明日もおはよう。
すると……。
「じゃあ、早速――」
「……ん?」
するりと尻尾の方へ、イードの視線と指先が走り出す。
さすがにまだと焦ったフェリチェは、がむしゃらになる余り、今度こそイードを突き飛ばしてしまった。
「いてて」
「なっ、何を考えているんだ、貴様ぁっ!」
「尻尾を調べるだけだよ」
「今までと違う目で見ていると言ったのは、誰だ! 信用できるか!」
こと、イードが正直なことに関しては、フェリチェは疑いようもなく信用しているのだ。
やおら立ち上がって、イードは細く開いたままの扉の前に立つ。
「仕方ない。先は長いし、今晩は諦めるよ。じゃあ、おやすみ。よく眠れるといいね」
ぱたんと、呆気なく扉は閉まり、暗くなった部屋には稲光が躍る。
「……え、おい、イード……。おいっ。ちょっと待……待ってぇぇえ!」
やはり何だかんだで、嵐の中にひとりぼっちは恐ろしくて追い縋った。
「こういう時は、嵐が行き過ぎるかフェリチェが眠るまで、手でも握って添い寝してくれるものではないのか!」
「えええ、ちょっと無理な相談だなあ」
お互いに体だけは大人だし――と、フェリチェに意味が伝わるよう、イードはアンシア語で付け加える。
「それでもいいなら……そっちに行くけど?」
「よ、よくない! そ、それは、父様に認めてもらってからっ……だ、な」
真っ赤な顔でしどろもどろのフェリチェを、イードは手招く仕草で、灯りのもとへ誘った。
「おいで。お茶でも飲みながら、起きていよう。それで朝になったら、チェリの新しい部屋を返しに行こうね。家主さんには、俺も一緒に頭を下げるから」
「朝になったら……」
離れるはずだった。だが朝になっても、これからも変わらず一緒にいられる。
こそばゆいが、心地よい胸の高鳴りに背中を押されて、フェリチェはイードの手を取った。
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次回、最終章。
そしてエピローグで完結です
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