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団欒



 ※ ※ ※


「これはまた、なんと豪勢な……」


 卓に並べきれないほどの料理が、ずらりと並ぶ。

 ルタは山鳥が好物だと聞いて、イードは締まった身が味わい深いと評判の、ヒルデン山脈に住まうオオスズメを買いつけてきた。

 かまどでじっくり焼き上げた大きなロースト肉が、食卓の中央に王者のごとく鎮座する。


 その周囲には、互いに競い合い、或いは互いを引き立て合うように、数々の料理が彩りを添えている。

 こっくり煮込まれた牛のワイン煮に、ふんわり小高い山を作ったオムレツ、芋団子と豆のミルクスープ。瓜などのみずみずしい生野菜を使った副菜は、しゃっきりした歯触りに果実の甘酸っぱさが絡んで、箸休めにも最適だ。

 その他、港町ならではの魚介をふんだんに使った蒸し物など――、何から手をつけようか目移りしてしまうご馳走ばかりだ。


「ここまでしていただいて、なんとお礼を申し上げたらいいか」

「うーん、実はさ。もてなすと言って、いざ用意してはみたけど、家庭料理の域を越えられはしないんだよね。だから、ただ品数を増やしただけなんだ」


 イードはどこまで正直なのか、こっちでも取り繕うつもりはさらさらないらしい。


「そう仰られますが、この盛り付けだけでも、心を尽くしてくださったことが伝わります」


 食用花が華やかに皿を飾り、飾り切りされた果物や野菜は目でも楽しめる。客をもてなそうとする気配りと感性がなければ、こうは映えないとルタは感嘆をもらした。


「味も間違いないぞ。ほら、これがルタの分だ」


 ギュンターの分、イードの分と、フェリチェがせっせと取り分ける料理はどれも山盛りだ。

 ルタは、姫の胃袋が想定以上に大きくなってしまったのだと恐ろしく思って、フェリチェの皿を覗く。山は山でも、男たちの料理がアンシアの聳える山脈であるなら、フェリチェの皿には小さな丘ができている程度だ。失礼ながら、ルタは小さく安堵の息をついた。


「フェリチェ殿。わたしどもにこんなに盛られて、ご自身で召し上がる分が減ってしまったのでは」

「そんなことはない、普通に盛っただけだ。ルタはお客だからたくさんだろ? グンタは体が大きいから、たくさんで。イードは作るのを頑張ったから、当然たくさんだ」

「なら、チェリは上手に取り分けてくれたから、デザートをたくさんにしようか」

「本当かっ? なんだろうなぁ、楽しみだ!」


 イードたちの前では少し幼く見えるのは、なにも話し方のせいだけではあるまいと、弾んだフェリチェの声にルタは耳を澄ます。

 そしてイードもまた、時折り零れるアンシア語に同じように耳を傾けていた。


『あれ、お嬢様。いつの間に、この野菜を食べられるようになったんです?』

『これね。どうやら生で食べるのが苦手だったみたい。火を通せば、こんなに美味しくなるなんて、人間の料理は奥が深いわ』

『フェネットは胃が強いだけに、調理は大雑把になりがちですからね』


 デザートを切り分けに席を立った際、手伝いに来たギュンターにイードは小さく問いかけた。


「チェリのあんな顔、見たことある?」

「どの顔でしょうかな」

「声は安心しきっているけど、時々思い出したみたいに大人びた目をするんだ。きっとあれが、フェネットのお姫様の顔なんだろうね。ごらんよ、同じチェリなのに、知らない子みたいだ」


 フェネットの二人から目を離せないイードにこそ、ギュンターは珍しいものを見た思いで笑みを零す。


「坊ちゃん。それは焼きもちというものでは、ございませんか」

「焼きもち? うーん……しっくり来ないな。それよりもわくわく、かな?」


 知らないものをもっと知りたいのだと、イードはからっとした笑顔で言い切った。




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