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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第八章 夏のアバンチュール。川の流れに身を任せ

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38/60

夏のアバンチュール。川の流れに身を任せ Cパート

「何か分からないことがあれば遠慮なくお尋ねください」


 青々とした木々に囲まれた別荘村。マーくんのお父さんは、そんな建売の別荘を購入したらしい。

 管理人の後藤さんは、もともとマーくんのお父さんが経営する会社の役員だったが、病気でリタイア。養生ついでに管理人を任され、今では体調も安定しているそうだ。


 そんな後藤さんが玄関先で誰かと話をしていた。


「おや、大勢のお嬢さん方がいらっしゃるのですね」


 階段を降りてきた私たち四人を見て、眼鏡のブリッジを押さえた男性が朗らかに告げた。誰がお嬢さんだよ。


「え……あの、こんにちは」


「はい、こんにちは。隣に三日ほど滞在しますのでよろしくお願いします」


「こちらの斎藤さんは、奥さんと小さなお子さんの三人で来られたそうです。仲良くしてあげてください」


 いきなり声を掛けられて焦ったけど、わざわざ否定するのも何なので、そこはスルーして挨拶をする。ニコニコと人の良さそうな男性だ。

 なんでも、隣の別荘は斎藤さんの勤める会社の福利厚生施設で、今年初めて利用するとのこと。そんな使い方もあるんだね。


 斎藤さんが帰った後、私たちは食堂で夏美さんの作ったお昼ご飯を食べながら午後の予定を話し合っていた。


「もしよかったら、近くの川で魚釣りをしたらどうだい? 晩御飯の一品を取ってきておくれよ」


 色々と案は出たが、まとまらない私たちを見かねた夏美さんからのクエストオーダー。


「釣りかぁ。私やったことないんだけど、みんなは?」


 私の問いに女子全員が首を振る。そりゃそうだよね。釣り女子って動画サイトでは見かけるけど、高校生で釣りしてる女子ってあまり聞かない。


「僕は毎年ここの川で釣りしているよ」


「あ、そういえばムっちゃんと釣り堀には行きましたよ。私は見ていただけですけど」


 ふむふむ。マーくんは経験者、と。桜……その情報、何の意味があるん?


「折角だから私は釣りをしたいわね。知らなかった事を経験すると人生が豊かになるじゃない」


「おお、哲学〜。なら私も!」


 麗華の提案に桜が応えた。なるほど、そうやって経験値を積むことでレベルアップしていくのか。ゲームみたいだな。糸尾にイイ女になると宣言した以上、私も貪欲に経験値を積むべきか?

 私とQPは顔を見合わせ、互いに苦笑いして了承した。しかし参ったなぁ。生きている魚とか怖くて触れないんだけど……。


 釣具は五セットちょうどあり、私たちはそれを借りて別荘を出た。


「おや、釣りですか。そういえば近くに渓流があると聞いてましたけど、何が釣れるのですか?」


「ヤマメが釣れます。魚影が濃くていい釣り場みたいですよ」


 隣の別荘前でバーベキューをしていた斎藤さんが声を掛けてきて、マーくんが対応している。奥さんらしき女性がペコリと小さく会釈し、小さな女の子が「コンニチワー」と笑顔で言ってきた。可愛くてほっこりする。


「なるほど、なるほど。丸石は浮石になっていてグラつくので、上に乗る時は気を付けてくださいね。行ってらっしゃい」


 よく分からんが、要は足元注意ってことね。任せといて!

 私たちは女の子に手を振り、斎藤さんの見送りのもと川へと向かった。


「そういえば、来る途中で車の中から見かけた滝ってもしかして?」


「ああ、そうそう。今から行くのは同じ川の上流だよ」


 ふと思い出して聞いてみると、やっぱり同じ川だったのか。間違って流されたら滝を真っ逆さま? ヤバすぎんでしょ!


「QP……川に落ちないようにしろよ?」


「いや、このメンバーで一番やらかしそうなのはアヤちゃんだから」


 QPの返しに皆がウンウンと頷きながら爆笑する。え、これって何のフラグ?


「押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ!」


「それ押してってサインてすよね?」


 悪ふざけしているとマーくんに「そろそろポイントだから静かにしてね」と言われて息を潜める。スマン。

 なんでもヤマメって魚は音や影に敏感で、人の気配を察すると隠れて出てこなくなるらしい。

 しばらく歩いていると、水の流れる音が聞こえ出し、森林の香りの中に水の匂いも混じりだした。そして木々を抜けた先には、日差しに煌めく渓流が。


「(よーし、沢山釣って夏美さんを驚かせてやろうか)」


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