


「資産を作る者は、“自分が働く時間”ではなく

 “資産が働く時間”を増やすのだ」


「俺……逆のことしてた……!」


「そうだ。おまえは今、“労働の地獄”へまっしぐらじゃ」


 アレンは頭を抱えた。



 翌朝。

 スライムの世話をしながら、アレンはつぶやいた。


「一人じゃ……無理なんだ……」


 そのときだ。


「兄ちゃん、それスライム? すげー! 触っていい!?」

「かわいい! 跳ねた! 早い!」

「うちの納屋掃除させたい!」


 近所の子供たちが駆け寄っていた。スライムに目を輝かせている。


(もしかして……)


 アレンはごくりと唾を飲み、声をかけた。


「なあ、スライムの世話……手伝ってくれたらさ。

 好きな時に掃除スライム、貸してやるぞ!」


「マジ!?」

「やるやる!!」

「毎日来る!!」


 歓声が上がり、子供たちは一斉に牧場に入り込んだ。


「じゃあ餌はこれ。湿度はここ。スライムは優しく扱うんだぞ!」


「任せろー!」


 子供たちが遊びながらスライムの世話を始め、スライムたちも嬉しそうにぷるぷる跳ねた。


 アレンの肩から、一気に負担が消えた。


「これが……外注……!」


 バルドルが遠くで腕を組みながらうなずく。


「そうだ。人は金だけで動くのではない。

 “価値の交換”で動くのだ」


 アレンは目を見開いた。


(俺は……また一つ学んだ……!)



「よし……これで品質向上に集中できる!」


 アレンは充電された体で小屋作りを再開した。


 すると背後から、バルドルの低い声。


「さて、これでようやく……第二の教えに進めるな」


「だ、第二の教え!?」


 バルドルは意味深に笑った。


「次は……“お金の流れを読め”だ」


 アレンの背筋が震える。


 スライム牧場は、ここから本当の成長ステージへと踏み出していくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ