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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第十話 誤解✕和解✕閉会

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誤解×和解×閉会 Cパート

「あ〜疲れた。終わり終わり」


 クラスの軽食喫茶の担当時間は終わった。エプロンを外した頃には十五時を回っており、客足も落ち着きを取り戻していた。交代の引き継ぎを終えて、麗華と二人で教室を出た。


「アヤちゃんはこの後はどうするの?」


「……QPを探す。そして話をしてみる」


「私も高橋くんと探してみるわ。何か分かったら連絡する」


「ありがと。無理しない程度に高橋くんと楽しんで」


「……そっちこそ、無理しないでね」


 小さく頷いて麗華と別れ、私は校舎の廊下へと足を向ける。

 本来なら高橋ともっと文化祭を楽しんでもいいはずだ。幼馴染とはいえ、ここまで協力してくれる事には感謝しか無い。

 後夜祭まで、まだ時間はある。あるはずだ。だから今、私も出来る事をしよう。


 いい加減、ここまて放置していた自分に腹が立つ。結局は自分が傷付きたくなく、問題を後回しにしていただけ。

 有耶無耶にして逃げるのは、もう終わりにするんだ。


 歩きながら、頭の中で同じ問いが何度もリフレインする。


 “私が何を間違えたのか”

 “QPは、何に引っかかっていたのか”


 夏の別荘。逆光の洞窟。疲れ果てて寝ているマーくん。

 アンテナを外した、あの瞬間。

 正直、私が何かをやらかした覚えは無い。どこかで何か誤解があるはずだ。


 もし私がQPの立場だったら。


 ”自分の知らない所で親友が大切な人と二人きりで一夜を過ごす“


(……そりゃ、嫌だよな。でもそれだけじゃないはず)


 私は何をした?

 QPに対して。

 マーくんに対して。


 説明すべきだったのか。

 それとも、触れない方が良かったのか。


 頭の中で問答を繰り返しながら、ひたすら校内を探し回る。本日は外来のお客さんが多い。ただでさえ探すのが大変なのに困難を極めた。


 屋上。

 誰もいない。秋風が冷たいだけだ。


 講堂。

 出し物の準備で人は多いが、QPの姿はない。


 グラウンド。

 サッカー部の催しは相変わらず盛況で、歓声が飛び交っている。

 QPどころか、糸尾と高橋の姿も見えない。


 どこにいるんだよ……。


 無作為に足が向いた先は、校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下だった。

 中庭を見下ろせるその場所は、様々なクラスや部が出店を連ね、テーブルと椅子が所狭しと並んでいる。雑多と混雑で気分は“◯ォーリーを探せ”だ。


 ふと、視線が止まる。


 マーくんだ。


 ベンチの傍に立ち、二つのカップの入ったドリンクケースを片手に誰かを待っている様子。

 思わず声を掛けようとして――。


 その瞬間、マーくんがこちらに気付いた。


 彼は一瞬だけ目を見開き、すぐに人差し指を立てて口元に当てる。

 そして、ゆっくりと首を振った。


(……今は、待て)


 言葉はない。だが目が語っていた。

 下唇をぐっと噛む。


 待つ? 何で?


 私は何も出来ず、身を乗り出し、渡り廊下の手すりを掴む手に力が入り指が痛い。


 ほどなくして、出店の袋を手にしたQPが現れた。


「……あ」


 彼女はマーくんの隣に並び、笑顔で何かを話しながら歩き出した。


 こちらに気付いてて、あえて無視しているのか。

 それとも、気付いてすらいないのか……。


 結局QPは一度も顔を上げる事は無かった。


 二人の背中が人混みを縫うように中庭の向こうへ消えていくのを、私は黙って見送る。

 呼び止めることも、追いかけることも出来ないまま。


 胸の奥が、じわりと重くなる。待つって何時まで?


 その時、ポケットの中でスマホが震えた。高橋からのメッセージだった。画面を開く前から、嫌な予感と期待がない交ぜになる。


 ――逃げる時間は、もう終わりだ。


 私は深く息を吸い、スマホに指をかざした。


「……一時間後に文芸部室?」

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