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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第十二話 さようなら。はじめまして。

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56/60

さようなら。はじめまして。 Aパート

ついに最終話を迎えました。

ここまでお付き合い頂きありがとうございます。

綾乃の物語はついに最後を迎えますが、皆様の中に何かを残せたら幸いです。

それでは最終話さようなら。はじめまして。をお楽しみください。

「どうしよう、私のせいで”マリ“が殺されちゃう……」


 公園を薄明るく照らす街灯は普段より暗く感じた。

 冬の雨に濡れた身体は凍る思いだったが、この身の震えは恐怖によるものだった。ポケットの中で握りしめた”マリ”はいつもより冷たく感じた。

 ほんの出来心だった。会報誌への掲載に困った末の苦渋の判断。私生活を切り売りした事が、巡り巡って“マリ”ことスマホDEマリオネットの回収及び解体を招いた。つまり私が原因だ。私が”マリ“を“殺す”切っ掛けを作ってしまったのだ。


「落ち着いて、アヤちゃん。”マリ“は、スマホDEマリオネットは只の機械だよ。死んだりしない」


 QPが傘を持ったまま、ベンチに座る私を覆い被さる様に優しく抱きしめて囁く。優しく、そして残酷に。


「ヒトデナシ……そんな事……言うなよ」


 分かっているよそんな事。理屈じゃないんだよ。


「人でなしでも構わないよ。それでもアタシは“マリ”よりアヤちゃんの方が大切だから」


 私を拘束するQPの腕と胸が強く、優しく、温かかった。


「”マリ“には色々と助けてもらったんだよ」


「うん、知ってる」


「おかげで麗華との縁も修復出来た」


「あの時はゴメンね」


「高橋やマーくんとも仲良くなれた」


「うん」


「“マリ”が居なければ桜と知り合う事も無かった」


「そうだね」


「糸尾の事だって……私は居なくなる”マリ“に何を返せばいいの?」


「アヤちゃん……」


 私はQPの胸に顔を埋めて思いを吐露しながら号泣した。いや、正確には“号泣したのだろう”としか言えない。何もかも忘れてQPの胸の中で泣いた。覚えているのはそれだけだった。


「落ち着いた?」


 泣き疲れて鼻を啜る私にQPが優しく問いかけてきた。


「……もう少し、このままで」


「うん。……あのね、アヤちゃん。確かに斎藤さんが来たのはアヤちゃんの書いた小説のせいかもしれない。だけど”マリ“は

喜んでいると思うよ。だってそれだけアヤちゃんと思い出を作ったって事なんだから」


 私はQPに包まれたまま黙って話を聞いていた。


「そしてその思い出は“マリ”が居なくなっても消えることは無いんだよ。それは私や皆もそう。麗華ちゃん、糸尾くん、高橋くん、マーくんに桜ちゃん。皆の記憶と思い出の中にアヤちゃんを通して残り続けるんだ。きっと”マリ“もアヤちゃんに沢山使ってもらって、大切にしてもらって喜んでいるよ」


「……そう、なのかな」


「だからさ、笑ってお別れしようよ。今までありがとうってさ」


「“マリ”は私を恨まないかな?」


「ううん。きっと感謝してるよ」


 私は”マリ“を持ったままQPの背に手を回し、殊更強くQPの胸に顔を押し付けた。


「そうだったら……いいな……」


 足元でミケちゃんがニャ~と鳴き、冬の雨はとうに上がっていた。






 泣き腫れた目でQPと二人で家に戻った。ずぶ濡れで玄関に上がった私達を見たお母さんが悲鳴を上げて風呂場に強制連行された。

 私が家を飛び出した後、斎藤さんは名刺を一枚残して帰ったらしい。「落ち着いたら連絡をください」と伝言を残して……


「アヤちゃん、何かあったら連絡してね」


 私の服を借りたQPも後ろ髪を引かれるように帰宅した。その後は当然のようにお母さんからの説教タイムが待っていた。

 “マリ”を握りしめながら何度も謝った。理由を聞かれたが当然言えるはずも無く、心配をかけて本当に申し訳ないと思った。

 解放された後、本当なら受験勉強をしないといけないのだが、ペットに潜り込み泥のように眠った。






「なんか覚えがある。既視感(デジャヴ)?」


 闇に包まれていた。音も光も無い虚無の只中に横たわる私は金縛りにあったかのように身動き一つ取れない。それでも感じる。すぐ傍らに気配を感じるのだ。

 必死に横目で気配を探るが気配の主を捕らえることは無く徒労に終わる。それでもなぜか、その気配からは温かさと優しさが滲んでいた。そしてゆっくりと気配は遠のいていった。ゆっくりと、ゆっくりと……。その気配から意思が私に伝わってきた気がした。


『ありがとう』



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