冬馬の風邪①
いつもの放課後。いつもの部室。いつものように依頼の整理をしている優斗先輩。
「冬馬くん今日の依頼なんだけど…」
「けほっけほっ」
「冬馬くん?」
椅子に座ってぼーっとしたままの冬馬
優斗に声をかけられたのに少し反応が遅れる。
「…あ、なんですか優斗先輩」
「大丈夫かい冬馬くん、なんだかぼーっとしてるみたいだけど…」
「あ、はい…けほっ、大丈夫です」
「本当に大丈夫か〜咳までしてるみたいだし風邪じゃないの?」
「大丈夫ですかシロくん?」
「うん、大丈夫だよ美月ちゃん」
そう言いながら席を立つ冬馬。
あれ?身体が重たい。なんか視界もグニャってしてるしなんでかな…
机に支えていた手が滑り冬馬はその場で転倒する。
「シロくん!」
「あれ?」
自分が倒れたことに気がつかなかった。もしかしてこれって結構やばいかも?
おでこにひんやりしたものが当たる。美月ちゃんの手かな…ひんやりして気持ちいいな…
「すごい熱いです!」
「熱あったんじゃん!」
「琢磨くん急いで冬馬くんをソファーに寝かせよう」
「あいよ!」
「あの…依頼は…」
「この状態じゃ無理でしょ、今日は休んで、優斗が代わりに行くから」
「そうだよ冬馬くん。とりあえず安静にしておいて、もし帰れそうならすぐに帰るんだ。無理そうなら親御さんに迎えにきてもらって帰りなさい」
「一応夏菜ちゃんには連絡入れておきました!」
「みーちゃんいつの間に交換してたの…」
「もしものためにって夏菜ちゃんが教えてくれてました!」
我が妹ながら流石だな…
「じゃあすみません…少し寝たらマシになると思うので…」
「おう、ゆっくり休め。俺はなんか飲みもん買ってくるわ」
そう言うと部長は部室を出ていった。
「わたし毛布持ってきますね!」
美月ちゃんは部室内にある毛布を持ってきてかけてくれた。
なんか本当申し訳ない…
「わたしと優斗は依頼に行ってくるわ。シロ〜くれぐれもゆっくり休んでるんだぞ。みーちゃんも見といてあげてね」
「……はい」
「任せてください!」
「じゃあみーちゃん行ってくるね」
「いってくるね美月ちゃん」
「はい!いってらっしゃい!」
部室に静寂が訪れる。時計の針の音だけが聞こえてくる。熱のせいか頭がぼーっとする。
「大丈夫ですか?シロくん」
頭に冷やしたタオルを置いてくれてそう聞いてくる美月ちゃん。
「あぁ…うん…大丈夫」
なんとかそう返すもちょっとやっぱりしんどいかな。
「シロくんは1人じゃないですからね」
そう言いながら手を握ったくれた。
あぁ…そっか…僕は1人じゃないのか。
その言葉に少し安心して握ってくれた手を握り返す。
そして冬馬はそのままゆっくり眠りについたのだった。