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俺の戦国はこれからだ!

 伊那加城を見ながら、俺は出陣の鬨を上げる。


 え?見ながらって何だよって疑問が湧いてきそうだが、そんなもんだよ。だって数キロ程度しか離れていないんだから。


 世の交通手段は基本的に歩きであり、馬を使うのはよほどの金持ちか相応の武士くらい。今や支城としての機能が何とか保たれた程度の弩伊那加館で生活している我らが喜多家にそんな余裕は存在しない。


 そのため、小高い丘の上にある館から見える伊那加城を見ながらとなる事に何の不思議も無いんだ。


 そして、18人でゾロゾロと伊那加城を目指して歩き始めた。


 妖鎧というパワードスーツは万能という訳ではなく、活動時間はせいぜい2時間程度のため、常に展装状態を保つことは出来ない。

 体内の妖気を用いて稼働するパワードスーツだから個人差が大きいとはいえ、平均して2時間、別名「一刻鎧」と言う。その事を知ったのは転生後の話で、ゲーム上は交戦時間は15分ほどだったと思う。

 まあ、史実志向の人たちから嫌われた原因として、陣取り主体の戦略ゲームではなく、会敵して自ら戦闘を行う格ゲーだったこともあるかも知れない。


 そう言った世界観のため、戦国時代と銘打ってはいるが、やっている内容は源平頃の一騎打ちやら個人戦の色合いが濃く、ニワカ海外勢をメインターゲットにしているともいわれていた。


 現実となった今、パワードスーツの膂力を前提とした個人技を主体とした戦いが志向され、槍兵による集団戦という発想は存在していない。

 規模が大きくなればそう言う通常の戦いをしながら、ここぞという決戦場に妖鎧武者を投じるのかもしれないが、この周辺地域に数百の兵を集めて合戦に臨むレベルの勢力は、喜多家しか存在しなかった。


 現状では加田が城こそ支配したが、弩伊那加館すら攻めて来れない様に、周辺勢力の掌握にまで手は回っていないという事だろう。


 となれば、個人戦力が決め手となる。


 その個人戦力という点で言えば、太川親子は突出している様で、加田はこのふたりを相手に戦おうとまでは考えていなかったらしい。

 だって、展装した鎧には一般兵の槍や矢は通用しない。蹴散らされてしまえばそれまで。指揮官たるモブ妖鎧を倒されれば逃げ散る事になってしまう。


 加田という家老は、政治力も武力も並、たまたま運が良かっただけと言われているそうだから、よくゲーム時点で伊那加の領主に収まっていたもんだ。


「家久様、きこーしだんとはどういう意味ですか?」


 遠足の途中で美少年からそんな疑問を投げかけられた。


 きこーしだんとは、輝鋼士団のことだ。出陣に際し、その様に名乗った。


「輝鋼の太刀を持った俺たちの事だよ。輝鋼士って呼んだらカッコよくないか?」


 そう応えると、美少年がキラキラした顔で俺を見つめてくる。いや~、この娘にツイてなくて良かった!


 数キロという近さもあって、ワイワイ騒いでいれば、目の前に伊那加城である。


 門まで進み、イケメンが声を張り上げる。


「我は太川久貴!殿のお帰りである。門を開けよ」


 いや、何言ってんだ?あのイケメン。門兵が年頃の女の子ならば、素直に開けるのかもしれないが、相手はおっさんだぞ。


「殿は既に城におわす。太川殿は喜多の幼君と逃げたのではなかったかな?」


 しばらくして櫓の上からそんな声が聞こえてくる。どう見ても知らん顔だ。まあ、俺がこの城の連中の顔を知る訳がないがな。


「お前ごときが俺に口を利くか。妖鎧展装!」


 イケメンはその男を見上げて展装したかと思うと、目にもとまらぬ速さで居合をかましやがった。


 輝鋼剣の一振りで大手門は真っ二つである。


「御託を並べる暇があるなら門を開けよ!」


 いや、言う前に斬ったよな?


 イケメンは捨て台詞を残してスタスタと役目をなさなくなった大手門を抜け、城内へと歩いていく。それに続く俺たちも仕方なく展装した。


「待たれよ!」


 慌てて櫓を駆け下りた先ほどの人物が俺たちを止める。


「立ちふさがるなら斬るぞ?」


 修羅がそう声を上げる。


「貴直様まで・・・・・・」


 立ち尽くす人物を捨ておいて、俺たちはどんどん進んでいく。俺以外には慣れ親しんだ城なので、その歩みに迷いはなかった。


「妖鎧展装!」


 忠実な家臣なのだろう。イケメンや修羅と知ってなお、立ち向かう剛の者が居るんだなと眺めているうちに戦いは終わった。

 鎧ごと真っ二つになった武者だが、装着者が死ぬと鎧は呪符に戻るらしい。なんかゲーム設定そのまんまだな。アレを拾えば無傷な鎧が手に入るんだ。現実で真っ二つの死体を見た後、呪符を拾って試そうとは思わんが。


 伊那加に名をとどろかせる太川親子の乱入とあって、加田勢は及び腰。そもそも防戦の準備すら皆無だったらしく、あっという間に本丸まで攻め上がることが出来た。


 本丸には政務を行う屋敷が建っており、ちょこんと小さな石垣の上に見える櫓こそが天守である。間近で見たら本当に小さいのだが、遠目に見ればものすごく立派なんだ。どんな錯覚を利用しているのだろうか。


「何事ですかな、太川殿?」


 展装武者相手に肝の据わった対応を見せる悪代官。ゲームの加田はコイツじゃない。もっと商人風な人物だった。


「おお、蓮姫か!」


 突如、何かに思い至ったようにそんな事をイケメンに叫ぶ悪代官。


「その通りだ、加田」


 イケメンもそれに応じている。いや、どうなってんの?


「それはそれは。ではこちらへ」


 と、ニコニコ促す悪代官。


「おい、久貴!」


 俺はそんな声を上げる。


「殿、私は加田から常々蓮姫を娶れと申し出を受けておったのですよ」


 と、加田の方へと歩み寄るイケメン。


「ハッハッ、これで幼君も終わりですなぁ」


 と愉悦そうな悪代官。


「殿は殿だぞ?加田。私は蓮姫と興じながら殿に後ろから!」


 いや、ダメだわコイツ。ここまでぶっ壊れてるとは思わなんだ。しかも、お前が受けかよ!マジ無理。もげろ。


「な、なにを行っておるのだ?太川殿?」


 そりゃ、悪代官もびっくりだわ。自身の特殊性癖を公衆の面前でバラすんだもの。


「加田。少々殿の相手をしてもらおうか」


 イマイチ意味不明な展開について行けない俺。


「ほれ、妖鎧展装だ」


 そう言って悪代官を蹴り飛ばすイケメン。もはや意味が分からんが、悪代官は俺の面前まで吹っ飛んできた。死んでねぇよな?


「図ったな!太川ぁ~!!妖鎧展装」


 お、生きてる。かなりの活の良さだ。


「かくなる上は、幼君を討ってお前らの大義を」


 と言いながら斬りかかって来た悪代官だったが、上段から振り下ろした刀は俺が構えた輝鋼剣によって抵抗もなく斬り飛ばされ、勢いのまま振り下ろした時には半分以上存在していなかった。気が付いていたかどうかは知らんが。


「うん、想像以上の業物だな、輝鋼剣は」


 そんな感想と共に、俺は何か感極まった顔から驚愕へと塗り替えられる悪代官の首へと刀を振りぬいた。


 その数時間後、イケメンが俺の元へと1人の美女を連れて来た。俺の腹違いの姉に当たる人物らしい。


「殿、此度の討伐、感服いたしました。つきましては今宵」


「久貴、俺には無理だ」


 言い終わる前に拒否した。


 ただの衆道すら拒否したのに、さらにオカシな性癖に付き合えなどと、誰が受けるんだ?まだ機能しないというのに。


「家久、妾は構わんぞぇ?この顔の良い久貴が受ける様を見ながらなど、至福な事よ」


 いや、アンタもおかしいのかよ!腐ってんじゃねぇよ!見知らぬ姉よ。


 俺の不思議な戦国はまだ始まったばかりだ。ケツの心配はしなくて良くなったらしいが、色々ダメな夫婦に付け狙われる心配をしなくてはならないらしいらしい。


 俺の癒しは美少年だけだな‥‥‥


 

サブタイトルの通り、始まりを迎えたので完結!


考えてみ?このテンションを維持して何万字も書くのは無理!!

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