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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第八章 夏のアバンチュール。川の流れに身を任せ

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36/60

夏のアバンチュール。川の流れに身を任せ Aパート

今回は、夏の山へ遊びに行く回になります。

川の音って、どうしてあんなに心をゆるませるんでしょうね。

普段なら何でもない一瞬も、ちょっと特別に見えてしまう――

そんな“流れ”に身を任せたくなる場面も、夏にはあります。


もちろん自然の中なので、思ったとおりにいかないことも起きます。

どんな形で波が立つかは、読んでからのお楽しみ。

夏は人も水も、予想外に動く季節です。


それでは本編へどうぞ。

「――久具津くん、おめでとう」


 蝉の音が遠くに響く。

 最近は数が減ったと聞いていたが、まだ梅雨明け前なのに元気なものだ。


 期末テストという今期最大のミッションをやり遂げた私たちは、高校生活最後の貴重な夏休みを明日に控えていた。つまり今は、終業式の真っ只中である。


「あ、はい……アリガトウゴザイマス」


 そして私は何故か壇上に立ち、校長先生を前に緊張していた。

 喉はカラカラ、笑顔はピキピキ。場内に起こる拍手が、蝉の鳴き声をかき消す。……どうしてこうなった!



***



 明日から夏休み。私とQPと麗華の三人は、終業式までの待機時間をまったり過ごしていた。


「どうせなら泊まりがけでどこか遊びに行かない?」


「そうね。本格的な受験勉強の前に羽を伸ばしたいわ」


「あ! それなら――」


「久具津さん、ちょっといい?」


 QPが何か提案しようとしたタイミングで声を掛けられた。文芸部顧問の鈴木先生が、なぜか私のクラスに現れたのだ。


「なんですか? 新部長の件なら先日決まって――」


「違うわよ。あなた、今日の終業式で表彰されるからよろしくね」


「……はい?」 


 年度末に文芸部で出した会報誌。なんと鈴木先生は、私が書いた「スマホDEマリオネット」での体験を元にした話を、了承もなく高校文芸大会に応募していたらしい。

 おいおい、なんてことをしてくれてんだ!


 さらに何がどう転んだのか、その作品は佳作に入り、終業式で賞状を授与されることになったという。勘弁してくださいよ……。



***



 小恥ずかしさに顔が火照り、俯きながら急いで壇上を降りようとした際、階段を少し踏み外しそうになったのは内緒だ。


 顔を真っ赤にしてクラスの列に戻る途中、隣クラスの糸尾と目が合った。驚きと困惑が入り交じった「え、お前が表彰?」と言いたげな表情。うん、私も自覚しているよ。


 そんなこんなで羞恥プレイな終業式だったが、それ以外は滞りなく終わった。


「操乃先生、受賞の感想をお願いします!」


 ――とマイクを突き出すような仕草で茶化してくるQPを肘で小突きつつ各々のクラスへ戻り、無事にホームルームを終えて、今期の学校生活は終了した。



***



 梅雨明け間近の陽気。燦々とした日差しの下、QPと肩を並べて校門へ向かう。麗華は生徒会で用事、高橋と糸尾は部活だ。


「よ、桜。今帰りか?」


「操乃先輩、真夜先輩」


 校門付近で春風桜と遭遇。最近は特に意識することなく、先輩後輩の関係を続けている。


 女子三人揃えば話も弾む。話題は夏休みの課題についてだったが、ふとQPが思い出したように切り出した。


「そういえば、終業式前に話してた夏休みに皆で遊びに行くって話」


「ああ、鈴木先生が乱入して有耶無耶になったんだっけ」


「先輩たち受験生でしょ? 余裕ですね」


「桜〜、要らないことを思い出させるなよ。高校生活最後の夏休みなんだから、少しくらいは問題ない!」


「一泊くらいで遊びに行きたいねって話してたんだけど、桜ちゃんも一緒に行く?」


「む、むむむ、ムっちゃんも来るんですか!」


 おおう、すごい食いつきだ。だが残念。


「いや、どうだろ……高橋と糸尾は部活優先するんじゃね?」


「後で聞いてみるね。麗華ちゃんは確定だね」


「私は構いませんが、女子だけですか? ちょっと不安ですよね」


 確かに一理ある。一般ピーポーの私やQPはともかく、普通に美人や美少女の枠に入る麗華と桜は要注意だ。特に夏は陽気で気分が解放された不届者が引く手数多の状態なのだ。知らんけど……


「そこで提案があります!」


 シュタ!っとQPが我が意を得たりと手を挙げる。

 思わず桜と顔を見合わせる。桜は「どうすればいいんですか?」と無言で問いかけてくる。あ、なんか不安になってきたぞ……。


「皆でマーくんの家の別荘に行きませんか?」

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