春のお花見大会①
春休みに入った万屋部は穏やかな気候も相待って全員気が抜けていた。
「なー優斗〜今日も依頼ないのか〜」
机に突っ伏して動く気はありませんと言ってるような格好で杏果さんは優斗先輩に質問をした。
「今日も依頼はなさそうだよ。春休みだからね、たまにはのんびりしてていいんじゃないかな」
「だな〜おーいシロ〜ちょっと窓開けて〜」
「はいはーい」
杏果さんに言われるがまま、僕は部室の窓を少し開ける。春の暖かな風が部室内に入ってくる。
「みーちゃ〜ん…みーちゃん?おーい」
「……ふぇ…なんですか〜杏ちゃん先輩」
春の暖かい日差しに美月ちゃんもうとうとしていたみたいだ。
「杏ちゃん先輩も一緒にお昼寝しましょ〜」
「それもありだな〜…」
「2人とも完全に骨抜きになっちゃってるね」
「ですね〜、でもこの暖かさじゃ仕方ないですよ」
ポカポカと暖かな陽気と暖かい風に僕もあくびを漏らす。
「春休みは依頼が少ないからね今の所入ってるのも一つしかないし…」
優斗先輩が、はいどうぞと紅茶を手渡しながらそう言った。
「一つは来てるんですか?」
優斗先輩から紅茶を受け取り、冬馬はソファーに腰をかける。
「園芸部主催の春の花見大会がもうすぐ行われるんだ。その実行委員の手伝いの依頼を受けることになってるぞ」
部長がいつものパソコン席からパソコンの手を止めて教えてくれた。
「実行委員の手伝いですか?」
「そうだ、と言っても参加者に無料券配ったり桜の木の下にレジャーシートを敷くの手伝ったりとかほとんど雑用だけどな」
「無料券ってなんのですか?」
「花見大会ってだけあって茶道部も参加してお茶を出したり和菓子を提供したりするみたいなんだ。その無料券」
「結構大掛かりなんですね」
「まぁな〜。春休みの一大行事みたいな扱いになってるみたいだし。まぁ花見ながらのんびりやりゃあいいと思うぞ〜」
あくびをしながら部長はそう言った。部長もどこか気が抜けてるみたいだ。
そう思いながら冬馬は紅茶を啜り、ふぅと息を吐く。
「あ、そうそう。依頼協力の報酬で終わった後、桜が咲いてるいいところでお茶とお茶菓子貰えるみたいだから楽しみにしとけ〜」
パソコン席から手をひらひらさせながら部長はそう付け足した。
一大行事というだけあって報酬も特別なものを用意してくれてるのか。それは楽しみだな。
そう思いながらまた一口紅茶を啜る冬馬だった。