冬馬の風邪②
「あ、目が覚めましたかシロくん」
いつ眠りについたかは覚えていないがいつの間にか寝てしまってたらしい。
頭に置かれたタオルを取り、ゆっくりと状態を起こす。
「大丈夫ですか?」
「うん、おかげさまでちょっとマシになったよ」
「それはよかったです」
にっこりと微笑みながら美月ちゃんはそう言った。
「あー、起きたかシロ」
「おはよう冬馬くん」
どうやら杏果さんたちも依頼を終わらせて戻ってきてたみたいだった。
「あ、お疲れ様です。杏果さん、優斗先輩」
「ところでシロ、いつまでみーちゃんの手握ってるつもりだ?」
「へ?」
ニヤニヤしながら杏果さんが指で冬馬の左手を指す。
指さされた自分の左手を見るとガッツリ美月ちゃんの手を握っていた。
「わ、わ、わ、ご、ごめん!」
慌てて左手を離した。
もしかして寝てる時からずっと!?だめだ記憶にない!
「えっと…いつから…」
「俺が帰ってきた時にはもう握って寝てたぞ」
はい、ポカリと渡してくれた部長がそう言った。その顔はやっぱりニヤニヤしていた。
「ありがとう…ございます…」
部長が言ったその事実に恥ずかしすぎて顔から火が出そうだった。
「大丈夫ですかシロくん?顔が真っ赤ですよ?やっぱりまだ休んでなきゃだめですよ」
顔をぐいっと近づけて再び寝かそうとする美月ちゃん。
近い近い
そのせいで余計に顔が赤くなる。
「ま、もう大丈夫だから、ごめんね美月ちゃん」
「シロ言ってやれよ、お陰でぐっすり寝れましたってさ」
くすくす笑いながら意地悪な杏果さんはそう言ってきた。
「そうなんですか?こんな時です、いくらでも甘えてくださいね♪」
そう言うと美月ちゃんは手を差し出してにっこりと微笑みかけてくれた。
「だ、大丈夫だから!もう元気になったから!」
恥ずかしすぎる!なぜこんな辱めを受けなきゃいけないのか。
チラッと部長と杏果さんの方を見る。2人ともニヤニヤしながらこちらを見ている。絶対確信犯だよ…
「こ〜ら、2人とも冬馬くんをいじめないの」
見かねた優斗先輩が助け船を出してくれた。
「別にいじめてないぞー、ただ心配してだもん、なー」
部長と杏果さんは、なーと言い合っている。こう言う時だけ息が合うんだもんな〜…
「冬馬くんもう大丈夫そうかい?さっき夏菜ちゃんが迎えにくるって連絡があったみたいだからそれで帰れるならもう今日は帰るんだよ」
「はい、ありがとうございます。そうさせてもらいますね」
「シロくん外まで送って行きますよ」
「いや、大丈夫…」
「ダメです!送って行きますからね!」
こうなっちゃうと美月ちゃんはもう聞かないんだろうな
「じゃあお願いするよ…」
背後からの視線が痛い中、冬馬たち2人は部室を後にした。