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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第九話 疑心暗鬼のオブソーバー

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疑心暗鬼のオブソーバー Bパート

「アヤちゃん……なんで……」


一瞬の静寂と空白。 微かなQPのか細い声が私の鼓膜を震わせる。トクンと心臓が跳ねた。なんだろう、この感じ……。彼女の顔は相変わらず逆光でよく見えない。麗華と斎藤さんは「捜索隊が結成される前に見つかって良かった」と言いながら、どこかに電話を掛けている。


「……なんでって?」


私の口から、まるで独り言のように掠れた声が漏れる。喉がカラカラで唾液が粘度を高め、口腔内に絡みつく。 私とQPの間に精神的なしじまが形成された。お互いがお互いの言葉を待つように、切っ掛けを待つように……。


「ハァハァ、あ、操乃、せんぱ〜い。生きて……ます、かぁー」


それを破ったのは桜の声だった。私はハッとして、息も絶え絶えの桜が洞窟入口でへたり込むのを見る。時間にして僅か数秒のやり取り。それでもとても長く感じて居心地が悪かった。


「? 何か、あったん……ですか?」


不自然さを感じたのか、桜は汗を首にかけたタオルで拭きつつ息を整えながら聞いてきた。 何かあったのか? 私が聞きたいよ。


「……いや、何も。残念ながら私は生きてるよ」


「そ、そっかぁ、ホント残念。ムッちゃん独り占め出来ると思ったのに。なんちゃって」


私と桜の空気な会話。中身の無い空っぽの会話。私は桜と話をしながらも意識はQPに向いていた。すると――QPが無言で動き出した。私の身体に何故か緊張が走る。 彼女は私の横を通り過ぎ、私からマーくんを守るように間へと割り込んで、彼の前に座り込んだ。


「起きてー、マーくん。朝だよ〜」


「ウ~ン……あれ、真夜ちゃん? おはよう。来てくれたんだ」


「当たり前だよ。マーくんのこと、信じてるから」


QPはマーくんに寄り添い、急かすように二人は立ち上がって洞窟を出ていった。 その場に残された私はペタンと地面に座り込んだまま、見送るしかなかった。


「真夜先輩、なんだか様子がおかしくないですか?」


「ありがとね。きっとマーくんが無事で安心して緊張が解けたのと疲労だよ」


桜が私に手を差し出してきたので、それを掴んで立ち上がった。おかしい……か。確かに表面上はいつもと変わらない。でも何かが違う。私にも分かっている。でも桜には嘘を言った。曖昧に笑って誤魔化した。何故? 認めるのが怖かったから?



***



私とマーくんは無事に生還を果たした。別荘に戻った私たちは夏美さんに正座をさせられ、たっぷり一時間は説教された。後藤さんも何か言いたそうだったが、全て夏美さんに任せていたようで、傍らで傍観していた。逆にそっちの方が怖いんだけど……。 その後、隣の斎藤さんや捜索隊まで組んでくれていた自衛団の方々にも謝罪に回った。


「マーくん、ごめんね。それと助けてくれてありがとう」


私とマーくん、そして保護者として後藤さんの三人での謝罪行脚の帰り道。私は面と向かってマーくんに謝罪と感謝を述べた。


「アハハ、流石に今回は駄目かと思ったよ。でもお互い無事で良かったよ」


笑いながら謝罪を受け入れてくれたマーくんには感謝しかない。ここは一つ気になることを聞いてみよう。


「……あの、QPは何か言ってた?」


「真夜ちゃん? あの後大変だったよ。泣きながら怒ってて、ホント心配掛けちゃったね。『もうアヤちゃんには関わらないで』とか言ってたし、相当に堪えたみたいだね」


え? 今なんて?


「私と関わるなって……今一緒に歩いて喋っているけどね」


「あ、イタイ所を突かれた。まあ、そこまで深い意味では無いと思うけど……。とりあえず真夜ちゃんには黙っててね」


戯けるように「秘密秘密」と言うマーくんに、ちょっと安心感を得る。彼は本当に気が良いヤツだ。QPもいい男を捕まえたなと思う。危険な目にはあったけど、今までQP越しの付き合い程度だったマーくんとの距離は近付いた気がした。 そしてQPは彼氏のマーくんと私を同時に失う可能性に心を痛めたに違いない。様子がおかしかったのも頷ける。


「別荘に帰ったらQPにも謝らないとなぁ」



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