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3/5

常識はしばしば存在しない

 驚愕の事実を前に立ち尽くす俺。


「どうされました?ほら、御手付きですよ御手付き」


 美少年に促されて御手付き・・・・・・


 はぁ?お手付きが何か、この美少年は理解しているのだろうか?俺の分身は未だ活動を始めていないので、お手付きなど無理なのだが?


「ほら、一緒に湯殿に入ればお手付きです。これで私は家久様のお子を身ごもるのですね」


 などと何やら喜びに浸っている美少年を見てしまった。ダメだコイツ、早く何とかしないと。だが、何とかするにもまだ完全体ではないのだからどうにもならん!


「安威、それは良かったな。さあ、早く体を流してくれ」


 俺は悔しさに唇を噛みながら、上気した美少年にそう告げた。


 それから数日の後、薄汚れたイケメンが戻って来た。


「殿、ご覧ください。輝鋼石ですぞ!これだけあれば館中を光り輝かせることも可能でございましょう」


 何興奮してんだ?このイケメン。


 ちょっとイケメンのテンションがヤバいのだが、相当疲れているのかもしれない。が、その収穫は大したものだった。人夫10人も率いて大量の鉱石を運んできてくれたのだ。


「凄いな、久貴。安威、妖鎧符(ようがいふ)は持っているか?」


 俺はその鉱石の量に満足し、イケメンを褒める。そして、課金アイテムに挑戦してみることにした。

 とんでもない確率のガチャになっていた輝鋼剣が果たして出るのかどうか。


 ゲームの設定では、魔法こと妖力なる物が存在し、呪符のような布にパワードスーツな鎧が収納されている。そして、武器練成もこの布を鉱石や鉄塊にかざして呪文ならぬ祝詞を唱える事で可能であった。


 とは言っても、輝鋼石は課金で何度でも買う事は可能なのだが、そこから先が問題で、練成はガチャになっていて成功確率が非常に低い。

 ここは現実世界なのだから、鍛冶師に刀を打ってもらうのではないかと思うが、まずはゲーム通りにやってみたいと思う。


「はい、持っておりますが、どうなさるのでしょうか?」


 不思議そうな美少年を呼び寄せ、俺も自分の妖鎧符を手に持ち、鉱石の山へとかざした。


「我、在らんと欲す。輝鋼の力持ち、輝き満ちて鋼の在り方超えし妖気の満ちし奉刀を」


 輝鋼剣のガチャをまわす祝詞を唱えてみた。


 すると、光を反射するかのように影ひとつない鉱石が更に輝きだすではないか。どうやらガチャをまわす事には成功したらしい。ゲームの仕様が生きている様で助かったよ。


 しばらくすると一際光を発し、まぶしくて直視できないほどに輝きだしたので目を瞑ってしまった。


「殿、御無事ですか!」


 光が収まるとすぐ、イケメンが駆けてきて・・・、なんて顔してんだこの変態野郎。助けに来た奴が鼻の下伸ばす訳ないだろ、何考えてんだ!

 顔を近づけようとしたので押し返してやった。


「何をなさりますか」


 などと言っているが、お前がな!


「安威、やってみて」


 俺は美少年に声を掛け、同じことをやるように促した。俺の行動やいきなり光輝いた鉱石に呆気に取られていたらしいが、俺の言葉に驚いて我に返ったらしい。


「・・・・・・分かりました。やります」


 そう言って妖鎧符を鉱石へと近づけ、祝詞を唱える。おや、ちゃんと聞いていたんだね。


 すると、先ほどと同じように鉱石が輝きだし、まばゆい光を放った。俺と同じようにそこにあった鉱石は崩れて小さな山をなすだけ。光も失ってしまったようだ。


「これは一体?」


 不思議そうに眺める美少年に対して俺は声を掛ける。


妖鎧展装(ようがいてんそう)してみればわかるよ」


 そういって、俺は妖鎧符を手に「妖鎧展装」と唱える。


 ゲームのエフェクトみたいな綺麗な光に包まれる事もなく妖鎧符が手を離れ、胴や手足へと纏いつき、膨れ上がる様に鎧が浮き上がっていった。光り輝くあれはゲームならではのエフェクトであるらしい。


 同じように妖鎧展装した美少年も鎧をまとった姿になっていた。


 そして、鞘から太刀を抜くと、光り輝いているではないか。どうやら成功したらしい。


「どうなっているのでしょうか?」


 同じく成功した美少年が手にした太刀を見て驚いている。


 ゲーム設定上、ここは戦国風の時代設定をされているのだが、鎧のデザインは派手さをとって大鎧風、手にする武器は大太刀である。

 時代考証という視点からは疑問が多々あれど、見た目の派手さという点ではインパクトがある訳で、史実志向のゲーマーにはウケなかったらしいが、ロボットバトル物としては一定の人気があったように思う。たぶん・・・・・・


「何と美しい」


 イケメンが俺の姿を見てそんな事を言っている訳だが、美しいのは太刀の事だと思いたいものだ。


「久貴、やってみろ」


 イケメンにも声を掛け、同じことをするように促してみたが、一つ目の鉱石は輝くことなく吹き飛んだ。どうやらガチャ失敗らしい。


「なぜだ!」


 光り輝かなかったことで失敗を悟り、残った鉱石へと取り付くあたり、コイツは依存症まっしぐらかもしれないと心配になった。


 2つ目を吹っ飛ばせばネタとして笑えたのだが、成功してしまったらしい。


「妖鎧展装!」


 イケメンがキメ台詞の様にそう唱え、金糸銀糸を纏ったカラフルな大鎧が出現し、太刀を抜く。


「おお!これはすばらしい!」


 こういう姿だけを見れば、画になるイケメンなんだがなぁ~



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