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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第八章 夏のアバンチュール。川の流れに身を任せ

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37/60

夏のアバンチュール。川の流れに身を任せ Bパート

「――絶景かな、絶景かな!」


 新緑と木漏れ日が目まぐるしく流れ行くワインディングロード。その先に見える渓谷の滝壺は群青色に染まり、舞い上がる水飛沫が七色の光を描き出す。私たちを乗せて走るミニバンは、夏の風景の一部として完全に溶け込んでいた。


「アヤちゃん、それ誰の台詞か知ってるの?」


「えっと……昔の偉い人?」


 QPの問い掛けに、私の脳みそがフル回転する間もなくアッサリと答える。だって知らないんだから時間の無駄じゃん。


「確かにその台詞は有名ですけど、誰が言ったかは知りませんね」


 ほら、今年首席入学の桜でさえ知らない。世の中そんなもんだ。QPもウンウンと頷いている。ってか、突っ込んできたお前も知らんのかい!

 私、QP、桜の視線は我らが副生徒会長・麗華に向くが、ニッコリ笑って首を左右に振った。結局は誰の台詞なん?


「たしか、歌舞伎での石川五右衛門の名台詞ですね。今の若い子には馴染みが無いでしょう」


「そうなんだ、僕も知らなかったよ。さすが後藤さんは物知りですね」


 運転席から白髪交じりのおじさんが答えを教えてくれた。助手席に座るのはマーくん。彼の家が所有する別荘の管理人である後藤さんだ。


 夏休みに一泊で遊びに行こうと計画を立てた私たち。結局はQPの提案に乗ってマーくんの家の別荘を借りることになった。 決め手は――圧倒的なコスパだ!


「それにしてもタダで別荘に泊まれるなんてね。マーくん様々だよ。ありがとねー」


「本当にね。それに、お料理も用意してもらえるなんて贅沢よね」


「あはは。小さい別荘だから必要以上に期待しないでね」


「女房の料理がお口に合えばいいんですが」


 そう、これが決め手になった。私と麗華が言っているとおり、宿泊費無料、更に食費を払うだけで料理も出る。学生である事を考えると最良のプランだ。思わず顔が笑顔で綻ぶってもんよ。

 糸尾と高橋は部活に専念するとのことで不参加。その分、私たちが思いっきり楽しんで、思い出話をタップリと聞かせてやろう。


 私たちはマーくんと共に最寄り駅まで電車で移動した。そして、駅で出迎えてくれたのが後藤さん。現在、後藤さんの運転するミニバンで別荘までの山道を優雅にドライブ中。うん、ちょっとセレブ気分。


 キャッキャウフフと話が弾む車内の時間はあっという間に過ぎ、ログハウス風の建物の前に車は止まった。


「着きましたよ。足元に気を付けて降りてくださいね」


「わあ、別荘だらけだ……」


 後藤さんに「ありがとうございました」と言って車を降りる。そこは鬱蒼とした木々に囲まれた広場を中心に十棟ほどの別荘が外を囲むように立っていた。広場の端には自動販売機が並ぶ小屋があり、ちょっとした物なら買えそうだ。


「こっちだよ。そこ、段差に気を付けてね」


 マーくんの先導で別荘の前まで移動すると、中からエプロン姿のおばさんが豪快な笑い声と共に出てきた。


「アハハハ。雅史くん、大きくなったねぇ。ガールフレンドをこんなに沢山連れてくるなんてねぇ」


「夏美さん、大げさだよ。去年も会ってるでしょ?」


「お、お世話になります」


「いらっしゃい。私はアレの連れ添いの夏美って言うの。何かあったら相談してね」


 随分とパワフルなおばさんが来たー! 私ら全員ガールフレンドかよ。いや、間違っては居ないか? 流石のマーくんもタジタジじゃん。

 私たち四人は圧倒されながらも揃って挨拶をした。夏美さんが顎で示した“アレ”――駐車スペースに車を入れて降りてきた後藤さんが苦笑いしている。どうやら夏美さんが、この別荘の実質的なボスらしい。


 夏美さんの案内で別荘に入る。マーくんが「二階の右側二部屋を使って」と言うので、手前を麗華と桜、奥を私とQPで使うことにして、それぞれの部屋に荷物を置いた。


「ふう、綺麗な別荘だね。うひょー、ベッドふかふか〜。マーくんってボンボンだったんだ」


 ドサッとベッドに頭からダイブする私。「お行儀悪いよ」と言いながらQPも隣のベッドにダイブしている。オマエモナー。


「ボンボンって……まあ、アタシも驚いたけど」


「後藤さんと夏美さんもいい人そうだし、いい旅行になりそうだよ。ありがとね、QP」


「そうだね、きっと楽しくなるよ。てか、ベッドで真っ昼間から寝そべってする話じゃないよね」


「確かに! だがそれがイイ!」


「意味わかんないよ〜」


 二人で大笑いしていると、ドアをノックする音が聞こえた。麗華と桜が迎えに来たらしい。返事を返してQPにニヤリと笑いかける。


「んじゃ、マーくんも待っているだろうし、下に降りよっか」

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