春のお花見大会③
現場組の園芸部と僕達3人の万屋部は学内にある桜並木の校庭に訪れた。
ここは学内では有名で多くの桜が植えられている。
そんな桜も今が絶好のお花見時期で、辺り一面綺麗に咲き誇っている。
「すごい…満開ですね」
「だな、天気もいいし、桜も綺麗に咲いてるし、絶好のロケーションってわけだ」
「おいシロ、もうちょい行くと桜のトンネルって呼ばれてる場所もあるんだぞ。そこもすっごい綺麗なはずだ!」
「この学校にそんなスポットがあったんですね」
「伊達に広いだけじゃないってわけよ」
まるで自分のことのように自慢げに胸を張りながら杏果さんはそう言った。
またあとで案内してもらおう。
「おーいお三方、どんどんシート敷いてってくれよ〜」
夏川さんがブルーシートを手にこちらに近づいてきた。
見ると園芸部の人達は慣れたように作業を始めつつあった。桜の花に見惚れてないで僕達も作業をしないと…!
「悪い悪い、よし、俺たちも始めるか」
「開園まであと40分くらいだから一応余裕はあるから終わったら見回ってくれていいからな」
「じゃあさっさと終わらして桜、ちょっと見てまわろうよ!」
「ですね、桜のトンネルも見てみたいですし…!」
「どこにシート敷くとか基準とかあるか?」
「あぁ、地面に目印があるからそこを目安に敷いていってくれ。シートの角に穴が空いてるからこの杭を軽く打ち込んで固定してくれたら設置完了って感じだ」
そう言うと夏川さんはブルーシートと杭を何個か渡してくれた。
「設置を頼みたい場所なんだが此処の一角とここの道をまっすぐ進んだところにある広場だ。ここは12箇所で広場の方は確か20箇所くらいだと思うから。一応地図にマーキングしといたから参考にしてくれ。シートと杭は必要分この場所に置いておくから適当に持っていってくれ」
「了解だ」
「開園の5分前には受付のところに集合しといてくれ。じゃあ任せたぞ」
「オッケー、任せとけ!よっしゃ、シロ!とっとと作業開始だ!速攻終わらせるぞ!」
「はい!」
「じゃあここはお前達2人に任せるから俺は向こう側やってくる。ここが終わったら来てくれ」
「了解です!」
「んじゃあ作業開始だ!」
部長、杏果さん、そして僕の3人は道具を持ち各々作業に入った。
作業自体は単純で、僕はどんどんシートを敷いていった。
軽い風が吹くと桜の花びらがその風にのって舞い散る。快晴の空にその光景がすごくマッチしていて作業しながらも景色に少し見惚れてしまう。
手を動かしながら、今この瞬間が貸し切りなのが少しだけ嬉しかった。
景色を楽しみながら作業をしていると後ろから杏果さんの声が聞こえてきた。
「おーいシロ〜。こっち終わったぞ〜」
「あ、お疲れ様です、早いですね」
「まぁな〜。シロは今どれだけやったんだ?」
「僕も一応これで終わりですよ」
「オッケー、んじゃあやり忘れてるところないかだけ確認してくるからその間に終わらしといて〜」
そう言うと杏果さんは見回りにいってしまった。
僕は残りのシートを急いで最後の場所に敷き、杏果さんと合流した。
「お待たせしました。取りこぼしなかったですか?」
「うん、こっちは完璧だったぞ。んじゃあさっさと琢磨んところ行ってさっさと終わらそうぜ〜」
「ですね、いきましょうか」
「ダッシュで行くぞ!」
そう口にした杏果さんは全速力で走っていった。
「ちょ、待ってくださいよ!」
出遅れて僕は杏果さんの後を追いかけた。
部長のところに着くと部長はまだ作業の途中だった。
「琢磨〜」
「お、来たか」
「あとどれくらいで終わりますか?」
「言ってもあと5箇所くらいだ。そっちはもう終わったのか?」
「おう!バッチリだ!」
親指を立てて笑顔で杏果さんは告げた。
「じゃあすまんが手伝ってくれ。3人でやったらあと5分くらいで終わるだろうし、まぁ15分は自由時間が設けられるだろ」
「よっしゃ!さっさと終わらそうぜ〜」
乗り気で置いてある残りのシートと杭を手に杏果さんはさっさと作業を始め、僕も後に続くように作業に入った。
そうして頼まれていたシート敷きは20分くらいで終了した。
残った時間は3人で桜並木を見て回った。
桜の木も色んな種類が植えられていて、そのどれもが満開に咲いていた。
桜のトンネルも部長と杏果さんの案内で見に行くことができた。
ピンクのトンネルの中に花吹雪が少し舞って圧巻の一言だった。
美月ちゃんと優斗先輩にもあとで案内してあげないとっと3人で話しながら、あっという間に集合時間に近づいていた。
「おっとそろそろ時間だな。おい2人とも、受付の方に行くぞ」
現場組3人は桜並木をあとにし、受付へと向かった。
「お客さん、たくさん来てくれますかね」
「めちゃくちゃ来ると思うから覚悟しといたほうがいいぞ」
「去年も大変だったからな。楽しみにしておくんだな」
悪戯っぽく笑いながら先輩達2人はそう教えてくれた。
そんな2人を見て少し怖くなりながら、それでも少し楽しみに感じながら受付へ向かって歩いた。
その歩みは少し軽かった。