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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第十二話 さようなら。はじめまして。

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59/60

さようなら。はじめまして。 Dパート

「じゃあ、行ってくる」


 ただただ広いロビーに多くの人々が行き交う。巨大なガラス窓の外には広い青空が広がり、地には無数の鉄の鳥が翼を休めていた。

 発着アナウンスと電光掲示板の搭乗案内を確認した高橋くんが、夢見る少年のような良い笑顔で皆に告げた。


「行ってらっしゃい。水には気をつけてね」


「麗華、待ってるからな」


 麗華ちゃんと高橋くんはハグしながら別れを偲ぶ。


「洋輔、無茶して怪我だけはするなよ」


「分かってる。無理はしても無茶はしないさ」


 マーくんが高橋くんの首に手を巻き、高橋くんは苦笑いで互いに肩を組んだ。


「テレビで応援してるよ。頑張ってね」


「白井さんも元気でね。糸尾には……落ち着いたら俺から連絡してみるよ」


「……そうだね。そうしてあげて」


 アタシ、QPこと白井真夜は、はにかみながら右手を差し出し、高橋くんは力強くその手を握り返してきた。


 ゲートを潜り、もう一度振り返った高橋くんは拳を掲げた後、軽く敬礼して搭乗手続きへと向かった。

 私たち三人は笑顔で手を振りながらそれを見送る。高橋くんはヨーロッパへサッカーの武者修行へと旅立った。

 高校卒業式後の宣言通り、彼の所属したプロチームは、下部リーグから昨年J1へと昇格した。足掛け六年の努力の結果だ。その功績を認められて海外への挑戦を許されたのだ。

 アタシは高橋くんが人混みに紛れて見えなくなるまで見送ってため息をひとつ。


「高橋くん……行っちゃったね」


「すぐにテレビで元気な姿を見ることが出来るさ」


 感傷的になる私の隣にマーくんがそっと立ち、優しく右手を握ってきた。先ほど高橋くんと握手した手だ。もしかして嫉妬してる? 内心ちょっとニヤけてしまった。


「二人とも見送りありがとうね。来週か再来週には私も渡欧するから、しばらく会えなくなるわね」


 麗華ちゃんも仕事の都合がつき次第に追いかけて行く予定だ。寂しくなるなぁ。


 寂しいと言えば――


「アヤちゃんも高橋くんの見送りを楽しみにしていたのに……どうして……」


 アタシは俯いて下唇を噛んだ。昨日まであれだけ元気だったのに……


「それで、糸尾くんは?」


「……おそらく今頃は病院だと思うわ」


 マーくんの問いに麗華ちゃんが静かに応えた。

 二人とも本来なら今日の見送りには来る予定だったのに……。


 空港のロビーを三人で肩を並べて歩く。来週か再来週には麗華ちゃんも居なくなっちゃうなんて。

 アタシはポケットからソレを取り出した。

 スマホDEマリオネット。

 アヤちゃんの容態が悪くなった昨晩、私に直接託された。


『……わたしの、かわりに……コレを……』


 青ざめた顔で私にソレを託したアヤちゃんの顔を思い出す。思わずギュッと握りしめたスマホDEマリオネットをポケットに仕舞って顔を上げた。


「会いに行こう!」


「え?」


「会いに行こうよ。アタシ、アヤちゃんの顔が見たい」


 私の突然の宣言に麗華ちゃんが驚く。

 袖をまくって腕時計で時間を確認したマーくんが言った。


「この時間ならタクシーを飛ばせば間に合うかもしれないね」


 言うやいなやマーくんはタクシー乗り場に駆け出した。


「本当に行くの? 迷惑じゃ?」


「それでも! それに……糸尾くんの事も気になるしね」


 マーくんを追いかける様にアタシと麗華ちゃんも駆け出した。

 タクシー乗り場で既にタクシーを捕まえていたマーくんが手を上げて呼んでいる。


「こっちこっち! 行くなら早い方がいい」


 三人でタクシーの後部座席に雪崩れ込む。


「市立◯◯病院まで。出来るだけ急いでください」


 マーくんが行き先を告げるとタクシーはスルスルと静かに走り出した。

 体感的に道が混んでいる気がしてソワソワする。実際は空いていたのかもしれないが、気だけがはやる。


「アヤちゃん、待っててね。今行くから……」

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