オープンハイスクールでの出会い⑥
お昼ご飯を終えた4人は午後からの依頼の一つである草むしりの為にグラウンドの隅っこの方へとやってきていた。
「えーっと、依頼内容はこの一角の草むしりみたいだから4人だとこれもすぐ終わるかな」
「よーし!全部引っこ抜いて早く終わらせちゃお〜!」
「お〜!」
木目さんと美月ちゃんいつの間にか息ぴったりだった。
置いてけぼりの僕と果川さんは2人顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
「くっさむしり〜♪くっさむしり〜♪根っこからぜ〜んぶ引っこ抜け〜♪」
上機嫌に謎の歌を歌いながら作業をしている木目さん。正直すごい気になる。
「あの、果川さん」
「どうしましたか川神さん」
「あの、こんなこと聞くのってあれなんですけど、草むしりの依頼って大丈夫でしたか?」
「と言いますと?」
「いや、なんというか…お二人って植物が宿ってる?んですよね。だからその…倫理的にというか大丈夫なのかなって」
そう言うと果川さんはくすくすと笑った。変なこと言っちゃったかな。
「笑っちゃってすみません。全然大丈夫ですよ。雑草も冗談で仲間だ〜って言う人がいるくらいですし」
「そう、なんですね」
「はい、だから気にしないでください」
「ならよかったです」
「川神さんは優しいんですね」
クスッと笑いながら果川さんはそう言った。その返答に少し恥ずかしくなり冬馬は照れ隠しに目の前にあった草を引っこ抜いた。
「ねぇ冬馬〜」
「どうしたの木目さん」
「この子も引っこ抜いちゃうの?」
そう言うと木目さんは少し寂しそうな顔をして目の前のタンポポを指さした。
「この子、せっかく綺麗に咲いてるから抜くの可愛そうだよ〜」
たしかに、なんだかこのまま引っこ抜いてしまうのは忍びない。でも抜かなきゃ依頼達成にならないし…。
少し悩んだ冬馬はそうだと何かを思い出したかのようにその場を後にする。
「シロくん?」
〜数分後〜
「お待たせ!」
その手には小さなスコップが握られていた。
「用具室にあったのを持ってきたんだ。これで根っこから掘り起こして端のほうに移してあげよう」
「ナイスアイデアだよ冬馬!」
僕と木目さんは根っこを傷つけないように慎重にタンポポの周りの土を掘り起こし、端の方に植え直してあげた。
「雨宮さん、やっぱり川神さんは優しい方なんですね」
三七姫はにっこり笑って美月にそう言った。
「はい、シロくんは優しい人ですよ」
冬馬の姿を見ながら美月は三七姫にそう返した。
こうして午後の依頼の一つである草むしりを終えた冬馬たち4人。残る依頼はあと一つ、体育館の用具室の整頓のみとなった。