第十五話「耳舐め風逃げ鳥魚〜現実の冷たさを添えて〜」(4)
綺麗な星空を、ぼんやりと眺める。
穏やかな夜だ。
今日一日を振り返って、思う。
夢みたいだ、と。
自分が、こんなに楽しく、呑気な気分で旅できる日が来るなんて……。
カブラさんたちのおかげだ。
同じ毛布に包まる、リリィの指先を、そっと弄ぶ。
細い指だ。
「ねぇ、リリィ……」
「ん……」
聞いてしまおうか。
でも……何か予感がする。
聞いてしまったら、何かが大きく変わってしまうような。
ざわざわとした予感。
それでも、僕は予感を無視した。
きっと何も変わらないと、頭では感じていたから。
「リリィはさ……何者なの……?」
「…………」
返事は沈黙。
虫の音色が聞こえている。
しばらくして、リリィは口を開いた。
「私は……天人…………」
「天人?」
「……ううん、やっぱり違う……でも…………ごめんなさい。上手く言えない……」
「……大丈夫。ありがとう 」
リリィはゆっくりとこちらへ寝返りを打つ。
星空を反射し、きらきらと輝くリリィの瞳。
「でもね、たしかに言えることは、あるよ……」
「……なに?」
微笑む、リリィ。
「私は、ファウストの味方だよ 」
春の草木を思わせる、優しい笑顔。
濁りのないその表情に、僕は……。
「……ありがとう 」
感謝を込めて、リリィの髪を撫でる。
ふふ……と、機嫌良さげに、リリィは笑った。
僕は……咄嗟に言い切れなかった。
頭の内では、カブラさんとの話がぐるぐるぐるぐると巡っていた……。
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