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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第九話 疑心暗鬼のオブソーバー

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疑心暗鬼のオブソーバー Eパート

「お世話になりましたー」


 私たちの夏の別荘体験は後味が悪いままに終わった。

 斎藤さんと話した後も、結局QPはマーくんの部屋から出て来る事は無く、帰宅時間になった現在も私を避けるように離れた所に立っている。関係の改善を早急に望んでいた麗華も既に諦め顔だ。スマンね。なんとか駅までの車中で頑張ってみるよ。

 お世話になった夏美さんに別れの挨拶をして別荘を出た。最後に相談に乗ってくれた斎藤さんに挨拶をして帰ろうと、一人で隣の別荘へと赴く。


「こんにちは。お別れの挨拶に来ました」


「こんにちは。川で流されたって聞いたけど大丈夫だった?」


「だった〜?」


「だいじょうぶです。ご心配をおかけしました」


 斎藤さんの奥さんと娘さんが出て来た。娘さん癒される……。でも斎藤さん本人が見当たらない。おトイレかな?


「あの、斎藤さんは?」


「ごめんなさい。奥で電話しているわ。後で挨拶に来たと伝えておくわね」


「わね〜」


 そんな会話の最中に奥の扉がひらき、斎藤さんが厳しい顔で出て来た。眉間のシワが深く、眼鏡のブリッジを指で抑えながらブツブツ言ってる。そして私の姿に気付いて、取り繕うように笑った。


「おや、久具津さん。どうしたんだい?」


「あ、はい。今から帰るので挨拶に来ました」


「え、そうか……ふむ。僕も急に帰らなくちゃいけなくなったから、駅まで僕が送るよ。君たち二人も帰る支度をしてくれ」


 急な斎藤さんの宣言に奥さんはびっくりして、娘さんは半泣き状態だ。さっき奥で電話してるって話だったし、何か問題があったのかもね。


 私は外に出て、荷物の積み込みを手伝っていた後藤さんに声を掛ける。


「後藤さん。なんか、隣の斎藤さんも急遽帰る事になったので、私達を駅までのついでに送ってくれるそうですよ」


「え、本当かい? 随分と急な話だね」


 手を止めた後藤さんが隣の別荘を仰ぎ見ると、タイミング良く斎藤さん一家が出てきた所だった。まだ小さな娘さんは泣き止んで無いようで、奥さんに抱かれたまましがみつくように泣いていた。


「ああ、遠藤さんもいらっしゃったのですね。丁度良かった。私も急に仕事の関係で戻る事になりました。突然ですが、この場で挨拶させてください」


「いえいえ、お仕事では仕方がないです。来年もお越しください」


「ご理解、痛み入ります。来年は余裕を持って利用させていただきます。お世話になりました」


 うむ、大人の挨拶だ。しかし、仕事のトラブルで休暇が台無しとか。大人って大変だねえ。


「なんでもこの子達を駅までの送ってくださるとか。よろしいのですか?」


「もちろん。どの道、駅の側を通りますから、安心してお任せください」


 話は決まったとばかりに荷物を斎藤さんのミニバンに積み込み全員が乗車する。総員8名で定員一杯で荷物も満載である。

 前列に斎藤夫妻、中列に娘さんを挟んで麗華と桜。そして後列に私、QP.マーくんの順で座った。



***



 走り出したミニバンは、下りの山道をゆっくり目で降りていく。


「流石に重量が厳しいからブレーキに負担を掛けないようにゆっくり走るよ。時間ちょっとかかるから眠ってもいいよ」


 斎藤さんが私達に気遣ってくれている。正に出来る大人って感じだ。


 走り始めて結構な時間が経過した。私とQPは乗車以降、言葉を交わしていない。

 中列では麗華と桜に相手してもらって機嫌が良くなった娘さんがキャッキャと笑っている。


 後列では、マーくんがやはり疲れたのかオネムのようだ。QPと話をするなら今しか無い!


「ねえ、QP……」


「……何?」


 私とは反対側の窓の外を見つめたままのQP。随分と間が空いての返事。やはり機嫌を損ねたままみたいだ。


「さっきはゴメン。ちょっとテンパってたみたいだ」


「……そう」


 う、この独特の間が辛い。しかし、泣き言は言っていられない。


「そのうえで知りたい事があるんだ。QPが私に対して何を怒っているのか教えて」


「……」


「……」


 車内ではしゃぐ娘さんの声のは裏腹に、無言の圧が後列には満ちていた。


「アンテナ……」


「え?」


「マーくんの頭にスマホDEマリオネットの受信アンテナが付いていた」


「……なんだ……そんな事?」


「!! そんな事じゃない! 結局アヤちゃんは何も分かっていない!」


 興奮したQPが、思っていた以上の声で叫んだ。


「んん……真夜ちゃん、どうしたの?」


 騒ぎでマーくんも起きたらしい。中列の娘さんも目を丸くして驚いている。麗華と桜は心配そうに私とQPを交互に見ている。


「大丈夫。大したことじゃ無いよ、マーくん」


QPはマーくんの方へと体を向けて何でも無いと主張した。


「あの~……駅に付いたんだけど、君たち大丈夫かい?」


 ミニバンは最寄りの駅前に到着していた。斎藤さんが心配そうにこちらを見ている。


「アタシとマーくんはこの後、デートしながら二人で帰るから。みんなお疲れ、またね!」


「ちょ、ええ、真夜ちゃん」


 QPに押し出されたマーくんは引きずられるようにQPと駅構内へと消えていった。私たちは唖然としてそれを見送るしか無かった。


「え、私……地雷踏んだの?」


 帰りの電車は結局お通夜状態だった……。

第九話をお読みいただき、ありがとうございました。

ついに操乃とQPの間に決定的な溝が出来てしまいました。

はたして綾乃はこの関係をどのようなして修復していくのてしょうか。

第十話をお待ち下さい。

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