ハッピーエンドの作り方、募集中。
溺愛系兄×転生モブ妹(主人公)のお話。
そんな長くないです。
よろしくお願い致します。
転生したらヒロインでした!
全てがまるで私を中心に回っているかのよう。
紆余曲折あれど、最後は大団円のハッピーエンド。
めでたしめでたし。
……なんて夢物語を私もちょっとだけ信じてた。
*****
「に、兄様?」
後ずさる私の背には壁。
前方には、口元こそ笑っているものの、目だけは少しも笑っていない兄リアン。
この部屋には窓もない。
唯一の脱出口は、リアンの背後。
私の足でリアンから逃げ切れる可能性はほぼゼロ。
つまり……
“詰んだ“というやつです。
「ね、アリア。どうして何度言っても分かってくれないのかな?」
(また……その話だ)
“俺から離れてはダメ”
“ずっとそばにいてね”
そんな言葉を、幼い頃から何度も繰り返し言い聞かされてきた。
じっと見つめてくるリアンの視線が刺さるようで、私は思わず顔を逸らした。
けれど、リアンはそれを許してくれるほど優しくはない。
大きな手がそっと私の頬に添えられ、導かれるようにして視線が合わされた。
逃げたくても、逃げられない。
体はまるで氷のように強張って、ピクリとも動かせなかった。
息をすることさえ、ためらわれる。
空気が張り詰めて、飲み込まれそうになる。
透き通るターコイズブルーの瞳に絡め取られ、心の奥まで覗かれているようで──
どうしようもなく、息が詰まりそうだった。
「ある程度のことは許容してきたけれど、俺から離れるのは駄目でしょう? 俺がどれだけアリアを大事に」
「兄様、聞いて──!!」
言い訳がましく聞こえるかも知れないけれどここで何も言わなかったら何だか大変なことになる気がして私は口を挟んだ。
「うん、聞いてるよ」
優しい笑顔。
だけど──やっぱり、目だけは笑っていなかった。
兄なのに、怖いと思ってしまった。
胸がざわめいて落ち着かない。
「俺も、ずっとそう思ってた。……アリアは“閉じ込めるしかない”って」
「──……はい?」
*****
嗚呼、神様。作家様。
全て上手くいって、ハッピーエンドに……なんて、
やっぱり、物語の主要キャラクターじゃない私には無理だったの?
……ていうか、そもそもどうして?
ヒロインの性別が“男性”になっちゃうなんて聞いたことない。
そして今──兄に監禁されかけてる私は、どうすればいいの?
……ねえ、誰か。
ハッピーエンドの作り方、知りませんか?