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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第十話 誤解✕和解✕閉会

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誤解×和解×閉会 Bパート

「じゃあ、後はお願いね」


 昼を告げるチャイムが校舎に響き渡る頃、交代で戻ってきた後輩ちゃん二人とバトンタッチで受付を離れる。

 桜と工藤ちゃんが文化祭の散策に向かった後、文芸部展示会には一人として客は来なかった。一人で過ごす時間は虚しさと寂しさのハイブリッドだ。こんな時にQPが居てくれたら……。


「あ、アヤちゃん」


 凝った肩と首を回しながら歩いていると後ろから声が掛かった。QPかと思い、一瞬ドキっとしたが声が違う。この声は……。振り向くと麗華だった。

 背中まで伸びた髪を緩くまとめ、只の制服、茶のブレザーにエンジのリボン。私と同じ服装のはずなのにやけに眩しい。文化祭の華やかさの中でも、相変わらず目を引く存在だ。


「あれ、高橋くんは?」


「さっきまで一緒だったわよ。サッカー部の催しの様子を見てくるって」


 サッカー部はグランドで昔流行ったキックして的を撃ち抜きビンゴするゲームをやっているらしい。

 午前の拘束が終わった解放感と、次の仕事への小さな憂鬱が同時に押し寄せる。ゴゴイチからはクラスの催しの手伝いだ。


「じゃあ、教室に行こっか」


 私たちのクラスは安直に軽食喫茶をやっていた。

 教室の扉を開けると、鉄板の焼ける音と甘い匂いが混じり合い、文化祭らしい雑然とした空気が流れ込んできた。


「いらっしゃ……なんだ、操乃と麗華か」


 クラスメイトの声に迎えられ、私と麗華は苦笑いする。


「お疲れさん。裏でお昼ご飯食べたらホールに入るよ」


「待った待った! ならこっちで食べてよ。麗華は美人だしサクラにはピッタリだよ」


 私は?ねえ、ワタシは?


「しょうがないわね。アヤちゃん、付き合わせてゴメンね」


「ドンマイ。しかし、こうして座ってると文化祭って感じするね」


 二人で手近なテーブルに腰を下ろし、適当に注文する。


「QPちゃんは?」


「あさイチのホール担当だったはずなんだけと、その後は……」


 注文した軽食をつつきながら、取り留めのない話をする。

 その時だった。


「……あれ、糸尾くんじゃない?」


 麗華の視線の先。

 入口から入ってきたのは糸尾と、見覚えのある男子が五人ほど。たしか……


「“彼女居ない者同盟”の面々か……」


「え、何その安直な名前」


「いや、知らんがな」


 彼らは私達の横を通り抜けて奥のテーブルへ。通り際に糸尾が小声で聞いてきた。


「久具津。ホール出るのいつから?」


「あん? お昼食べ終わったら出るよ」


「そっか。ナイスタイミングだな」


 糸尾の背中を見送り、ナンノコッチャ?と疑問符を浮かべる。おっと、さっさと食べてホールに入らねば。


 お昼ご飯を食べ終えた私と麗華は、裏の控室に設置した簡易更衣室でブレザーを脱いでブラウスの上からエプロンを着用し、頭におそろいのカチューシャを装着してホールに出た。


 ふと見ると、”彼女居ない者同盟“の連中は既に注文の品が届き食べ始めているのに、糸尾だけはメニューとにらめっこしていた。何してんだアイツ。


「すみませーん。注文いいっスか?」


 私を目ざとく見つけた糸尾が手を挙げて呼んでくる。そ~ゆう事か……。


「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」


 糸尾の席に近づくと、彼は待ってましたとばかりに顔を上げた。


「えーっと……オススメをお願い」


 結局決めてないんかーい!

 私が出てくるのを待ってたくせに何やってんだと心の中で毒づく。


 調理場にオススメ一丁!と投げやりなオーダーを通して嫌がられたが無視だ無視。


 私たちは呼ばれるまで端に立って控えているのだが、例の同盟者たちのヒソヒソ声が確実に聞こえていた。


「やっぱ田中さんが抜けてるな」

「……あの子、結構アリじゃね?」

「エプロンの胸の膨らみがたまりませんな」

「点数つけるなら――」


 おい、聞こえてんだよ!


 作り笑顔を崩さないまま、私は嘆息した。

 隣に立つ麗華も苦笑い待った無しだ。


 しばらくして料理を食べ終えて、飲み物も空になった段階で、なんちゃら同盟者らは席を立った。


「ごちそうさま」


 糸尾が私を見て、少しだけ笑う。


「……おいしかったよ、久具津」


 一瞬、言葉に詰まる。


「……ご来店ありがとうございました」


 それだけ返すのが精一杯だった。


 男子たちはぞろぞろと店を出ていく。

 その背中を見送りながら、私は小さく息を吐いた。


「疲れた顔してる」


 いつの間にか隣に来ていた麗華が、からかうように言う。


「文化祭、まだ半分だよ?」


「でもこの後はフリーでしょ?」


「それが一番の悩みどころなんだけどね」


 戯けるように肩をすくめる私を麗華が心配そうに見つめてくる。今日という一日は、まだ何も始まっていないし終わってもいない。

 いい加減、この状況にはウンザリだ。何としても今日中にQPとケリを付ける。


「さて……その為にも、もうひと踏ん張りしますかね」

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