第14話 思いがけないお誘い
あれから二日が経過し、家族で朝食を摂った後のこと。
「レベッカ、ゼノン殿から手紙が届いている」
「さすが……ゼノン様ね。連絡が早いわ」
父から手渡されたゼノンの手紙に母、シェリーはにこにこ顔でレベッカを見つめる。
「レベッカ、なんて書いてあるのかしら? 私、今回のお茶会では旅行の話よりも貴方の話をせがまれて困っているのよ」
「私もだ。先日のクレソン侯爵家のお茶会ではずいぶん仲睦まじい様子だったらしいじゃないか」
「むつまじい……?」
きっと両親は尾ひれと背びれのついたラブロマンス的な話を耳にしただろうが、自身の身に起きたことはただの恐怖体験である。
「私は、ゼノン様のお知り合いの話を伺っただけですよ」
レベッカが手紙を開けると、先日のお礼をするので、指定の場所に来て欲しいとのことだった。
その場所を見てレベッカは目を瞠り、横から手紙を覗き見た母が「まあ!」と目を輝かせた。
「デート! デートのお誘いね! しかも、ここはレベッカが好きなスイーツ店じゃない!」
そう、レベッカは酒の次にここのケーキが好きなのだ。ケーキの味はもちろん最高。見た目も華やかで、レベッカにとって目も口も心も満たされる幸せのケーキである。
手紙にはささやかな気持ち程度のお礼なので、気軽な気持ちで来て欲しいと書かれている。
(なぜ、ゼノン様が……ここを……)
レベッカの中で嬉しい気持ちと怖い気持ちが半々で揺れ動いている。しかし、そんなレベッカの心情を知らない父も母は微笑ましい顔で娘を眺めていた。
レベッカはすぐに返事を書いた。