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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第十話 誤解✕和解✕閉会

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誤解×和解×閉会 Dパート

「あ、久具津先輩。高橋元生徒会長が中で待ってます」


 ”文芸部展示会“と装飾された扉の横、簡易受付に座っていたのは工藤ちゃん。 約束の時間、私は文芸部室の前に立っていた。


「……そっか。ありがとう」


 それ以上は聞かなかった。

 答えは、たぶん最初から決まっている。

 彼女は席を立って会釈し、この場を後にするその背中を見送った。


 扉をノックしてから中に入る。


 そして、待っていたメンツを見て苦笑いが出た。

 呼び出した高橋は当選、後は麗華、そして――


 「久具津さん、さっきはゴメンね」

 

 ――マーくん。


 ……やっぱり、QPはいないか。


「気にしてないよ。ここに居るって事は協力してくれるって事でしょ?」


 マーくんは微かに笑って小さく頷いた。


「さて、じゃあ今後について話そうか」


 高橋が役者は揃ったと言わんばかりに話し始める。生徒会長を引退しても、その場を仕切る空気は変わらない。


「雅史から連絡があってさ。久具津さんと話したいって」


 私は黙って頷いた。


 マーくんが一歩前に出る。

 昼間とは違って、どこか覚悟を決めた顔をしていた。


「……ごめん、久具津さん」


 真正面からの謝罪だった。


「僕も何とか橋渡し出来ないかと真夜ちゃんに言ったんだけど……」


「拒否られた、でしょ」


 私が先に言うと、マーくんは小さく息を吐いて頷いた。


「まあね。でも、意固地になっているっていうより、話せない事情がある。そう感じでそれ以上は踏み込めなかったよ」


 胸の奥が、少しだけ痛んだ。話せない事情……つまりスマホDEマリオネット関係って事だ。

 でも、それ以上に不思議と納得している自分がいた。


「だからさ――」


 マーくんは続ける。


「――後夜祭て真夜ちゃんと会ってほしい」


 そんなに簡単に会ってくれるかな?


「……どうやって?」


「何で僕が真夜ちゃんと離れてここに居られると思う?」


 質問に質問で返すとか……でも、それには意味があるって事だよね?


「喧嘩でもした?」


「残念。答えは“どうせなら待ち合わせした方がドラマチックじゃない?”だってさ。かわいい事を言うよね」


 乙女かよ! いや、乙女だからいいのか。


「その待ち合わせ場所に君が向かってくれ」


 その言葉に、私は静かに目を伏せた。QPゴメンね……


「アヤちゃん、お願い。私も2人を見てると苦しいよ」


 麗華が視線を落として絞り出すように後押しする。


「事象は分からないけど、最近の君たちは”らしくない“と俺も思うよ」


 高橋が労わるように麗華の肩を軽く抱き、私から視線を逸らさない。


「だから、俺はここで退場するよ。後は……任せる」


 マーくんが手を掲げたのをハイタッチで返した。パンって音が文芸部室に響く。


「……任された」


 逃げ道は、もう無い。

 高橋が、短く言う。


「骨は拾ってやる。ドンと行け」


「……嫌な事言うなよ」


 思わず四人で吹き出して笑った。

 舞台は整った。後は私が演じきるだけだ。

 さあ、満を持してマリオネットの出番だ。


 文芸部室を出ると、廊下の窓からキャンプファイヤーに火が入るのが見て取れた。

 後夜祭の準備が、もう始まっている。


 私は一度だけ、深く息を吸った。

 逃げる時間は終わった。次は、向き合う番だ。


 誰もいない廊下に私の足音だけが響く。いざ、QPの待つ後夜祭へ……





「QP……お待たせ」


 マーくんに指定された場所に、確かにQPが待っていた。

 キャンプファイヤーの炎を背に建つQPの顔は深く濃い陰を落としていて表情は伺えない。まるで以前の洞窟での状況と同じだ。

 でも今日はあの時とは違う。

 私を見て一瞬驚いた顔をした後に苦笑いする様が目に浮かぶ。


「もう、マーくんも大概にお節介だよね……」

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