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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第九話 疑心暗鬼のオブソーバー

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疑心暗鬼のオブソーバー Cパート

「――アタシが聞きたいのは、そんな謝罪の言葉じゃない」


 今回の別荘イベントも残り数時間。午後三時頃には帰宅の途につかねばならない。結局、私とマーくんが遭難したことでスケジュールは台無しになった。皆に謝らないといけない。特にQPには、彼氏のマーくんを巻き込んでしまったのだから念入りに謝罪しよう。各方面への謝罪を済ませて別荘に戻ってきた私は、部屋で荷物を片付けているQPに声を掛けて謝罪した。ところが――


「ちょっとQP! 許してくれとは言わないけど、謝った私に対してその態度は何?」


「分からないの? 分からないなら別にそれでもいいよ」


 いきなり拒否られた。そして部屋から自分の荷物を持って出ていくQP。何なんだよ。確かに迷惑を掛けたし、マーくんを危険な目に合わせた。本当に悪いと思ったから謝罪したのに、何が気に入らないんだ。せめて訳くらい言えよ。


 ――コンコン。


 ノックの後に神妙な顔をした麗華が入ってきた。


「アヤちゃん、今、QPちゃんが泣きながら荷物を持ってマーくんの部屋に入って行ったけど何かあったの?」


 な、泣いてた? 泣きたいのはこっちだってーの。益々意味が分からん……。


「何があったと思う?」


「いや、私がそれを聞いているんだけど」


 だって私にも何が何だか分からないんだもん。微妙な顔で返答に困っていると、麗華は呆れたように嘆息した。


「貴女ねぇ……早く仲直りしてよね。帰りの電車がお通夜とか笑えないからね?」


「あ、ソレは確かに嫌だわ〜」


「茶化さない。ホント、頼んだわよ?」


 言いたいことを言って麗華は部屋を出ていった。QPが居なくなった部屋は一人では広く、寂しく、夏なのに冷たい。 バフンとベッドにダイブして、うつ伏せて大の字になる。そういえば、昨日この別荘に来た時にもQPと二人で同じようなことをしたな。昨日の出来事なのに、なんだか遠い日のように思う。うつ伏せ状態から横を向いた視線の先には、主の居なくなった空っぽのベッドが哀愁を漂わせていた。


「マーくんの所に行ったって事は、彼には相談出来ないな。後藤さんと夏美さんはいい人なんだけど、あっち側の人間だし、かと言って麗華や桜に相談するのもなぁ……。積んだわコレ。せめて糸尾がいれば……」


 結局、お昼ご飯の声が掛かるまでの間、悶々とベッドの上で空回りする思考を無益に繰り返していた。QPとどう向き合おうかと考えながら食堂に行くが、QPとマーくんは二人で部屋で食べるとのことで、顔を合わせることは無かった。その事になぜかホッとする自分がいた。それが無性に遣る瀬無かった。


「真夜先輩、マーくんさんとラブラブですね。いいなぁ」


 何も知らない桜が、脳天気なことを言うのが癪に障る。いや、落ち着け私。桜は何も悪くない。そして、麗華が心配そうに私を見てくる。「ちゃんとやれよ!」との圧が凄い。わ、分かってるってば……。急いで食べ終えて食器を洗う。


「ごちそうさまでした、夏美さん」


「はいよ、お粗末さま。ん〜、アンタひどい顔だね。まだ疲れが取れていないのかい? 外を少し散歩してくるといいよ」


「……そうですね。ちょっと外の空気を吸ってきます」


 夏美さんに力なく笑い掛け、私は別荘を出て広場に出た。

 朝方まで雨が降っていたというのに夏の日差しは相変わらず強く、蝉の声がやけに耳に残る。それでも山の中特有の涼しさを感じた。標高が高いからだろうか?

 私は広場を横断し、自動販売機で“午前の抹茶”を買ってベンチに座った。嫌なこと全てを呑み干すように、一気にペットボトルを煽る。それでも何一つ収まることはなく、空になったペットボトルをゴミ箱に投げ捨てた。私は再びベンチに座り、背もたれに体重をかけて空を仰いだ。


「どうすればいいんだよ。誰か教えてよ……」


 弱気になり、自然と目に涙が浮かぶ。


 ――ガコン。


「どうかしましたか?」


 何かが転がり落ちる音に遅れて予期せぬ声掛けに慌てる。

 目頭を手で拭って声のした方、自動販売機を見ると、私に背を向けて飲み物を拾い上げている斎藤さんがいた。 彼は手にした缶コーヒーのリングを起こして一口飲んだ。


「おじさんでよければ話くらいは聞いてあげるよ」


「斎藤さん……いや、今朝も助けて頂いたし、これ以上の迷惑は……」


「何言ってるんだい。子供が遠慮することは無いよ。それに“袖すり合うも他生の縁”とも言うじゃないか」


 先ほど拭ったばかりの涙が再び込み上げてきた。まだ私に救いはあるの?

 たまたま隣の別荘に来ていただけの赤の他人。信用や信頼なんて無いに等しい。それでも救いの手が伸ばされたのだ。それを取るしか私には選択肢が無かった。


「実は、一緒に来ていた友達と――」

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