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ツイてる美少女

 それから数日。俺はなんとか動けるようになった。


「家久様、お元気になられましたね」


 ずっと側にいた美少年がいつもの様に抱き着いて来る。本当にツイてないかどうかなど確かめていない。もはやツイていたところでこの子ならば問題ない。容易く壁すら越えられそうな気がしていた。


「おお、我が殿、お元気になられましたか!」


 と、イケメンがやって来た。コイツの場合、あるなしの問題ではない。暑苦しいんだ。これであるというならどう考えても用ナシでしかない。もげろ。


「なんと慈しみのまなざし」


 などと、勘違いしているイケメン。もげてもらわなくて結構です。どうぞお引き取りください。


 これまでの数日でまったく事情の分からない俺に対して色々と教えてくれたのが、安威(あい)という名の侍女をやってくれている美少年だ。何?ややこしい?仕方がないだろう。確認していないのだから。


 イケメン久貴というウザ絡み野郎が時折邪魔をしに来て補足説明をしてくれたのはありがたかった。ウザすぎたけど。


 それら説明を総合すると、俺は島津ではない。首置いてけの父ではない事が判明した。


 ただし、ここは和風戦国異世界であり、戦国時代にパワードスーツっぽいナニカを放り込んだ世界観をした、まさしく俺がプレイしていたゲームそのものだった。


 ここまで知れると、すわ、ゲーム知識を駆使して無双してやるぜ!などと思うだろう?


 だがな、暇つぶしのニワカ勢でしかなかった俺は、この家久なるキャラを知らない。それに何より、ゲームの世界観を知ってはいるが、プレイしたキャラや敵キャラの名前をいくつか問うてみたが、二人とも知らなかった。

 まあ、侍女とポンコツならばさもありなんと、あの修羅こと久貴の父、貴直に問うてみたのだが、彼も知らなかった。


侭田(おだ)と言うのは小張(おわり)の家ですかな。それとも、越膳(えちぜん)の侭田にございましょうか?」


 といった具合に、ゲームをやり込んでいる訳でもない俺には、主要キャラの家がどちらなのかすら分からなかった。


 ちなみに、島津をモチーフにした志満都という勢力もゲームに存在したが、うちはそこではない。なにより、ゲームではほとんど舞台になりもしない南東マップの勢力に属している喜多氏である。正直、知らん。

 しかし、南東マップだとたしか、レア武器を開発可能な輝鋼石(きこうせき)の産地では無かったか?思い出せ。


「この近くに伊那加という土地があったりはしないか?」


 そう、あまりに安直すぎる田舎な名称である。


「伊那加とは、我々を追い出した加田の居城でございましょうか」


 との答えが返って来た。ちなみに、ここは弩伊那加である。エエ加減にせえや運営。適当な名前すぎるやん。


 南東マップと言う辺境、輝鋼石以外に何の魅力もなく、それすらも課金アイテムの類なので攻め取ったからと装備可能になる訳でもない。見放された田舎マップである。きっとめんどくさかったんだろうな。

 ただ、そこの武将は加田で間違いなかった気がする。輝鋼石の有用性にすら気づいていない田舎武将でとるに足らない三下。課金すればホイホイ売ってくれるので、まるでスイス、いや、資源の産地だからスウェーデンか?そんな扱いの中立地域だったように思う。


「殿、輝鋼石でしたら、私にお任せあれ」


 と、ススッと姿を現したイケメンが言う。こいつ、有能なのか?主君にアー!を求めるただの変態にしか見えんのだが。


「安威よ、これで分かったであろう?お前には輝鋼石を献上する事など出来まい」


 あ、やっぱダメだコイツ。


 そう思ったのもつかの間、さっさと部屋を後にしたイケメンだった。


 あいつが何処に向かったのかを父の方に尋ねると


「輝鋼石であれば、弩伊那加にて産しますゆえ、そう時を置かずにもってまいりましょう」


 輝鋼石はゲームにおいては課金アイテムであり、伊那加を攻めても手に入らなかったはずだ。それに、鉱石だけあっても仕方がない。そこからの刀の練成はガチャなので、輝鋼剣が完成するかは運しだい。


 あ、ここに輝鋼剣を造れる鍛冶師とか居るんだろうか?さすがにガチャ回したら刀が出現とかオカシイからね。


「家久様、太川様が輝鋼石をもって参るまでに、一度お身体を清めてはいかがでしょうか」


 と、美少年がにっこり微笑むので即答した。期待が膨らむな。


 たしか、ゲームにおいてもこの世界には風呂や温泉があった筈だ。そう思ってニコニコ美少年を伴い歩いて行くと、なんと大きな湯殿だろうか。


 何も言わずとも、美少年が艶めかしく着物を脱がせてくれた。もう、期待はうなぎのぼり、しかし完全体に程遠い部分は無反応なのだが。


「安威、お前も脱げ!」


 もはやそんなことはどうでもよく、美少年の美少年の・・・・・・


「はい、家久様」


 弾んだような喜んだ声を上げて着物を脱ぐ美少年。


「うふふ、これで私はお手付きですね」


 などとニコニコ顔で恥ずかしげもない美少年には、本当にツイてなかったよ。


 一度頭を冷やそうと、そこにあった姿見で自分の体を映してみた。今世の自分がどんなガキなのか確かめたかったのだ。


「あのイケメン野郎、こんな美少女に言い寄っていやがったのか、案件だろ・・・・・・」


 そこで知った。美少年どころではない。自分こそがツイてる事案そのものだった。こんな美少女にツイてて良い訳がない!


 アイドル事務所に写真を送れば、選考無しで通りそうな自分の容姿に興奮した。

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