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アストラド:終わりの始まり  作者: タブリス
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始まり

「はぁぁ、この道はいつ終わるんだ……」


エルフは静かに思った。


(もしかして道を間違えたか? ありえない、エルフが森で迷うはずが……たぶん)


ぬかるんだ道を静かに歩いていると、エルフは一つのキャラバンを見つけた。


「よかった、あの人たちなら道を知ってるかも」


早足でキャラバンに近づくと、一頭の馬が大きくて四角い何かを引いていた。それは大きな布で覆われていた。商人のようにも見えたが、周囲に座っている4人の鎧姿の男たちはどう見ても戦士だった。年配の男が馬車を操っていた。


「す、すみません、皆さん! 大湖はどちらにありますか?」


エルフは彼らに声をかけた。


「東の方だ、坊や。そっちへ行くのか?」


「は、はい、そうです……」


「俺たちもそっちへ行くところだ。一緒に来るか?」


「え、えぇ?! 本当にいいんですか?!」


「おい、フルト! いきなり道端の子を拾うんじゃないよ!」


「ただの迷子だろ、そんなに構えることないって」


隣にいた女性にそう答えた男は、気楽そうに笑った。


「それに、お前エルフだろ? エルフは森を守る平和な種族だって聞くし、大丈夫だと思うぜ」


男の説明はドライアドの話のようだったが、親切な男を訂正するつもりはなかった。


「ほ、本当に大丈夫ですか?」


「干し草の匂いと木の座席が気にならないなら、好きにしな」


「ど、どうもありがとうございます」


少年は馬車に乗り込んだ。


「さて、もう聞いたかもしれないが、俺はフルト。隣にいるのは仲間のララ。あそこの二人は仲間のイザとフレドだ」


「はじめまして」


「俺たちは冒険者だ。俺は魔術師で、ララは騎士、イザは弓使い、そしてフレドは治癒師さ」


「あ、あぁ、自己紹介を忘れてた! 僕はザイオン、大森林から来ました」


「大湖で何をするつもりだ? エルフが外に出るのは珍しいな」


「薬草を採取して、それを研究したいんです。今、植物に関する大きな『書物』を作っていて。それで、皆さんは大湖で何を?」


「俺たちはただ通過するだけさ。あそこに一泊して、それから都に向かう予定だ」


「都かぁ、すごいな……。都の図書館にはあらゆる知識があるって聞いたことがあります」


「その通り。実はその知識を求めてるんだ」


「それって、どういうことですか?」


エルフが尋ねた。


「町で暴れていた『悪魔』を捕まえたんだよ」


「えっ、悪、悪魔?!」


エルフは後ろに積まれている覆いを見つめた。


「心配するな。そいつは強かったが、もう縛りつけて大人しくさせてある」


「な、なるほど……」


「ともかく、あれは教会で処刑される予定で都まで連れて行くんだ。だが、知ってる悪魔のどれにも該当しない」


「つまり、どんな種類の悪魔かを調べたいと?」


「その通り。未知の悪魔だったら、発見報酬が追加されるかもしれんしな」


「それに、『聖なるコンパス』が反応しなかったから、もしかしたらー」


フレドが初めて口を開き、ポケットから何かを取り出した。


「ララ、フルト、イザ! これを見てくれ!」


フレドは自分の言葉をさえぎって叫んだ。


「どうした?」


三人はフレドの周りに集まり、ひそひそと話し始めた。しかし、エルフの鋭い耳にはいくつかの言葉が届いた。


「……指している……」


「……壊れてなかったか……?」


「……念のため……」


「……悪魔の憑依……」


突然、冒険者たちはこちらを向き、武器を構え始めた。


「な、な、なんで!? な、何が起きたの?!」


ザイオンは恐怖にかられて叫んだ。


「悪いな坊や、だが檻の中に入ってもらう」


「お、檻に?! でも、悪魔が……!」


「心配するな、悪魔は鎖で縛られていてお前を傷つけたりしない」


「でも入らなければ、こっちが傷つけることになる」


「ま、待って! さっきまで仲良くしてたじゃないか! 僕、何かしたの?! これから僕に何をするつもり?!」


「俺にもよく分からんが……そういうもんなんだよ、坊や」


ザイオンは俯き、(攻撃用の『魔法』は使うな)と教えられたことを思い出した。


(わかりました。そうします)


「すまんな、坊や」


ザイオンは檻に入り、鍵がかけられた。


正面を見ると、地面に座った誰かのような奇妙なシルエットが見えた。頭に袋をかぶっているようだった。シルエットが動いた瞬間、ザイオンの体は震え出した。


暗くて、エルフの鋭い視力でもほとんど見えなかったが、それが動いたのは間違いなかった。


それがどんな姿勢なのか把握する前に、そいつは方向を変えてザイオンに近づき始めた。


四つん這いで地面を這ってくるその姿を見た瞬間、絶望感に襲われ、ザイオンは膝から崩れ落ちた。


そいつは彼の目の前まで来ると、下から上へと彼の匂いを嗅ぎ、最後には顔の匂いをかいだ。


「お前は奴らとは違う……ククク、どうやら同じ立場のようだな……」


袋の中から、女性の声がした。


「た、食べないでください! なんでもしますから!」


「クク、食べたりはしないよ」


声は応えた。


「でもな、その袋を取ってくれると助かるんだ。自分じゃちょっと手が使えなくてね」


(それくらいなら問題ない)と思ったザイオンは、命がけのような気持ちで袋を外してやった。


袋の下から現れたのは、見たことも聞いたこともない奇妙な存在だった。頭から突き出た巨大な耳、そして目は銀のように不気味な光を反射していた。


「いい子だね」


その生き物は微笑んで言った。

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