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目が覚めると

 目を開けると、そこは知らない天井だった。


 何ともありきたりで申し訳ないが、そうとしか言いようがなかった。ふと横を向けば、人が座ってうたた寝している。着ている服装は着物の様だ。そして、当然の様に和風な室内の畳の上に布団が敷かれており、そこに寝かされているらしい。


 なぜこんなところに居るのか考えてみたが、全く分からない。たしか、徹夜でオンラインゲームをやっていたような記憶があるのだが、その先が思い出せない。


 もしかすると、徹夜でゲームをしながら寝落ちして夢でも見ているのだろうか?


 そう思って体を起こそうとしたのだが、身体中が痛くてうめき声しか出なかった。


「ハッ、うん?家久様?家久様!」


 うめき声で気が付いたらしい、うたた寝していた人物がそう問いかけながら飛びついて来た。そう言う趣味はないのだが、とんでもない美少年で声がかなり高い。見たところまだ十二、三才だろうか。声変わりしているかどうかくらいの年齢なのかもしれない。


「えっと‥‥‥、誰?」


 飛びつかれて痛い体を抱えられた時には何だか好いニオイまでしている。再度言うが、そう言う趣味はないのだが、この子なら好いかもしれないと思わせてくれる。


「なん・・・です・・・と・・・」


 美少年が絶望に打ちひしがれたような顔でこちらを覗き込んで来るではないか。だが、知らないのだから仕方がない。


安威(あい)をおわすれでしょうか?家久様」


 などと言って来るのだが、いや、そんな迫られても困る。三度言うが、そう言う趣味はない。この子なら好いとは思うが。


「殿がお目覚めか!」


 そんな大声と共に障子戸が壊れるかと思う勢いで開かれると、イケメンが飛び込んで来た。どこのアイドルだ?コイツ。映画かドラマの撮影?と考えてしまう様な顔ぶれに困惑しかない俺。


 そのイケメンが何者か分からず見つめていると、顔を赤らめながら迫ってきやがった。済まないが、あんたには絶対そう言った興味を持つことはない。もげろ。


「今、殿からなにか受け取ったような」


 思いが伝わったのか、イケメンは突撃を止め、驚いたような顔で俺を見つめてきやがった。


「安威よ。どうやらその方のような絶壁侍女ではなく、この私にこそご興味がおありの様だぞ」


 などと訳の分からないことを吐き出すイケメン。


「殿、やはりこの私こそ、御寵愛を賜るにふさわしい」


 まだ何か演じているイケメンを放置し、ふと美少年の顔を見上げる。「じじょ」っていうのは侍女の事であり、身分の高い者のお世話をする女の人であるはずだ。どう見ても美少年だから、宦官か男の娘かもしれない。そう言う趣味はないが、そこが好い。


「太川様はバカなのですか?毎度毎度そうやって家久様を怖がらせておいでのようですが」


 美少年がイケメンに対し呆れたような声でそう言っているが、当のイケメンはまるで動じた様子を見せていない。仕草が様になっていてどんどん嫌になってしまいそうだな、コイツ。やっぱりもげろ。


「フッ、何を言っている?お前のような戦うしか能がない侍女などよりも、この太川久貴こそが殿にはふさわしかろう」


 などと、意味不明な供述を続けながら何か演じているイケメン。


「その様な世迷言、御手付きとなれば子をなせる私には通用しませんよ。ねぇ、家久様?」


 美少年がこちらへと笑顔を向けて来るではないか。子をなせる?まさか、こんな美少年なのにツイてないだと?もはや驚きで何も考えられなくなりそうだ。


「お前のような絶壁侍女ごときが御手付きとは片腹痛いわ。冗談は絶壁だけにしてもらおうか」


 と、イケメンは威張り散らしているが、もはやこんな奴に興味はない。ツイてない美少年などと言う桃源郷にこそ俺は興味がある。いいからもげろ、イケメン。


「見ろ、私を見る殿の目を」


 呪詛を送り込んだはずだが、イケメンが上気した顔で俺を見てくる。いえ、もげなくて良いです。もげたらツイてないイケメンとかいうヤベー属性になるので。


「さあ、殿。私めに御寵愛ブゲラ」


 迫ってこようとしたイケメンが吹っ飛んだ。


「久貴、何を遊んでおる。殿」


 吹っ飛んだイケメンへと殺せそうな視線を送った修羅が俺に平伏して来るではないか。


 ちょっと待て。俺の事を家久と呼ばなかったか?この美少年は。家久だと?それってまさか、あの鬼の国の軍神?だから、目の前に修羅が降臨したのだろうか?


「その、貴直様。家久様はなにも覚えておらず。私たちの事も分からない御様子なのです」


 美少年が俺を抱きしめながらそんな事を修羅へと告げた。大丈夫だろうか。


 射殺すような視線を俺へと投げかけた修羅だったが、致死量の視線を受ける前に下を向いてくれた。


「何とも御いたわしいことにございます」


 そう言った修羅はイケメンを拾って部屋から出ていってしまった。


「家久様、まずはお身体をお綺麗にいたしましょう」


 俺を抱きかかえていた美少年はニッコリそう言うと、俺の抗議など無視して着物をひん剥きやがり、ニコニコ体を拭いてくれた。

 こんな好い美少年に裸にされて体を拭かれているというのに、全く反応を見せない我が分身とは?などと疑問に思ったのだが、どう見ても完全体には程遠いらしく、自分が子供であることを自覚させられることになった。 

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