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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第七話 すぷらっしゅ・いん・ぐらす

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すぷらっしゅ・いん・ぐらす Aパート

第七話「すぷらっしゅ・いん・ぐらす」をお読みいただきありがとうございます。

今回は、糸尾と高橋がサッカー部の試合に臨みます。

常時、観客スタンドからの綾乃視点で終止するスポ根ものとは一線を画すストーリー展開をお楽しみください。

「試合って何時からだっけ?」


 校庭の紫陽花に残った雫が朝日を反射して、スパンコールみたいに煌めいている。昨夜まで降っていた雨も今日は小休止らしい。校庭を歩く私たちの足元は、連日の雨でまだ頼りない。


 今日はサッカー部の試合のために、学校挙げての大応援団を乗せたバスが出発したところだ。


「十時二十分ね。この車の流れなら間に合いそう」


 私の問いに麗華が腕時計をちらりと見て応えた。授業が潰れるのは正直うれしい。サッカー部には、このまま勝ち進んでほしい。


「インハイ県大会の準決勝だっけ。マーくんの学校はどうだったの?」


 尋ねると、QPはあっけらかんと笑った。


「マーくんトコは地区予選の二回戦で負けちゃったよ。それで引退したから“会える時間が増える”って喜んでた」


 しまった。そういえば一か月前にもこの惚気を聞いた気がする。


「はいはい、ご馳走様。麗華、負けたら高橋と時間つくれるらしいぞ」


 ニヤニヤしながら麗華に話を振ると、意外にも苦笑いで否定された。


「多分……無理じゃないかな。おそらく選手権まで引っ張ると思うわよ」


 ふーん。選手権がいつだか知らないけど、こっちもこっちで大変そうだ。糸尾もその選手権ってやつが終わるまで部活続けるのか……。大学受験、大丈夫か?


 三年生はそろそろ受験を本気で考えなきゃいけない時期だ。応援のためにバスに乗り込んだ三年生は三分の一ほどで、残りは学校に残って自習を選んだらしい。


 しばらく走ると、バスは競技場の駐車場へ入った。我が県では、県大会の準決勝と決勝の三試合だけ、この立派な競技場を使うらしい。


「湿度高いね。暑くなりそう……」


 黒いアスファルトは朝日にハレーションを起こし、水たまりがあちこちに点在し、それを避けながら歩く。


「この競技場って芝生なんだよね。サッカー部の皆も大変だね」


「芝生だと大変って?」


 QP曰く、雨上がりの芝生はよく滑るらしい。それに反比例するようにボールの転がりは一気に悪くなるんだとか。


「普段と違う環境で、誰も怪我しないといいんだけど」


 麗華はサッカー部――主に高橋――を心配しているようだ。サッカーってそんなに怪我するスポーツなの?


「私、試合見るの初めてなんだよね。サッカーってそんな激しいの?」


「激しいわよ。高橋くん、足なんて傷だらけだって言ってたし」


「イギリス発祥なのに、ぜんぜん紳士的じゃないよねー」


「ラグビーもね」


 QPと麗華が笑いながら繰り広げる会話についていけない。やっぱりサッカー部に彼氏がいる女は詳しいのか。  ……あれ。私にも一時的とはいえサッカー部の彼氏がいたような……。  こういうところが、私の駄目なところなんだろう。


 そんな話を続けながら競技場に入った。スタンドは思っていた以上に高く、見渡す青い芝生は日差しを受けて乱反射している。


 サッカー部はすでにフィールドでウォーミングアップ中で、ボールの転がり具合を確かめているらしい。水しぶきを上げて転がり、途中で急減速するボールにみんな困惑しているのが遠目にもわかる。話に聞いていたより、ずっと転がらない。


「普段と違う環境に慣れたほうが有利になりそうね」


 麗華が思案気に言い、ベンチの水滴をタオルで拭いて腰を下ろす。あ、私にもタオル貸して。


 太陽はますます高くなり、湿度と合わせて不快指数はうなぎ上りだ。サッカー部はベンチに戻ってミーティングを始めている。そろそろ試合が始まるらしい。


 審判たちが姿を見せ、短く笛を鳴らす。選手たちは一斉に中央へ整列し、「お願いします」と挨拶をして、それぞれのポジションへ散っていった。……あれ?


「糸尾、いないじゃん」

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