誤解×和解×閉会 Eパート
「ごめん。マーくんとの時間を奪ってしまった事は謝る」
まず、最初に素直に謝罪した。これは本心だ。夏以降、彼には助けられてばかりだ。
「それはいいよ。どうせマーくんから言い出した事だろうし。で、アヤちゃんは何しに来たの?」
相変わらずQPの表情は伺えない。でも分かる。拒否してはいない。そして、その視線は私の頭頂に釘付けになっているのが感じ取られた。
そのタイミングでマイム・マイムが流れ出したので、私は右手を差し出す。それを見たQPは怪訝な雰囲気を醸し出す。
この手を取らなければ話は終わりだ。私とQPの縁は切れたと思っていいだろう。さあ、どっちだ?
「……」
左手の指先で遠慮するように私の右手指先を摘んできた。
ありがとう。まだ余地はあるって事だ。
音楽に合わせて体を動かすが、私はダンスが苦手だ。だから
今まで避けていたのに……
「相変わらず下手くそだね。それで? アタシに話があるんでしょ?」
「……」
指先からQPの温もりと震えが伝わってくる。QPもきっと葛藤と戦っているのだろう。頑張れ私!
「マーくんに受信アンテナを装着して私が彼に何をしたと思った?」
「!……やっぱり何かしたの? 意識の無い人を無理矢理操るなんで卑怯だよ。ましてや友達の彼氏に……」
「……」
指先を摘む力が強くなる。痛いってば。
「私は何もしていないよ。信じてほしい」
「嘘だ! きっと”あんな事“や”こんな事“をしたに決まっている! マーくんカッコ良いし!」
「ちょっと待て! なんだその”あんな事“とか”こんな事“ってのは!」
「……アヤちゃん」
「何?」
「スマホDEマリオネットを使ってるんじゃないの?」
「……あ!」
そう、私は頭に受信アンテナを装着して、この話し合いに臨んだのだ。意味は特に無い。あえて言うなら、無事に演じきれるように自己暗示をする為だ。
本来、スマホDEマリオネットで行動する時は予定された行動や台詞以外の発言や行動の自由は効かない。臨機応変に返事をする事なんて出来ないのだ。
「……あ……そうか……そうだったんだ」
QPが何かに気が付いたようにひとりごちる。
「えっと…ごめん。別に騙すつもりは無くて……」
「思い出したよ。あの日、アヤちゃんはスマホを持って居なかった。つまりマーくんを操る事は出来なかったんだ……」
あ〜、うん。まあそうだね。
「なら何でマーくんの頭にアンテナを?」
え、それ話さないと駄目?
ちょっと恥ずかしいんだけど。
曲はオクラホマ・ミキサーに変わった。
「いや、だって男の子とあんな状況で無警戒に寝るとか怖いじゃん。もちろんマーくんを信用していないって訳ではないけど、下半身に負けて“あんな事”や”こんな事“を――」
「酷い! マーくんはそんな事しないよ!」
「イヤ、ハイ、ゴメンナサイ」
「なんとなく分かった。ただの“おまじない”とか“気持ちの問題”とかって事ね」
「ハイ、ソノトウリテゴザイマス」
QPは私を振り回すように踊る。いつの間にか互いの手はしっかりと握られていた。
「そっか、アタシの誤解ってか、早とちりだったんだね」
「いや、私もちゃんと説明すれば良かった。私は何も悪い事はしていないって考えに囚われていて、QPの気持ちを理解できていなかったよ」
「本当だよ。アヤちゃんのバカちん」
「は? QPなんてムッツリスケベじゃん。”あんな事“や”こんな事“って何だよ」
「それはアヤちゃんも同じでしょ?」
「QPのわからず屋」
「アヤちゃんのオタンコナス」
「お前の母ちゃん出べそ」
「何それ?」
「いや、知らないけど昔はよく言ってたらしいよ」
「親の事を出すとか最低だね」
「えっと、何の話だっけ?」
「……ふは、アヤちゃん、ゴメンねって話」
「そうだっけ? でもそうだね……私こそ、ゴメン」
しっかり繋いだQPの手が熱く、それ以上に顔が熱かったのはきっとキャンプファイヤーの炎に照らされたせいだろう。
そして私たちの高校生活最後の文化祭は閉会した。




