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貧乏勇者、金の賢者に出会う  作者: やしゅまる


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第19話(最終話) 『勇者の資産 ― 金では買えない価値』

黒牙商会本拠の崩れた倉庫。

 瓦礫の山の中心で、アレンはゆっくりと目を開けた。


(……生きてる……?)


 視界の奥、金色の魔力が渦巻く。

 その中心で、大賢者バルドルとラグスが睨み合っていた。


「お前さえいなければぁぁ!!

俺の“搾取の仕組み”は永遠に回り続けたんだ!!」


 ラグスの怒号が響く。


 金の牙が光り、膨れ上がった筋肉がさらに肥大化する。

 魔力を喰らった結果、もはや人の姿ではない。

 “金を奪うことだけ”を繰り返し続けた怪物の成れの果てだった。


「愚かじゃな、ラグス。

奪うだけの仕組みは、いつか必ず破綻する。

価値を生まぬ者に、人はついてこん」


 バルドルは静かに言う。


「黙れええええっ!!」


 ラグスが地を踏み鳴らす。

 地面が裂け、金色の魔力が噴火のように噴き上がる。

 その力は、街一つを焼き払うほど。


「アレン!」


 リリアが駆け寄る。

 アレンはボロボロの体を引きずり、バルドルの背中を見つめた。


 その時――バルドルが振り返った。


「最後の教えじゃ。

“お前が何者かを決めるのは、お金ではない。行動だ。”

アレン……お前の答えを見せてみよ」


 その言葉が、胸の奥に火を灯した。



 アレンは立ち上がった。


「……僕は……逃げない。

守るんだ。

奪わせないための“仕組み”を……僕が作る!!」


 スライムたちがアレンの周囲に集まり、

 淡い光を放ち始めた。


「みんな……僕に力を貸して!!

“資産を守るネットワーク”を最大展開だ!!」


 スライムたちが一斉に伸縮し、

 粘液が金色の魔力に反応し、巨大な膜となり――


 ラグスの暴走魔力を飲み込んだ。


「なっ……なんだこれはぁぁ!!??」


「これは僕たちの“資産”だ!!

仲間と積み上げた、仕組みだ!!

奪われるためじゃなく、守るために作ったんだ!!」


 魔力が吸収され、ラグスの肉体が縮んでいく。


「こんな……搾取しねぇやり方が……

搾取特化の俺に勝つ……だと……!?」


 ラグスは崩れ落ちた。


 黒牙商会を支えていた

“奪うためだけのシステム”はその瞬間、完全に壊れた。



 戦いが終わると、アレンはその場に座り込んだ。


「ふぅ……終わったんだ……」


 リリアが駆けつけて抱きしめる。


「アレン……ほんと、バカ……!

死ぬかと思ったんだから……!」


 ドランは照れ隠しにそっぽを向く。


「まぁ……悪くなかったぜ」

「素直に褒めてくださいよ!」


 その空気の中、バルドルは静かに立っていた。


「さて……わしは行くとするかのう」


「えっ……?

まだ教えてほしいことがあるのに!」


 アレンがすがるように言うと、

 バルドルはゆっくり振り返る。


「もう教えることはない。

賢く稼ぎ、築き、守れる者は……

自ら学び続けるものじゃ」


 そう言って、彼は古びた杖を差し出した。


「これは“金を生む杖”ではない。

“思考を正す杖”じゃ。

行き詰まったら軽く叩け。

たいていは、お前の思い込みが間違っとる」


 アレンは杖を受け取り、深く頭を下げた。


「……ありがとうございます。

バルドルさんのおかげで、僕は変われた」


「いいや、アレン。変わったのは――

お前自身の行動じゃよ」


 そう言って、賢者は風のように消えた。



 王都は黒牙商会の支配から解放され、

 人々は自由に商売をし、互いに協力し合い始めた。


 アレンの牧場は“価値を生む場所”として評判になった。

 スライムの粘液は薬屋、職人、料理屋にまで需要が広がる。


「アレン、今日も注文がいっぱいだよ!」

「うちの経済、マジで動かしてるな……!」

「へへ、嬉しい悲鳴ってやつ?」


 アレンは青空を見上げる。


(働けば報われる……じゃなかったんだ。

正しく働き、賢く仕組みを作れば……

未来は変えられるんだ)


 リリアが笑う。


「アレン……これからどうするの?」


「決まってるよ。

勇者業も、牧場も……どっちも続ける。

僕が作るんだ。

“みんなが豊かになる世界”を!」


 仲間たちが笑い、スライムがぼよんと跳ねる。


 その中心でアレンは、確かな歩みを始めていた。


――そして、物語は幕を下ろす。

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