春のお花見大会④
「あ、戻ってきたか」
受付会場に戻ると既に園芸部の現場組の人達の姿が見えた。
「悪い悪い、待たせたか?」
「いや、指定した時間通り、5分前だから大丈夫だよ。それよりシートの方は大丈夫そうか?」
「それなら問題ないぞ!私が最終チェックもしたしな」
「そっかそっか、だったら安心だな。よし、じゃあみんな集まってくれ!」
夏川さんの集合の合図で全員が集合する。
集合してわかったけど園芸部の部員の数が10人程度で思ってたよりも少なかった。
この人数でこの広い校内の見回りとかをして行くのか…。
これは確かに忙しくなりそうだ。
「えー、今日は待ちに待った春の花見大会だ。天気も良く絶好の花見日和になった。今年も去年同様、万屋部と茶道部のみんなにも協力してもらい開く事ができる。みんなと協力して満足いく花見大会にしていきたいからみんな頑張っていこう!」
夏川さんの掛け声と共に園芸部の部員達からオーッと声が上がる。
そんな園芸部に混じり、杏果さんや美月ちゃんも手を挙げて声を上げていた。
それに釣られるように僕も少し遅れて声を出した。
「よし!じゃあ開園だ!みんな持ち場に行ってくれ!解散!」
合図とともに園芸部の部員達は自身の持ち場へと散り散りに分かれていく。
その波に乗り、現場組の僕たち3人も美月ちゃん、優斗先輩に別れを告げ夏川さんの後についていった。
向かった先は校門。
そこにはすでに遠くからでも見て分かるほど多くの人が列を作っていた。
学生や家族、お年寄りの方と老若男女問わず多くの人がすでに集まっていた。
「なんか思ってた以上に人が多いんですけど!?」
その人の多さに思わず声が出た。
「なんか…去年より多くない?」
杏果さんも顔を引きつらせながら絞り出すように呟く。
「今年は広報にも力を入れてやったからな。その成果だろ。さ、開門するから受付まで順番に案内頼んだぜ」
それだけ言うと夏川さんは颯爽と校門の方まで走っていってしまった。
「あ〜…杏果、冬馬君、覚悟決めろ。これは現場組もしんどいだろうが受付も相当だ。みんなで今日を持ち堪えてあとの花見、楽しむぞ!」
「よ、よっしゃ!」
「やるっきゃないですね!」
3人で小さな円陣を組み気合を入れ直す。
そして校門が開き、動き出す列に向かって僕達も行動を開始した。
「はーい、先頭の方案内しますんでゆっくりついてきてくださーい!」
「順番にご案内しますから2列でゆっくり前についていってください!」
「ここの列で一旦区切るので申し訳ないがちょっとだけ待っててください!」
先頭の案内を杏果さん、間の列管理を僕、後半の調節を部長と分かれて案内していく。
受付までの案内を終えると次の案内の為に急いで校門まで戻る。
そんな往復ダッシュを何度も繰り返した。
「はぁ…はぁ…くそぅ、あと何回往復したらいいんだ…」
「部長、大丈夫ですか?」
部長を見るとすでに肩で息をしながらヨタヨタと走るレベルにまで疲弊していた。
「んだよ琢磨、まだ3往復くらいだろ。もうへばってんのかよ〜」
「うるさぃ…俺は基本事務専なんだよ…」
「これを機にちょっとは運動でもしたらどうだ〜?」
ヘロヘロの部長を見ながらニヤニヤして杏果さんは提案する。
その提案に部長は振り絞るように「うるせぇ」とだけ返しその後は無言で足だけ動かしていた。
そのあと案内の為2往復して、無事大きな山場は乗り切る事ができた。
開門してから約1時間、大きな声を出し続けていたのでちょっと喉が痛い。
校門近くで少しだけ休憩し、支給された水を飲み喉を潤す。
部長はクタクタになってるし、でも杏果さんはまだまだ余裕そう。
さすがは万屋部の運動王、伊達じゃない。
これからの時間は現場組は各々の休憩まで見回りとなっている。見回りはばらけて行うことになっている。
「んじゃ私は適当に行ってくるわ〜」
「あ、僕も行きます」
「琢磨は〜?」
「俺は…ちょっと後から行くわ…」
「んだよ情けねぇな〜、じゃあシロ、私達は先に行っとこうぜ。私右側から行くからシロは左側から回っててくれ」
「わかりました」
「んじゃまた後でな〜」
手を振りながら杏果さんは走り去っていった。
「じゃあ部長、僕も行きますね」
「おぅ…また後でな…」
木を背に座っている部長を別れを告げ僕も見回りを開始した。
開始からいきなり忙しかったがお花見大会はまだまだ始まったばっかりだ。