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30.ぜんぶ葉っぱのせいだ


「ああっ、マーカス! 私のマーカス! よく無事で!!」

「アルマ……、アルマなんだな? ああ、良かった。本当に良かった」


 無事に村に戻った子どもたちが、両親の胸に飛びついていきます。

 マリウスたち孤児院の子どもたちは、そんな家族の再会をじっと見つめていました。


 親を持たない彼らがどんな気持ちでその光景を見ていたのか、私では想像もつきません。

 修道女モナリスのひとりとして私にできることは、彼らの小さく震える心を包んであげることだけ。


 私は、ほかの修道女モナリスと共にマリウスたちの前に立ち、両手を広げて彼らを出迎えます。


「おかえりなさい。怪我はしてない? 怖かったでしょう?」


 それまでの緊張が解けたのでしょう。

 子どもたちは、それぞれに修道女モナリスの元へと飛び込んでいきます。


「わああぁぁぁん!」

「怖かったよぉ、怖かったよぉ」

「ぐすっ……、ううぅぅぅ」


 子どもたちの背中を優しくさすりながら顔をあげると、マリウスは少し気恥ずかしそうに立っていました。

 ほかの子どもたちに比べれば、彼はやや年上ということもありますし、男の子ということもあるのでしょう。


「ほら、マリウスも」


 手招きすると、マリウスはおずおずと近寄ってきました。

 とても素直ないい子です。


 頭を撫でると、彼は「へへっ」と嬉しそうに口角を上げました。

 その目頭に、少しだけ涙があふれています。

 やはり彼なりに気を張っていたのでしょう。


「あれ? ザンマお兄ちゃんは?」

「え?」


 そういえば、いませんね。


 カルナをはじめとした神殿騎士団が出発した後、私たち修道女モナリスは村の皆さんといっしょに教会で祈りを捧げていました。彼も一緒にいるものだと思っていましたが……、よくよく考えてみると、礼拝所では彼の姿を見なかった気がします。


 もしかして。


「マリウス!」

「ザンマお兄ちゃん!」


 タイミングよく背後から現れたザンマの元に、マリウスが駆け寄っていきます。


「無事で良かった。本当に良かった」

「あははは。いたい、いたいよ。ザンマお兄ちゃん」


 強く抱きしめ合う、ふたりの男の子。



 私は見てしまいました。

 ザンマのズボンの裾に土汚れと、“葉っぱ”がついているのを。

 あの葉は、裏の林にある木のもの。


 彼が先ほどまで林にいたことは間違いありません。


 とすれば、やはり……。



Θ  Θ  Θ  Θ  Θ



 夜。村人たちからの歓待を「感謝は神へ。全ては神の思し召しですから」と断ったカルナは、じっと山を見つめていた。


「コカトリスに続いて、カンタリスまで人里へと降りてきた」


 どちらも山の奥地にナワバリを持つ。

 だが、カンタリスの方がやや手前、村に近い。


 つまり、こちらに近づいてきているということ。


「もうあまり時間は残されていないみたいだね」


 目を閉じて、再び確かめる。

 結果は変わらない。


 このモンスター災害を乗り越える鍵はザンマという少年。

 勝てる確率は、高く見積もって五分。


 ザンマを連れて魔の森へと入ったあの日。


『村を守れるかどうかは君にかかってる』


 そう伝えたとき、彼の顔が少しだけ引き締まった。

 大切な人を守る覚悟を決めた人間の目をしていた。


 カルナは両手を組んで、神に祈りを捧げる。


「きっと大丈夫。私たちなら、きっと。……神の御加護があらんことを」


 祈りの言葉は静かに夜の静寂へと溶け、山の向こうから生ぬるい風が吹いた。

 それは、嵐を予感させる湿った風だった。



カクヨムにて先読み更新中

→https://kakuyomu.jp/works/16818792437653682620

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