落ち葉
いつもの放課後。ただし今日の場所は部室ではなく外だった。
今日の依頼は先生からの依頼で落ち葉を集めて処理して欲しいとの依頼だった。
部長曰く、雑用も依頼のうちだ、とのことだった。
杏果さんが今日はやる気まんまんで熊手で落ち葉をどんどん集めている。
始まる前に優斗先輩が「今日のご褒美は特別だよ」と言っていたのが効いてるみたいだ。
「シロくんシロくん!イチョウの葉っぱ見つけました!あ!こっちにはもみじもありますよ!」
キラキラした目でもみじの葉っぱやイチョウの葉っぱを見せに来たと思ったらすぐさま走ってどこかへ行ってしまった。
「気づけばもうすっかり秋だな・・・」
いつの間にか夏が過ぎ、もう秋を感じる季節になっていた。風が吹けば少し肌寒くも感じる。
熊手を引きずりながら落ち葉を回収しつつ美月ちゃんの後をゆっくりと追いかける。
「シロ~こっち来てみろよ~!」
杏果さんの声が奥の方から聞こえてくる。
声のする方へ方向修正進んでいくとそこには大量の落ち葉が集められていた。
「どうだ!落ち葉のベッドだぞ!」
「ベッドというか・・・むしろ山ですね・・・。こんなに集めたんですか」
「みーちゃんも手伝ってくれたんだ」
「手伝いました!」
ぐっと親指を立ててやってやりましたみたいなポーズとドヤ顔をしている美月ちゃん。正直可愛い。
「じゃあ全部袋の中に詰め込んで優斗先輩のところに持っていきましょうか」
「ちょっとまてぃ!」
「何ですか杏果さん」
いそいそとゴミ袋の準備をしていると大きな声で制された。
「なぁシロ、こんだけの落ち葉はそうそうお目にかかれないと思うんだよ」
「まぁ・・・そうですね」
「これをこのまま燃やしてしまうなんてもったいないとそうは思わないか?」
「そう言われましても・・・じゃあどうするんですか、この大漁の落ち葉」
「決まってんだろ」
そう言うと杏果さんは落ち葉の山から少し距離をとる。
まさか・・・
「こうするんだよ!」
助走をつけた杏果さんは頭から落ち葉の山の中に突っ込んでいった。
こんなのに似た動画見たことあるな~・・・たしか犬のやつだけど・・・
「どうだ!シロもみーちゃんもやってみろよ!」
落ち葉の山から顔だけひょっこり出してそう言う杏果さん。ほんとに犬みたいだ。
「い、いいんでしょうか!シロくん!」
こっちを見て聞いてくる美月ちゃんは頭のくせっ毛がぴょこぴょこ横に動いてるように見える。やりたそうだな~・・・
「えっと・・・やめといたほうがいいと思うよ。服も汚れちゃうしそれに後で優斗先輩になんて言われるか」
「そ、そうですよね・・・」
露骨にシュンとされるとなんだか罪悪感がすごい。
「なんだよ~やんないのかよ~」
落ち葉の山の中から抜け出してきた杏果さんが近づいてくる。案の定、落ち葉まみれになっていた。
「大丈夫だって!優斗には黙ってやってれば叱られないて」
「誰に黙ってれば怒られないのかな?」
その声にビクッと体を強ばらせる杏果さん。
杏果さんの後ろにはいつの間にか優斗先輩が佇んでいた。
「うん、いっぱい集まったね。これだけあれば十分だと思うから向こうに持っていこうか。杏果ちゃんはちゃんと綺麗にしておいてね。じゃないとご褒美は無しだからね」
「うわーん、みーちゃん、シロ~手伝って~!」
僕と美月ちゃんが手伝い杏果さんはなんとか綺麗になったのだった。
集められた落ち葉の半分が園芸部の腐葉土ように使われ、残りの半分は焼却用のドラム缶で燃やされることになった。
「なぁ優斗~今日のご褒美ってなんなんだよ~」
しびれを切らした杏果さんが優斗先輩に聞いた。
「もう出来てるかな?ちょっと待っててね~」
ドラム缶の底にあいている穴を優斗先輩が棒でつつくと中から銀色のアルミホイルでくるまった丸っこいものが3つほど出てきた。
「これが今日のご褒美だよ」
これってもしかして・・・
「「「焼き芋だ~」」」
包みを開けると中からホクホクのさつまいもが顔を出した。
「今日のご褒美は秋の味覚、出来立ての焼きたての焼き芋だよ。琢磨くんがいろんな種類を用意してくれたから食べ比べしてみるといいよ」
落ち葉焚きでの焼き芋。しかも食べ放題。
確かに特別だ。
「オタクもたまにはやるな~」
「このおいもさんとってもあまいです!」
女子勢は大喜びみたいだ。
これは後で事務作業をしてるであろう部長にも持って行ってあげよう。
そう思い何個か避けて僕はまた一つ焼き芋を頬張るのだった。