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アストラド:終わりの始まり  作者: タブリス
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第3章

ケチュアは急に方向を変え、走り始めた。ザイオンも同じように走り出した。


「彼が気づいたのかな?遠すぎて見えないと思うけど、でも…」


ケチュアは独り言を言っているように見え、ザイオンは尋ねた。


「え、ええと、その男は誰で、どうして私たちは逃げているんだ?」


「その男は―」


ケチュアは後ろを振り返り、ザイオンを見て目を大きく見開いた。それはザイオンが飛んでいたからではなく、その謎の男が追いかけてきているからだった。


「ドラ、ドラ、ドラ、ドラ、ドラ―」


「あ、あ、私は森の中に安全な道があるんだ!」


「どこだ?!」


「こっちだ!」


二人は森の中に入って障害物を避けながら走り続け、ザイオンが道をリードしていた。すると、ザイオンは突然動きを止め、まるで凍りついたかのように立ち止まった。


「な、何だ?! どうしたんだ?!」


「僕…迷ったかもしれない…」


「どうして…!!」


ケチュアは自分の言葉を途中で止め、目を大きく見開いた。


「彼が近づいている!」


そしてケチュアは木の上に跳び上がり、枝の後ろに隠れた。ザイオンはその後ろに飛んでいき、二人に見えないように魔法をかけた。


すぐにそのエクソシストが近づき、ポケットから物を取り出した。それはコンパスのように見えたが、球体のような形をしていて、アームララ球のようなものだった。


ケチュアはその物を見て軽く笑ったが、次の瞬間、その物が二人の隠れた位置を指し示すと、顔色が急に青ざめた。


反射的にザイオンは魔法を使い、エクソシストの足元を根で縛った。エクソシストが二人を見ようと振り返った瞬間、二人は走り出した。やがて川に出くわした。


「これが私の村への道だ。」


――


橋の脇に静かに座っている一人の少女がいた。

それは崖を越える吊り橋で、下には何十メートルも下の川が荒々しく流れている。

ここは人間の領地とエルフの領地を分ける境界線だ。橋を守る少女はエルフだった。その尖った耳だけでなく、顔立ちも典型的なエルフの特徴を持っていた。

彼女の体は細く、しかし力強かった。長い緑がかった金髪を一つの長い三つ編みにしていた。

彼女は色とりどりの、そして大地の色の衣服を身に着けていて、花や動物の模様が描かれている。


下を見ながら、彼女はただ一つ思っていた。


「このままずっとここで守り続けるのかな?」


もちろん、そこに誰もいなかったから、その問いは誰にも聞かれることはなかった。

むしろ、彼女は誰もいないからこそ、その問いを自分に言えたのだ。

彼女はいつでもここを去ることができた。

守護者としての厳しい訓練を受けてきた彼女は、森のことや狩り、食料集めに関して知識を持っていた。

それでも、彼女がここを離れることができないのは、家族の仕事を放棄できないからだった。

彼女の父もまた守護者で、彼女はその訓練を受け続けてきた。もしも彼女がその職業を捨てたいと言ったら、父はどんな反応をするだろうかと考えると、恐ろしい気がした。


「はあ」


彼女は村を出て行く人々、特に冒険者たちを羨ましく思っていた。

もしも選べるのなら、世界を旅して冒険をしたいと考えていた。

でも、その望みがあっても、守護者としての仕事を続ける決意を壊すには足りなかった。


「もちろん、もし誰かと一緒に出るのなら、事態は違っただろうけど…」


そのエルフは約束を思い出し、深いため息をつこうとした瞬間、急に姿勢を正した。


彼女の目が鋭くなり、手に持った槍をしっかりと握りしめた。

森の中から音が近づいてきていた。

もちろん、それは彼女のエルフとしての長い耳で聞き取った音だった。

守護者として訓練された彼女は、特に感覚が優れていた。


だが、彼女は次に起きることに備えていなかった。

突然、エルフが現れた。いや、半エルフだ。

そして、そのエルフが誰かは彼女にはすぐに分かった。


「すみません、お願いです!」


その少年の必死な叫び声に答える間もなく、別の人物が現れた。

いや、むしろ、別の生物だった。

人間のような姿をしているが、耳はエルフのそれよりも大きく、上を向いている。爪もあり、非常に攻撃的な印象を与える外見だった。

それは女性のようで、肌は暗い色をしていた。

彼女が見たことも聞いたこともない生物だった。


「悪魔?」


そのエルフが頭に浮かべた最初の言葉はそれだった。

悪魔というのは、人間が北方の民族を指す時に使う、漠然とした言葉である。

彼女はその時、この種族が悪魔に分類されるとは思わなかった。

それにしても、彼女はこれまでにこのような外見の者を聞いたことがなかった。


「止まれ!この先はエルフの領地だ。許可なく進むことはできない!

あなたたちは誰だ、何をするつもりだ?」


もちろん、彼女はそのエルフがザイオンであることを知っていた。

エルフの村からの者なら問題なく通れるだろう。

しかし、彼は隠れて村を出て、今はその奇妙な生物を連れて戻ってきた。

もしその生物が問題を起こしたら、その責任は彼女が負うことになる。

だから彼女は外国人に対して中立的に対応しつつ、防御的な姿勢を取って槍を構えた。


「お、おねがいです、通してくれ!あれが近づいてきている!」


「誰が近づいているんだ?そして、この後ろにいるのは何だ、ザイオン?」


「私はケチュアだ、悪いことはしない、お願いだ、通してくれ!お願いだ!」


そのエルフはザイオンの友達が誰なのかよりも、ケチュアが「何者か」を気にしていた。

しかし、それでもこれは非常に奇妙な状況だった。

通常、この橋を越えるのはエルフだけだった。

たまに人間やドワーフが訪れることもあるが、その場合には事前に通知があり、彼らは通ることができた。

もしザイオンの友人であれば、エルフの村からの者であれば通しても問題なかっただろう。

それでも、エルフは父に確認を取るように指示されており、もしも怪しい者が橋を越えようとすれば、彼女はその者を止め、強制的に通すことはなかった。


「もしケチュアが問題を起こしたら、ザイオンが彼女を連れてきたとしても、私はこの問題を許可した責任を問われることになる。」


エルフはケチュアの目を見て、彼女の必死な眼差しを感じ取った。


「もしザイオンが彼女を連れてきたなら、それは私たちの法律に従っている。」


今度はザイオンがケチュアに向かって必死に目を見開いていた。


「…う、うん…」


「それなら決まりだ。」


エルフがその判断を下すと、エクソシストとエルフとの間に再び張り詰めた空気が流れた。もし戦闘が始まるなら、どちらが勝つかは疑う余地がなかった。男が腰に持つ奇妙で魔法のようなアイテムや、彼がエリート戦士であるという宣言は、すでに十分な脅威だった。


「分かりました。お騒がせしてすみません。」


その男は謝罪の言葉もなく、ただ静かに振り返り、森へと去っていった。


しばらくして、全員が安堵の息をついた。


「やっと行った。」


「まだだよ、あの人、森の中にいるんだ。絶対に。」


「お、おおきに、守護者さん!」


「別に何もしてないわ。ただルールに従っただけ。でも問題を起こしたくないの。あの…ものを持って出て行って。」


「私はものじゃない!」


「それにしても、ザイオンが連れてきたこの…獣みたいな生き物、いったい何なの?」


「実は、僕もよく分からないんだ。ただ、僕を助けてくれて、その後ついてきたんだ。」


「それでこんな変な獣を村に連れてきたのか?!」


「あ、あの…どうすればよかったのか分からなくて。あいつが急に僕たちを追いかけてきたから、ここが一番近い場所だと思って走ってきたんだ。」


「おそらく、ここが唯一の知ってる場所だからでしょ?」


「ご、ごめん…」


「はあ…とにかく、別の出口まで案内するわ。でも、もう二度とこんなものをここに連れてこないで。」


「えっ!」


「分かった!でも、どっちの道に行くの?」


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