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QPと恋するマリオネット  作者: ましだたけし
第四話 春爛漫。桜吹雪は嵐の予感

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17/30

春爛漫。桜吹雪は嵐の予感 Bパート

「へっぷしっ!」


 春の天気が変わりやすい。突然の春の嵐で桜の花もかなり散ったらしいが、世の中はそんなことなどお構いなしに通常進行、発車オーライ。我が校も本日めでたく入学式が滞りなく行われ……ているはず。


「チーン……」


 入学式には新一年生が当然参加するのだが、我が校の場合、在校生として三年生も出席する……らしい。

 さっきからまるで他人事のように語っている私は、本日風邪で休学中だ。


 三日前、突然の天候悪化で雨に打たれたせいで、濡れ鼠になりながら急いで帰宅。その翌日には見事に発熱。二日ほど寝込んで、今ではかなり持ち直しているのだが、入学式は安全を取ってお休みさせていただいた。そう、ズル休みでは断じてないのだ!


 とはいえ体調はかなり戻っているので、ベッドの中でゴロゴロしていてもすることがなく、退屈を持て余し始めた。

 もちろん、令和の若者は天井の染みや板目を数えたりはしない。現代っ子はスマホで動画サイトを見て暇をつぶすのだ。


 そういえば、約半年前に謎のガジェットをポチったのも、動画サイトを見ている時だった。


「そういえば、あれ以降広告を見かけたことがないな。まあいっか――お、いつの間にかお昼過ぎてるじゃん」


 スマホに表示された時刻はとっくに正午を回っていた。もぞもぞとベッドから抜け出した私は、大きく伸びをして、ティッシュでいっぱいになったゴミ箱を抱えて一階へ降りる。


 無人のリビングにある大きなゴミ箱にゴミを追加する。お母さんはパートに出ており、一人っきりの家はやけに広く感じる。同時に静けさが孤独を意識させて、胸が少しキュンとする。必要以上に独り言が大きくなるのは、仕方ないよね。


「さ〜て、今日は何を作ろうかな」


 春休みの間に覚えたこと。それは、料理サイトでレシピと手順をコピペしてスマホDEマリオネットに送信すれば、比較的簡単な料理なら私でも作れるということ。まさに大発見だった。


 冷蔵庫を覗き込み、使える食材を確認する。ハムと卵に溶けるチーズ……あとはトーストが残っているな。私は頭に“あの”受信アンテナを装着し、スマホDEマリオネットを起動した。

 半年前にポチった謎のガジェット――いまだに正体不明のままだ。


「おお、美味しそうなホットサンドができた!」


 何度かこの調子で作っていけば、いずれスマホDEマリオネットを使わなくても、ちょっとした軽食くらいなら自力で作れるようになるかもしれない。


 そうだよ、スマホDEマリオネットが何なのかなんて、どうでもいいことだ。確かに不安はあるけれど、便利に使えるところは使っても大丈夫だよね?


 お昼を食べ終えて、使ったお皿や卵焼き器を洗っているとピポピポーンと玄関のチャイムが鳴る。この独特のチャイムの押し方はQPだな。いそいそと濡れた手をタオルで拭いて玄関に向かう。


「お、アヤちゃん、顔色がだいぶ良くなったね」


「おかげさまで。少しくしゃみと鼻水は残ってるけど、明日は大丈夫だよ」


 チラリとQPの後ろを肩越しに見越す。


「……」


「なになに、誰か他に来てると思った?」


 目が合ったQPがムフフとしながらからかってくる。イヤラしいヤツめ。


「……別にそんなことはないし」


「ふ〜ん、そうそう。はい、これプリントね。アヤちゃんはアタシと同じクラスだったよ。あと麗華ちゃんと高橋くんも」


「……糸尾は?」


「あはは、やっぱ気になるんだ〜」


「うっさいなあ。いいじゃん、一応は付き合ってるわけだし……」


「そうだね。でも残念。糸尾くんは別のクラスになったよ」


「マジかぁ。アイツ泣いてなかった?」


「泣いてた、泣いてた」


 二人で思わず噴き出す。糸尾のことは残念だったけど、高校生活最後の一年を何事もなく楽しく過ごせるといいなぁ。


「明日、登校したら糸尾を慰めてやるか〜」

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